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退職金・年金制度統合

退職金・年金制度統合とは、合併やグループ再編などのM&A・組織再編時に、二社以上の企業の退職給付制度(退職一時金制度および企業年金制度)を統合する人事マネジメント手法。特に合併時には、企業年金制度を完全に統合する必要がある(企業年金制度は原則として1社1制度)。

退職給付制度の統合時には、「支給水準」「支給カーブ」「積立方法」の3つの要素をすべて統合する必要があるが、その統合に際しては法律や年金数理計算などが関係するために高度な技術が求められる。


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退職金・年金統合が必要となる背景

退職金・年金制度には様々なパターンが存在します。一般的に退職金とは、「退職一時金」として退職時に一括して支払われる報酬を指します(一部に「前払い退職金」を導入している企業もあります)。また、企業年金制度には確定給付企業年金(規約型、単独基金型、連合基金型)、確定拠出企業年金、中小企業退職金共済、厚生年金基金の4種類があります。更に、例えば同じ「規約型の確定給付企業年金」であっても、規約が異なれば、異なる企業年金制度と認識されます。


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企業年金制度は税制優遇を受けられるために、その設立と運営については法律で様々な規制がなされています。例えば確定給付企業年金については、確定給付企業年金法第三条において「一の厚生年金適用事業所について一に限り実施することができる」と定められており、統合対象企業のいずれかが確定給付企業年金制度を導入している場合には、原則として1年以内に制度を統合する(確定給付企業年金制度の廃止を含む)ことが必要となります。

法規制による統合の必要性がない場合でも、複数の退職金・年金制度を運用していくためには、相当の運用負荷(コスト)がかかります。また、年金資産については運用リスクがあり、将来の退職給付債務を適切な範囲でコントロールしていく必要があります。

退職金・年金制度は長期の報酬制度であり、合理的な理由なく制度を変更することは困難です。企業統合時は退職金・年金制度の見直しを行う絶好の(制度の変更理由を合理的に説明しやすい)機会であり、将来の年金資産の運用リスクや運用負荷を想定した再設計を検討することが望ましいと考えられます。(安易な退職金・年金制度の統合は、将来の退職給付債務増大リスクを拡大させてしまう可能性もあります)

また、国の年金財政の悪化と給付開始年齢の引き上げなど、社員の老後不安は強まっており、自分が勤める会社の退職金・年金制度に対する関心も高まっていると想定されます。企業統合後も複数の退職金・年金制度が併存している状況では、不公平感などのモチベーションリスクが顕在化する可能性も高いと想定されます。

退職金・年金統合のメリット

1.人材フローのコントロール

退職金・年金制度は、支給カーブの設計によって人材フロー(採用と退職)に影響を与えることができます。例えば中途採用を強化する場合には、中途入社社員が相対的に不利とならないような支給カーブの設計(勤続年数に比例しない退職金・年金ポイントの付与など)を行います。また、一定年齢以上の社員の社外転身を阻害しないようにするためには自己都合退職係数と会社都合退職係数の格差を縮小させます(反対に社員の流出防止を重視する場合には、自己都合退職係数を低く設定します)。

企業統合時には、統合後の人員構成(年齢構成、階層構成)が大きく変化し、統合後の人材フロー戦略についても再検討が必要になります。長期的視点で望ましい人員構成に近づけていくために、退職金・年金制度が障害となる可能性がある場合には、企業統合を契機に退職金・年金制度の支給カーブを変更することが必要です。


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2.退職給付債務のコントロール

統合対象のいずれかの企業に確定給付企業年金が導入されている場合、将来に渡って年金資産運用リスク(年金資産の積立不足と掛金増大のリスク)があります。また、統合後の社員構成(年齢構成、階層構成)の変化によっては、退職給付債務が増大するリスクもあります(例えば、下図のように、定年時の支給水準が同程度の企業同士の合併でも、年齢構成が大きく異なる場合には、将来の退職給付債務が大きく膨らんでしまう可能性があります)。掛金の増大や退職給付債務の拡大は将来の企業業績に大きな影響を与えますので、統合後の退職給付債務の見通しについては慎重な検証が必要です。

