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コンピテンシーマネジメント

コンピテンシーとは、実際に成果を上げている人材の実例から抽出された、高業績を生む特定の行動に結びつく、動機、性格、知識を統合的に捉えた能力体系。コンピテンシーマネジメントとはそのコンピテンシーの具体性・実践性を活用しながら等級をはじめとした人事制度を設計し運用していく人事マネジメントの手法。


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コンピテンシーが生まれた背景

コンピテンシーという言葉自体は、人事領域において既に一般的な用語として定着していますが、コンピテンシー発祥のアメリカでも、未だに共通の定義は確立されていません。

コンピンテンシーはまず、1970年代初頭の米国文化情報局(USIA)での職員の選考において取り上げられるようになりました。当時は主にIQを測定する適性検査によって選考を行っていましたが、検査の結果と実際の職員のパフォーマンスは一致していませんでした。つまり、高いIQが、高いパフォーマンスに結びついていなかったのです。

動機付け理論で知られているハーバード大学のデイヴィッド・C・マクレランド教授は、USIAの依頼で職員の調査を行い、優秀な職員とそうでない職員を中心にインタビューをした結果、ハイパフォーマーに特有の行動とそれに結びつく職員の性格や思考パターン、動機的特徴を明らかにすることに成功しました。これがコンピテンシーの始まりです。

その後コンピテンシーはリチャード・ボヤツィスなどにより広く知られることになります。ボヤツィスは、コンピテンシーを「効果的ですぐれた業績を生む人の根本的特性」と定義し、その「根本的特性」は「動機、性格的特性、自己イメージ、社会的役割といった側面、知識体系」であり、高業績を生む「行動」として発露すると述べています。

すなわち、コンピテンシーとは高業績を生む特定の行動に結びつく、動機、性格、知識のセットであり、日本では「行動特性」として広まっていきます。この「IQテストの結果からは優秀な人材を選別できない」というコンピテンシーの考え方は、1990年代以降、企業の人事マネジメントの分野で盛んに取り入れられ、日本企業でも1990年代の終わりから注目され、瞬く間に浸透していきました。

コンピテンシーを理解する上では、日本の企業で広く普及している「職務遂行能力(職能)」との比較がわかりやすいでしょう。日経連(日本経営者団体連盟、現代の経団連(日本経済団体連合会))は、職能を「体力×適正×知識×経験×性格×意欲」と定義しています。これは能力を動機や性格的特性といった複数の側面から定義しているコンピテンシーと極めて似ていますが、大きく異なる点が3つあります。

1つ目は、職能は職務を遂行する上で必要とされる能力を、知識やスキル、性格などに分解し、それぞれを独立したものとしてとらえているのに対し、コンピテンシーは特定の行動に結びつく特定の知識やスキル性格等をひとまとめにして統合的にとらえている点です。例えば当社で定義している「組織感覚力」というコンピテンシーは、組織内の政治力学を利用し、影響力を行使すると定義されますが、「組織内のルールや人間関係の知識」「コミュニケーションスキル」「権力動機」といった複数の特性が組み合わさって構成されています。知識やスキルがあってもそれを活用しようとする動機がないと成果を生む行動につながらない(逆もまた然り)ということです。

2つ目は、職能が「こうあるべき」という会社の理想像を元にした希望的能力である一方で、コンピテンシーは実際に成果を上げている人材の実例から抽出されているという点です。特に日本企業に多い例として、人事考課表にあれもこれもと職能を並べ、超人的な理想像を求め、実際には当たり障りのない人材を育成することになりがちです。一方でコンピテンシーは高業績者の行動に絞り込んで定義されるので極めて実証的であると言えます。

これに関連した3つ目の違いとして、職能はその評価基準が抽象的になる一方、コンピテンシーの評価基準は極めて具体的です。職能もコンピテンシーも、実際に評価される場面では、具体的な行動といった観察可能な基準に依拠して評価されます。しかし、職能は会社の理想像として「~ができる」と定義されているので、評価者は、できるかできないかを想像して判断しなければなりません。一方、コンピテンシーは具体的な行動から定義されており、その基準は「~をしている」と書かれています。評価期間を通じて、していたかどうかは観察可能であり、評価が容易かつ評価される側も納得できるものとなっています。


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コンピテンシーマネジメントの機能とメリット

1.評価の納得性を高めやすい

コンピテンシーマネジメントを導入するメリットの一つは、評価基準にコンピテンシーを用いることで評価の納得性を高めることができるという事です。

評価の納得性を高めるには、評価の(1)妥当性、(2)信頼性、(3)透明性の3つを高める必要があります。


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評価の妥当性は、評価基準が評価したい、もしくは評価すべき内容と合致している場合に高くなります。言いかえると、「その基準で示す能力の発揮や行動によって、高い確率で成果を上げることができる」ということです。

