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M&Aにおける人事管理 4 ~労働条件の統一、最優先で~

桐ケ谷 優 2016.11.2

M&A時の人事に関する具体的なステップを見ていこう。M&A時の人事統合のステップは、①両社の現行人事諸制度の把握←②新会社の新たな人事諸制度の設計←③新制度の導入・浸透の3つで構成される

①両社の現行人事諸制度の把握においては、一般的に企業間で統合の基本合意書が交わされた後、両社の人事担当者が人事諸制度の情報を持ち寄って分析作業が行われる。このプロセスを「HRデューデリジェンス」と呼ぶ。

両社の現行人事諸制度の把握は不可欠だ。例えば、両社の報酬水準が異なると、統合後の人件費上昇リスクや労働条件変更に伴う法的リスク(不利益変更に伴う訴訟リスク)を抱えることになる。また現在の労使関係が統合の障害になることもある。さらに、一方の会社側に残業代の未払い等のリスクが見つかった場合は、統合条件に影響を与えるだけでなく、企業統合自体が自紙となる可能性も出てくる。

②新会社の新たな人事諸制度の設計では、最終合意後に両社の人事担当者を中心とした人事統合委員会が発足し、数力月間をかけて新たな人事諸制度の設計が行われるのが一般的だ。

その際、最優先で着手すべきは、就業時間や休日休暇等の労働条件の統一だ。統合後に同じ事業所で働く社員の労働条件が異なると、業務運営に支障をきたすことになる。出張が多い場合は、出張旅費規程の統一も必要だ。

続いて、基幹人事制度(等級・評価・報酬)を統一する。この時、どちらか一方の制度に片寄せするのではなく、新会社の事業方針に基づいた新たな制度を設計し、両社社員に「統合後は新たな仕組みでスタートする」意識を備えてもらうことが望ましい。単なる片寄せではコスト競争力の低下だけでなく、社員の間に「勝ち負け」や「損得勘定」の意識を生み、一体感の醸成や統合効果の発揮がしにくくなってしまう。

③新制度の導入・浸透で重要なのは、統合前から両社社員へ継続的にコミュニケーションを行う点だ。統合後も経営陣からのメッセージだけでなく、新しい人事諸制度を周知するための社員向け説明会や管理職向け研修を実施し、新たな仕組みや価値観を浸透させることが欠かせない。

元の記事は『日経産業新聞 企業力アップ!組織人事マネジメント講座 (全33回連載)』(2014年1月09日~3月27日)に掲載されました。

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桐ケ谷 優(きりがや まさる)

クレイア・コンサルティング株式会社 ディレクター
慶応義塾大学 文学部卒業。

大手人材派遣会社および外資系コンピューターメーカーの人事部門にて、人材開発や人事制度設計に携わる。その後、国内系人事コンサルティング会社を経て現職。
主に人事制度改革を中心にコンサルティングを行う。最近では、企業再編に伴う人事制度改革や組織改革に従事。また、制度設計だけでなく、人事制度導入局面でのコンサルティング経験も豊富に持つ。

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