企業統合を機に退職金・年金制度の見直しを行う事で、退職給付債務の見通しについても検証を行い、統合後の社員構成の見通しを踏まえた支給水準、支給カーブ、積立方法への変更を図ることが可能です。


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3.トータルコンペンセーションの構築

退職金・年金の支給カーブに人事評価や昇格・昇進スピードを反映することにより、退職金・年金制度をインセンティブとして機能させることが可能です。

企業統合時には、統合後企業の方向性や戦略を反映した評価制度や昇格・昇給・賞与の仕組みを構築することが効果的ですが、退職金・年金の支給カーブにも新しい評価制度や昇格・昇進の仕組みを反映させることで、退職金・年金制度を長期視点での報酬制度として機能させることができます。

また、このような考え方で一貫して退職金・年金制度を構築することで、退職金・年金制度が、社会保障や福利厚生ではなく、報酬の一部であるということを社員に示すことができます。



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クレイア・コンサルティングが提供する退職金・年金統合の特徴

人事諸制度の総合的な改革の中で退職金・年金統合のリスクをコントロール

退職金・年金制度の統合に際して、退職給付債務拡大や掛金増大を回避しようとすると、支給水準の低下(不利益変更)が発生する可能性があり、法的リスクやモチベーションリスクが発生しやすくなります。

とりわけ確定給付企業年金で給付減額(不利益変更)が発生するような制度変更(統合)を行う場合には、受給権者の3分の2以上の同意が必要となり、年金制度の変更単独で社員同意を得ようとするとハードルが高くなります。一方で、不利益変更を一切回避した制度統合を行うと、将来の退職給付債務や掛金が大きく膨らんでしまいます。

このような場合には、退職金・年金制度単独での制度統合を考えるのではなく、人事制度(等級・評価・給与・賞与・福利厚生・勤務ルール)全体の中で総合的に社員のメリットとデメリットがバランスするように制度統合を考えていくことが必要です。退職金・年金制度単独で不利益が発生したとしても、その他の人事処遇における有利変更との相殺や、人事制度全体を見直す中で「退職金・年金制度変更の合理性」の説得力を強化していくなど、不利益変更によるリスク(法的リスク、モチベーションリスク)を適切にコントロールする方策を検討することで、法的に厳しい制約がある年金制度の変更を実現することが可能になります。

クレイア・コンサルティングのコンサルタントは、退職金・年金制度の統合はもちろん、人事制度全体の統合・構築および導入・定着までの経験を豊富に有しており、人事処遇全体の統合・再構築をコントロールする中で、退職金・年金制度の統合に伴うリスクも的確に回避・軽減する方策をアドバイスすることが可能です。特に社員コミュニケーションのノウハウを豊富に有しており、不利益変更の同意取得対策を数多く熟知しています。



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社外の年金制度関係者(専門家)との協業を効果的にファシリテート

企業年金制度には法規制があり、制度の変更・導入に際しては、年金受託会社(年金数理人)、年金基金の理事・代議員、地域の厚生局、弁護士、会計士など、様々な専門家との協業(または認可取得)が不可欠です。

これらの専門家との協業に際しては、専門知識を有していることはもちろんのこと、統合後企業の経営方針や経営課題を踏まえた年金制度の考え方や仕組みを理解してもらえるように説明・交渉していくことも必要です。

特に、年金制度の専門家は、統合・変更の合理性や不利益度合いについて企業年金制度だけで判断する(他の人事処遇制度との整合性やバランスなどの観点からアドバイスや合理性判断を行う事が困難である)ため、年金制度変更に対して保守的な判断に傾く傾向があります。

クレイア・コンサルティングのコンサルタントは、これまでに数多くの退職金・年金統合のコンサルティングを経験しており、これらの年金制度専門家との協業・調整の経験も豊富です。コンサルタントが統合後企業の方向性と経営課題、および人事処遇全体の整合性を的確に理解して年金制度専門家との協業・調整をサポートすることで、効果的な年金制度の変更・再構築を実現できる可能性が高まります。