コンピテンシーはそもそも、高業績者の行動や思考パターンから抽出されており、コンピテンシーの発揮が高い確率で高業績に結びつくということが実証されているので、コンピテンシーを評価基準に用いることで、高い妥当性が得られるのです。

評価の信頼性については、評価基準に基づいて正しく評価が行われている場合に高いと言えます。そのため、評価者が誤解なく評価基準を理解することが、評価の信頼性を高める上で重要です。

コンピテンシーは具体的な行動の記述という形で評価基準に落とし込むことができます。抽象的な記述では、評価者の解釈を許すことになりますが、具体的な行動の記述の場合、「していたか、していなかったか」というシンプルな物差しで評価を行うことができ、信頼性が高まるのです。

また、被評価者に評価根拠が明らかになっている場合、評価の透明性は高くなります。このような評価の透明性は、評価基準の公開や、評価結果のフィードバックを行うことで高めることができます。先ほど述べたように、コンピテンシーは行動の具体的な記述という形で評価基準に落とし込めるため、被評価者にも理解しやすく、被評価者と評価者の間に認識のギャップが生じにくくなります。

2.人材の抜擢による適材適所を実現

加えて、人材の選抜・抜擢によって適材適所が実現しやすい点もメリットとしてあげられます。コア人材の育成は、企業の浮沈のカギを握る重要な要素ですが、コンピテンシーを活用することで、コア人材予備軍の抜擢と、重点的な育成の促進が可能になります。


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具体的には、将来コア人材として必要とされる能力を本人が身に付けられるか否かという観点から、早期に選別を行っていきます。コンピテンシーの中には育成が比較的簡単なもの(知識やスキルに重点を置いたコンピテンシー)と、育成が難しいもの(性格や動機に重点を置いたコンピテンシー)があり、育成が難しいコンピテンシーを既に保有している社員を早期に選抜することで、コア人材の効果的な育成が可能となります。また、社内公募などで、人材スペックをコンピテンシーで定義して社内に公表することで、適切な人材を抜擢する一助となります。

3.能力開発がしやすい

かつては、人材育成は人事労務管理の一部としてとらえられ、経営戦略からは独立した存在でした。しかし、複雑で変化の速い環境や国内外の企業との競争の激化から、現在では人材の育成は企業の競争力向上の要であると認識されています。コンピテンシーを有効に活用することで、このような経営戦略に基づいた人材育成を推し進めていくことが可能です。


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職務を通じた人材育成(OJT)では、今まで上司の経験と判断に大きく依存しており、上司によってOJTの結果に大きな差が生じることがしばしばありました。そこで、コンピテンシーと行動モデルをセットで共通の基準として定めることで、OJTを効果的に活用することができます。具体的には、開発すべき能力と目標レベル、そして能力発揮の結果としての行動レベルを具体的に定義します。

コンピテンシーは研修(Off-JT)にも活用できます。従来の研修は階層別・職層別の一律型研修がメインでしたが、コンピテンシー評価と連携することで、個人別の強み・弱みに応じた適切な研修コースを設定することができます。また、経営として求める人材像・コンピテンシーを定義し、それらを重点的に伸ばすような研修を行うことも可能です。

クレイア・コンサルティングが提供するコンピテンシーマネジメントの特徴

1.企業独自のコンピテンシーディクショナリーを策定

クレイア・コンサルティングが提供するコンピテンシーマネジメントは、より日本企業(日本人を雇用する外資系企業を含む)に適合するよう、いくつかの工夫を取り入れています。その第一は、各企業のコンピテンシーディクショナリーを独自に設定する点です。


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どのコンピテンシーを伸ばすべきかは、企業のとる経営戦略と密接不可分です。そして、経営戦略に合致したコンピテンシーが活用されない場合、企業の求める人材を育成したり評価することができないばかりか、納得感のないコンピテンシーが評価対象となるために現場のモチベーションを下げることにもなりかねません。

クレイア・コンサルティングがコンピテンシーマネジメントを設計・導入する際は、高業績者を中心にインタビューを行いコンピテンシーを抽出する帰納的アプローチと、経営環境や職務内容、既存の経営戦略からコンピテンシーディクショナリーを設定する演繹的アプローチのいずれか、もしくは両方を用いながら、企業のとるべき戦略とマッチしたコンピテンシーディクショナリーを設計します。

