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M&Aにおける人事管理 2 ~賃金・労働条件、併存にも危うさ~

桐ケ谷 優 2016.10.18

一般的に事業再編には「統合」と「分割」の2つの方法があり、それぞれで人事課題も異なる。今回は統合の典型例である「合併」を例に解説する。

合併にはさらに「吸収合併」と「新設合併」の2種類があるが、手続きがより簡易な吸収合併が利用されるケースが多い。「対等合併」と報道されているような事業再編も、手続き上は「一方の企業が他方を吸収する」ことが多い。合併の場合、吸収される企業の人事諸制度は、吸収する企業に包括的に承継されるため、合併後も複数の人事諸制度が併存することになる。

しかし、合併企業において複数の人事諸制度が併存することは様々な人事課題を引き起こす。

まず、勤務時間や休憩時間、休日などの基本的な就業条件が異なると、一緒に仕事がしづらい。例えば、同じ職場なのに始業時間が異なると朝礼ができない。出張時の宿泊代が異なれば、出身元が異なる社員同士が一緒に出張しても同じホテルに泊まれない。

また、同じ業務や役職に従事する社員の評価基準や賃金水準が異なれば社内の公平性が保てない。特に収益性が低い企業の賃金水準が高い場合は、もう一方の企業の社員から大きな不満が出る。賃金水準が低いものの収益性が高い(労働生産性が高い)企業の社員のモチベーション低下や転職は大きなダメージとなる。

再編時に事業所を統合しない(働く場所が一緒にならない)場合は、人事諸制度が異なっても一見問題ないようにも思える。しかし、事業所間で人事異動が行われる度に労働条件が変化し、人事交流の障害となる。

さらに、合併時点では両社の社員は旧所属企業の人事諸制度を継続できるが、合併新会社で新たに採用する社員の労働条件はどちらに合わせるのか? という間題も出てくる。合併前の企業に勤めていた社員同士の間に意識の壁があることは致し方ないとしても、合併後の新会社で採用した社員の働き方にまで悪影響を与えてしまっては、いつまでも統合効果を得られない。

このような事業再編時の人事課題は、人事諸制度を統合しない限り解決できない。制度の統合には様々なリスクを伴うが、人事統合をしないことによる課題の方がより深刻なのである。

元の記事は『日経産業新聞 企業力アップ!組織人事マネジメント講座 (全33回連載)』(2014年1月09日~3月27日)に掲載されました。

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桐ケ谷 優(きりがや まさる)

クレイア・コンサルティング株式会社 ディレクター
慶応義塾大学 文学部卒業。

大手人材派遣会社および外資系コンピューターメーカーの人事部門にて、人材開発や人事制度設計に携わる。その後、国内系人事コンサルティング会社を経て現職。
主に人事制度改革を中心にコンサルティングを行う。最近では、企業再編に伴う人事制度改革や組織改革に従事。また、制度設計だけでなく、人事制度導入局面でのコンサルティング経験も豊富に持つ。

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