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人材フロー戦略を踏まえた最適な退職給付制度設計

退職金・年金制度は人材フロー(採用・退職)に影響を与えます。特に中途採用や中途退職については、退職金・年金の支給カーブが障害となる場合があります。

企業統合時には、統合時点での処遇をいかにして一本化するかという事に注力しがちですが、長期的な報酬制度である退職金・年金制度については、10~20年先の人材フローを見据えた設計をしていくことが重要です。

企業統合時には社員構成(年齢構成、階層構成)が大きく変化するため、この社員構成を採用や退職のコントロールによって適正な状態に近づけていくことが重要であり、このような人材フローコントロールに対して、退職金・年金制度が障害となる可能性がないか検証が必要です。また、もともとの退職金・年金制度を設計した時点では想定していなかった社員構成となった場合、将来の退職給付債務が想定以上に大きく膨らんでしまう事もあります。新たな社員構成を前提に財政再計算を行い、支給水準や支給カーブの見直しが必要ないか検証すべきと想定されます。

クレイア・コンサルティングのコンサルタントは、長期的な人材フローコントロールの観点から人事制度設計を行うノウハウを有しています。具体的には、10~20年先の人員構成と人件費のシミュレーションをもとに、人員構成を適正化する人材フローが実現できるような人事制度設計や、ローパフォーマーのアウトフロー対策(転身支援制度等)の設計・導入のノウハウを有しており、現実に実行・定着が可能な人材フロー施策をご提案します。退職金・年金制度の統合・再構築に際しても、長期的な人材フロー戦略の観点から効果的な制度設計のご支援を行います。


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退職金・年金統合の流れ

1.現状把握

現状分析は「仕組み」と「実態」の観点から漏れなく正確に把握する必要があります。

【仕組みの把握】

統合対象企業の退職金・年金制度に関する規程をすべて収集して、退職給付制度の「支給水準」「支給カーブ」「積立方法」について正確に把握します。

特に、退職金と年金の両方の仕組みを有している場合には、退職金規程と年金規程が別に定められていますので、退職金と年金の関係についても正しく理解しておく必要があります。具体的には、退職金と年金の支給金額が別々に決まる場合や、退職金総額から年金で支給される部分を控除した金額が退職一時金となる場合、などがあります。

また、過去に年金制度の統合や変更を行ったことがある企業では、その時点での移行措置(勤続年数算定ルールや調整ポイント付与など)を講じている場合があります。このような過去の移行措置や特例措置がある場合には、確実に把握しておく必要があります。

【実態の把握】

年金制度については法規制が厳格であり、規程通りに運用されていないケースはほとんど想定されませんが、年金債務の積立不足とその解消方法については具体的に把握しておく必要があります。

連合型基金に加入している場合には、当該基金の財政状況や脱退した場合の払戻金や追加納付金についても把握しておく必要があります(連合型基金からの脱退については、連合型基金の代議員会で反対を受ける可能性もあるため、情報収集を慎重に行う事が必要です)。

また、過去に合併や退職金・年金制度の改定を行っている場合には、勤続年数等について清算や移行措置が講じられている場合があり、各社員の「退職金・年金計算に使用する勤続年数」など、正確なデータを確認しておくことが重要です。

退職金(退職一時金)については、運用に際して企業の裁量が大きいため、裁量が反映される部分については実態把握が不可欠です。例えば、功労加算金支給の仕組みがある場合には支給の判断基準や支給額まで把握しておきます。


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2.制度基本フレームの構築

退職金・年金制度の現状と、統合後企業の方向性や経営課題を踏まえて、退職金・年金制度の基本フレーム(支給水準・支給カーブ・積立方法)を構築します。

【支給水準の検討】

支給水準(定年退職時)は、統合前各社の支給水準、外部水準、財務状況等を踏まえて検討します。また、年収(給与・賞与)水準とのバランスについても検討する必要があります。

法的リスク(不利益変更)回避の観点からは支給水準の高い企業に合わせることが理想的ですが、その場合には将来の退職給付債務の増大が懸念されます。確定給付企業年金が導入されている場合には、給付減額となるような制度変更のハードルは高いですが、外部水準との比較や、将来の退職給付債務増大の見込と財務状況のバランス(制度継続可能性)等を慎重に検討し、継続可能な合理的水準を定める事が必要です。