2.人事制度全体をコンピテンシーで連動させる

クレイア・コンサルティングが導入するコンピテンシーマネジメントにおける特長の二つめは、コンピテンシーを人事制度全体に活用する点です。


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コンピテンシーの概念は、評価制度に対して導入することが一般的ですが、既存の人事制度にコンピテンシー評価だけを導入してもそれほど高い効果は得られません。等級別に定義されたコンピテンシーの項目や期待発揮レベルが評価制度や育成メニューと結びついたり、コンピテンシーによる評価が昇給や賞与に適切に結びつくなど、人事制度全体と適切に連動してこそコンピテンシー導入の効果は最大限に発揮されるのです。

クレイア・コンサルティングでは、評価制度だけではなく、等級制度や報酬制度、人材育成(OJT・Off-JT)との連携も念頭に、人事制度全体でコンピテンシーを活用できるよう、設計を行っていきます。

3.豊富なノウハウ

クレイア・コンサルティングの特長の三点目は、今までのコンサルティングで培った豊富なノウハウです。

インタビューを通じたコンピテンシーディクショナリーの作成から人事制度への組み込み、コンピテンシーを用いたOJT/Off-JTの設計やアセスメントの実施など、様々な業種の企業に対し、コンサルティングサービスを提供してきました。その過程で蓄積したノウハウに基づき、特定の業種や職種において特有のコンピテンシーをリストアップしたり、独自のアセスメントツールやインタビュー手法を活用するなどして、質の高いコンサルティングを実施することが可能です。

コンピテンシーマネジメントを導入する際の流れ

1.高業績者の選出

コンピテンシーディクショナリーを設計する上で、まずは社内の高業績者にインタビューを行い、彼らの特徴的な行動からコンピテンシーを策定していきます。

ここで何よりも重要なのは、そもそも高業績とは何を意味するのかという「定義」を関係者間で共有しておくことです。売り上げの高い営業マン、部下から信頼されるマネージャー、イノベーティブなクリエイターなど、高業績者という言葉から想起される人物像は複数ありますが、会社として何をもって成果とするのか、経営戦略と密接に結び付いた高業績者の選定基準が必要となります。

その上で対象となる高業績者を選出していきますが、職種や階層によって求められるコンピテンシーの内容が変わっていくため、異なる職種や階層ごとに高業績者を選出していくことが必要です。また、初級、中級、上級といった職位も分類していく必要があります。インタビューを行う人数は各タイプごとに2~3名程度が一般的には望ましいとされていますが、複数名の選出が困難な場合は各タイプで基本的に1名のみとしつつ、重要な職種や階層のみ複数名を選出するといった工夫が必要です。

また、コンピテンシーの抽出においては、高業績者と標準者との比較を行う必要もあるため、標準者も数名選出します。

2.インタビューの準備

効果的なインタビューを実施するためには入念な準備が必要です。前もってインタビューされる人(インタビュイー)の経歴や評価情報、職場環境やポジション、担当業務の概要など、直接聞かなくても分かる情報はあらかじめ収集し内容を把握しておきます。そして、それらの情報を基に、事前にコンピテンシーに関する仮説を設定し、それに基づいた質問項目を考えておくことが必須となります。

あわせて、インタビュイーが気兼ねなく話せるような環境をつくることや、業務の一環としての協力要請を行うことも忘れてはいけません。

3.インタビューの実施

インタビューでは高業績者に「体験」を語ってもらいます。これはBEI(Behavioral Event Interview)と呼ばれ、高業績者の口から実際の体験を語ってもらい、そこから成功や失敗の要因を引き出す手法です。下図のように高業績者が成果を生むためのポイントを事前にいくつか絞り込むことで、限られたインタビュー時間を有効に活用することができます。


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効果的なインタビューを行うためには、その場の流れでインタビュイーの話を聞くのではなく、構造的なインタビューをおこなうことが必要です。


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インタビュー実施のポイントは3つあります。

1つ目は成果が生まれるプロセスを定義しておくことです。例えば営業マンの場合、成果を生む=顧客を獲得するというプロセスは、「顧客開拓」「提案準備」「提案・受注」「受注後のフォロー」に分解できます。それぞれの場面で異なる行動が見られる(コンピテンシーが発揮される)ので、それぞれの場面でのエピソードを抽出することで、高業績者が発揮しているコンピテンシーを抜けもれなく抽出することが可能です。

2つ目に、標準的な成果を残している社員(標準者)との比較を行うことです。高業績者のインタビューと並行して、同じ職種、階層の標準者のインタビューを行い、同じ状況における標準者と高業績者の違いを比較することで、高業績者特有の行動を抽出することができます。

