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【コンサルティングコラム】
学校法人における人材育成 - 学校法人の人件費改革施策(2)

前回は、人件費改革の2つの方法(1人当たりの人件費単価を下げる、人員数を減らす)のうち、人員数を減らす方法に焦点をあてて、解説を進めてきました。今回は、もう1つの方法である「1人当たりの人件費単価を下げる」方法について、その具体的な施策を考えてみます。


1人当たりの人件費単価を下げる方法として最も一般的なのは、一律での給与カットや賞与カット(賞与支給月数の引下げ)、諸手当の廃止などです。第2回のコラムでも紹介した「学校法人の経営改善方策に関するアンケート調査」(日本私立学校振興・共済事業団、平成20年)では、人件費削減の取り組みとして36.4%(回答506法人)の学校法人が「賞与支給率の見直し」を、31.6%の学校法人が「給与(手当を含む)の見直し」を挙げています。


一律の給与カットや賞与カットは、方法としては単純でわかりやすく、やると決めればすぐに実行でき、確実に人件費削減効果が見込める施策ですが、問題点もあります。


まず、毎月支給している給与や、これまで固定的に支給してきた賞与をカットする場合には、労働条件の不利益変更に該当するため、高度に合理的な理由(大幅な赤字、等)がない限り、教職員の同意を得て行う必要があります。何故給与カットや賞与カットが必要なのか、削減額は妥当と言えるのか等について、教職員が理解できるように説明できなければなりません。現実には、教職員組合との交渉で意見がまとまらず、賞与支給月数の引下げ無効を訴える訴訟も発生しています。


また、どの教職員も一律に賃金や賞与がカットされるため、学校法人への貢献度が相対的に高い教職員(つまり、学校法人としては、より大切にしなければならない教職員)ほど、不満や不公正感を抱きやすいという問題があります。


一般に「2:6:2の法則」と言われる法則があります。これは「組織の構成員は、優秀な人が2割、普通の人が6割、足を引っ張っている人が2割、に分けられる」というものです。この法則に統計的・科学的な根拠など何もありませんが、民間企業だけでなく、学校法人の方々と話をしていても「この法則は感覚的に正しいと思う」という意見を良く聞きます。営利企業ではない学校法人でも、やはり能力差や組織への貢献度の違いは歴然として存在し、おおよそ2割程度の優秀者が組織運営をリードしているのが実態でしょう。


安定経営を実現するためには、経営が順調ではない学校法人ほど、大きな改革や努力が必要になります。その時、組織運営を実質的にリードしている優秀者には、大いに活躍してもらわなければなりません。一律の賃金や賞与カットが、優秀者のモチベーションを落とす(最悪の場合、転職されてしまう)ことになれば、人件費削減効果以上に、組織運営へのダメージは大きいでしょう。


更に、一律の賃金や賞与カットは、組織全体に閉塞感を蔓延させます。個人の努力では賃金や賞与カットの減額分を取り戻すことは困難であり、経営陣が魅力的なビジョンや経営計画を打ち出さない限り、組織の雰囲気は重苦しいものとなるでしょう。そして、18歳人口の減少や大学数の増加等、厳しさを増す経営環境にある学校法人において、魅力的なビジョンや経営計画を打ち出すことは、かなり難しい課題です。


弊社では2010年に、組織の閉塞感をテーマとした意識調査を実施しました(対象は民間企業で働くビジネスパーソン1,000人)。その調査から、「閉塞感を抱きやすい環境であるにもかかわらず、チャレンジ意欲を喚起できている組織」があり、それらの組織では「年功よりも実力が重視され、実力があれば若手でも抜擢されている」ことが分かりました。


厳しい経営環境にある組織では、個人の実力差を人事処遇に反映させていくことで、個人のチャレンジ意欲を刺激していくことが重要であると考えられます。(但し、同調査では同時にチームワークやコミュニケーションも重要であることが明らかとなっており、行き過ぎた個人主義にならないように注意する必要があります)


ところで、個人の実力差を給与や賞与に反映させ、優秀者の給与水準は維持(もしくは若干引き上げ)しつつ、実力や努力が不足している人の昇給や昇格を厳格にすることで、1人当たり人件費単価を徐々に引き下げていく方法は、民間企業では既に一般化しています。


民間企業を対象とした「今後の企業経営と賃金のあり方に関する調査」(労働政策研究・研修機構、2008年)では、2000年度以降に実施した賃金項目の見直しについて、「評価による昇給(査定昇給)の導入」(39.2%)、「評価(人事考課)による昇進・昇格の厳格化」(38.7%)、「高年層の賃金カーブの抑制」(33.6%)が上位となっており、一律の給与や賞与のカットよりも重要視されています。


ここまで来ると、次は個人の実力差をどう評価すべきか、ということが課題となります。次回は、人件費改革を行うために不可欠な人事評価制度について、学校法人ならではの課題や対策について考えていきたいと思います。


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