【支給カーブの検討】

定年退職時の支給水準に至るまでの、毎年の退職給付額の決定方法と金額水準を検討します。具体的には、1年勤務した場合の退職金・年金の支給額(または拠出額)の算定テーブルを設計します。

まず、何に基づいて支給金額を決定するのか、を検討します。例えば「勤続年数」「等級」「役職」等に従って1年間勤務した場合の支給額を決定します。人事評価等を反映する事も可能です。

次に、1年間勤務した場合の具体的な支給額を検討します。例えば、勤続年数に基づいて支給額を決定する場合には「勤続1年目~5年目までは5万円」「勤続6年目~10年目までは10万円」などと設定します。1年間勤務した場合にポイントを付与し、退職時点でのポイント単価を乗じて支給金額を決定する方式もあります(ポイント制退職金)。勤続年数に比例した支給額は長期勤続を促す効果が高いですが、中途入社の社員は相対的に不利になります。等級や役職に比例した支給額とすると、より実力主義的な退職金・年金制度になります。

更に、定年退職前に自己都合で退職した場合の係数を検討します。自己都合退職係数を低く設定すると、中途退職を抑制する効果があります。

支給カーブの設定は、人材フロー(特に中途入社、中途退社)に大きく影響します。長期的な人材フロー戦略を踏まえて検討することが重要です。

【積立方式の検討】

退職金・年金制度の積立方式を選択します。複数の積み立て方式を組み合わせることも可能です。

年金制度を統合する場合には、これまでの積立方式によって年金資産の移管先に制限があります。従って、これまでの積立方式が、統合後に選択可能な積立方式を大きく左右することになります。

年金資産を移管できないような積立方式を採用する場合には、既に積立ててきた年金資産を社員に配分する必要がありますが、多くの場合は運用年数が想定よりも短くなること、および退職・年金所得ではなく一時所得として課税されることから、社員にとってある程度の不利益が発生します。この場合には、不利益の代償措置の要否についても検討する必要があります。


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3.リスクシミュレーションと基本フレームの修正

制度の基本フレームを構築したら、人件費、法的規制、モチベーション、制度運用の観点からリスクの洗い出しと対応策の検討(基本フレームの修正)を行います。

【人件費リスクのシミュレーション】

支給水準が上がる場合には、今後20年程度を想定して、退職給付債務と掛金の増額見通しの概算を算出します。確定給付企業年金の場合には、正確には年金数理人による財政再計算が必要となりますが、支給水準・支給カーブと社員構成の変動見通しに基づいて概ね妥当な金額を推測することは可能です。

なお、将来の掛金は、年金資産の予定運用利率に大きく左右されます。予定運用利率を高めに設定すれば掛金を抑制できますが、資産運用リスク(予定運用利率を下回り退職給付債務の積立不足が膨らむリスク)が高くなります。

退職給付債務および掛金の増額が許容限度を超える場合には、支給水準や支給カーブの調整を行う必要があります。

【法的リスクのシミュレーション】

社員に不利益が発生する場合、および制度変更手続きに時間がかかる場合(年金制度は合併後1年以内に統合を完了させる必要があります)に、法的リスクが想定されます。

特に退職金・年金制度については「期待権」が認められるため、「期待権の不利益変更」が論点となります。「期待権」についてはある程度の不確実性が含まれるため、どの程度の変更が「不利益変更」と判断されるかについては慎重に検証・確認する必要があります。

また、不利益が発生する変更を行う場合には、組合または社員の同意が必要です。特に確定給付企業年金について不利益(給付減額)が発生し得る変更を行う場合には、受給権者等の3分の2以上の同意が必要となり、制度変更手続きについても時間がかかる可能性があります。

【モチベーションリスクのシミュレーション】

新退職金・年金制度が社員にどのように受け止められるか(モチベーションダウンに繋がる懸念がないか)を考察します。社員の受け止め方は出身企業や年齢によって異なるため、出身企業別、年齢別、階層別など様々な観点から社員の受け止め方(反応)を考察してみることが重要です。