そして最後に、インタビュイーに行動を語ってもらうことが重要です。行動ベースでの具体的なエピソードを引き出し、その中でインタビュイーがなぜその行動をとったのかという動機や、具体的な行動の詳細を聞きとっていく必要があります。

4.コンピテンシーの抽出

高業績者がそれぞれの業務プロセスでとっている行動のリストから、コンピテンシーを抽出していきます。

まず、高業績者の特徴的な行動をモデル化していきます。具体的にはインタビュイーの個別具体的な発言を、重要なニュアンスが薄れてしまわないように注意しながら、一般的・抽象的な言葉に置き換えていきます。

そして、それぞれの行動に対応するコンピテンシーの種類とその発揮レベルを特定します。一つの行動に対して発揮されるコンピテンシーは複数考えられるので、煩雑さを避けるために、行動と特に結びつきの強いコンピテンシーを選択する必要があります。


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最後に、職種や階層ごとにコンピテンシーの種類や発揮、レベル感が大きくずれていないか調整します。例えば同一職種の上下の階層でコンピテンシーの種類が大きく異なっていたり、発揮レベルの逆転が生じたりしている場合には、コンピテンシーの特定プロセスを見直す必要があります。

5.人事マネジメントにおける活用Ⅰ:コンピテンシー評価

コンピテンシーディクショナリーを人事マネジメントにおいて活用する上で、最もニーズが高いものが評価を中心に活用する方法です。

コンピテンシーを評価制度で活用するには、まず既存の等級制度と、策定したコンピテンシーとの整合を図ります。各等級での「こういう働きをしてほしい・こういう能力を発揮してほしい」という定義が、各等級ごとのコンピテンシーの種類やレベルと合致しているかどうかを確認していきます。また、昇格の運用の仕方についても、その等級での要件を満たすべきなのか、上位等級の要件を満たすべきなのかといった点について整理し、評価すべきコンピテンシーの発揮度合いを規定していく必要があります。

また、報酬制度との連携も重要です。クレイア・コンサルティングでは多くの場合、コンピテンシーを能力給基本給といった月例給に反映させていきます。つまり、コンピテンシー評価の結果が、昇給に反映されるということですが、これは、コンピテンシーが成果を生むための行動をもたらす個人の特性に基づいており、賞与など成果が反映されるものとは切り離すことが望ましいという考えに基づくものです。

等級や報酬の各制度との連携を強めながら、評価制度を改定していきます。各等級や職種ごとにコンピテンシーの種類とレベルが定義されたコンピテンシーディクショナリーを基にして、等級別・職種別の評価項目・評価基準を策定します。

ここで評価表などに記載していく評価基準は一般的・抽象的な言葉でも構いません。ただし評価マニュアルや評価者研修など、現場での活用を促していく際には、コンピテンシーごとに現場レベルでの行動の記述を作成していくことで、さらに納得性の高い評価の運用が可能になります。また、評価結果のフィードバックでは、どのコンピテンシーの発揮が十分/不十分だったか説明するだけでなく、高い評価がとれる行動について具体的に説明することで、被評価者本人の育成やモチベーション喚起に役立ちます。

6.人事マネジメントにおける活用Ⅱ:人材育成

OJTとOff-JTにおけるコンピテンシーの活用について解説します。

OJTでは、特定の場面における具体的な行動のリストを活用します。等級・職務場面ごとに求められる行動を記したOJTマニュアルを作成し、日々の業務で高業績者がどのような行動をとるのか、対象者に周知していくことが一般的です。上司の経験や勘に頼った従来のOJTと異なり、日々の業務に直結した場面設定と、具体的な現場の言葉で記述されたマニュアルに沿って行うため、育成のバラツキを抑制し効率的な人材育成が可能となります。

Off-JT(研修)では、コンピテンシーディクショナリーを基に作成されたケースを活用できるといったメリットがあります。特に、上位等級への昇格や役職に任命された後の研修で効果を発揮します。なぜならば、昇格者や初めて任命された役職者に対し、求められる働きや期待されている能力発揮レベルを、コンピテンシー研修を通じて具体的に指導することができるからです。

7.コンピテンシーディクショナリーの整備・見直し

コンピテンシーディクショナリーは必要に応じて整備・見直しが必要になります。いかに優れたディクショナリーを作成しても、複雑で変化の速い現代の経営環境においてはすぐに陳腐化してしまうためです。

コンピテンシーディクショナリーは、職務遂行能力と異なり作成方法が確立されているため、メンテナンスも容易に行えます。経営環境の変化に応じてコンピテンシーディクショナリーを素早く改良する事が、競争力を維持、強化するために必要です。

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