特に、年金制度の変更時点の年齢によって定年退職時の支給水準が大きく変動してしまう可能性がある場合、年代別の損得が発生します。社員間の損得感情や不公平感がどの程度大きなものであるか検証が必要です。

また、新退職金・年金制度の導入に際しては労働組合または社員の同意(給付減額を伴う場合には受給権者の3分の2以上の同意)が必要ですが、そもそも社員は統合前の退職金・年金制度について正しく(詳しく)認識していない可能性もあります。これまでの退職金・年金制度への関心度や理解度なども踏まえて、社員の受け止め方(反応)を考察するようにします。

【制度運用リスクのシミュレーション】

退職金・年金制度の運用負荷についての想定を行います。(年金資産の運用リスクについては人件費リスクの部分で検討)

通常は退職金・年金制度を統合(一本化)することで運用負荷を軽減できますが、新たに確定拠出企業年金を導入する場合には投資教育が必要になる等、運用負荷が増大する場合もあります。

4.移行・補償措置の策定

二社以上の退職給付制度を統合する場合、各社の支給水準や支給カーブが異なる場合には、補償などの対応措置が必要です。対応方法は新会社の退職給付制度や増減幅によって異なりますが、大まかに4つの方法が想定されます。

  • 補正措置をとらずに、全社員一律に新制度を適用する
  • 一定期間の経過措置を設け、経過措置期間は旧制度を適応する
  • 移行時に、増減幅を縮小させるための調整措置を行う
  • 移行後に、毎年徐々に調整措置を行う

具体例として、ある企業統合の際には下記のような移行補償措置を検討・実施しています。

  • 新退職金・年金制度では45歳以降の積立額が大きくなるように支給カーブを設定。
  • 統合前A社・B社の給付水準に大きな格差はなかったが、A社の支給カーブは新制度と異なり、50歳以降の支給カーブが緩やかとなっていた。
  • 統合時に40代・50代のA社社員は、制度移行時に既に定年時支給水準に近しい金額を積み立てているにもかかわらず、新制度の給付カーブを適用することで想定以上の支給水準にまで退職給付額が増大してしまう事が想定された。
  • このような退職給付の増大は、財務状況への影響が大きく、また移行時の年代による損得が発生してしまうため、新制度への移行にあたり、A社出身の移行時40代以上の社員に対しては、退職一時金積立ポイントを統合後5年間に渡り一定数マイナスする調整措置を実施した。

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5.年金数理計算と認可申請手続き対応

確定給付企業年金を継続・導入する場合には、年金受託機関の年金数理人による年金数理計算が必要となります。年金数理計算には昇格モデルの設定等に関して様々なガイドラインがあり、企業統合によって社員構成(年齢構成・階層構成)が大きく変化すると、想定以上の給付減額や掛金増加の影響が明らかになる場合もあります。行政の認可を受ける際には年金数理人による財政計算が必須であり、想定以上の給付減額や掛金増加が発生した場合には、年金数理人とコミュニケーションをとりながら、毎年の支給額算定テーブルを微修正していく必要があります。

6.コミュニケーションプラン策定と同意取得

退職金・年金制度の変更には、社員の同意(加入者の3分の1以上で組織する労働組合があるときは当該労働組合の同意、または加入者の3分の2以上の同意が必要。ただし、給付減額を伴う変更の場合には受給権者等の3分の2以上の同意が必要)を取得する必要があります。

ここで障害となるのは、新退職金・年金制度の理解以前に、統合前の退職金・年金制度も正しく理解されていない可能性がある、という事です。退職金・年金制度への関心は定年が近づくにつれて高くなりますが、仕組みが複雑で専門用語も多いため、規程を読んだだけでは理解が難しい部分もあります。従って、新退職金・年金制度を説明しただけでは、社員が正しく理解して安心して同意することが難しい場合があります。

統合前の退職金・年金制度の理解度を確認し、変更の理由や影響度について丁寧に説明をしながら同意を取得するためには、全社員向けの説明会実施や、相当丁寧な説明資料の作成・配布等の工夫が必要であり、そのための準備期間についても事前に考慮しておく必要があります。