評価者ごとの甘辛が大きすぎる|ブレにくい評価の考え方
2026.06.01
2026.06.01
この記事でわかること
- 評価者ごとの甘辛が大きい職場では、まじめに評価しても自部署の部下が不利になるのではないかと悩む課長は少なくありません。そうした状況で求められるのは、他部署の評価者の甘辛に押し流されない、根拠のある評価です。本記事では、被評価者の「成果創出を阻む壁」と、その壁を突破する「あるべき行動」を手がかりに、説得力のある評価を行う方法を解説します。
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「隣の部署は、みんなA評価をもらっているらしいですよ」
一次評価をつけ始める日の朝、前期末の評価結果の他部署の噂を部下から聞いたことを思い出し、改めて課長は頭を抱える。前期は規定に沿って評価を付けたつもりが、評価が甘めの課長、いわゆる「甘口課長」の部署では高評価が多く、自部署のメンバーが割を食った。
「頑張っていない人はいない」。それは自部署でも同じことです。誰もがそれぞれ厳しい環境下で自分なりに工夫して踏ん張っているので、よほど芳しくない行動があったわけでもない限り、全員に良い評価をつけて報いてあげたいものです。しかし、経営資源の配分の観点や優秀人材の抜擢など、会社の方針として評価に優劣をつけることは合理的だと考え、シビアに一次評価をつけています。
一方で、隣の部署の甘口課長は、「全員頑張っているから」「モチベーションを下げたくないから」という理由のみで、総じて高評価をつけているようです。甘口課長の上司が評価を差し戻せばよいのですが、そのまま評価調整会議にあがることもあるでしょう。
そして、部長らが参加する評価調整会議の場で、声の大きい他部署の部長(甘口課長の上司)に高評価の枠を多くとられてしまうと、結果として、自部署のメンバーが他部署に比べて「相対的に損をしている」という感情につながってしまいます。
当の課長にとって、自分では直接コントロールできない評価調整の場で自部署のメンバーの最終評価を下げられてしまうことには、やりきれなさが残ります。そして、自部署に高評価の枠を確保できなかったことへのネガティブな感情は、調整会議に出席した部長にも生じるものです。
適切に評価をつけようとしているのに、まじめにつけても、部下が割を食うかもしれないという徒労感。どのように解決すればよいのでしょうか。
1.まずは”適切な評価”の原点に立ち返る
前提として、人が人を正しく評価するのは非常に難しいことです。そのため多くの会社では、評価基準や評価ガイドラインの整備、評価者研修の実施など、評価エラーを排除し適切に評価を実施するための制度や施策を導入しています。しかし、それらを導入している会社であっても、評価をつける難しさは依然として残ります。
当社が行った調査では、ある企業において、過半数の一次評価者が「評価に優劣の差をつけるのが難しい(能力・行動評価)」と回答しました(※本記事では以下、成果評価ではなく能力・行動評価にスコープを定めて説明します)。
とりわけ、評価に差をつけるのが難しいと考えられているのが、「結果に差がないケース」と「業務が違うケース」です。
定型業務が主な部署では、期末の成果やおおまかな行動に個人差がなく、評価に差をつけづらいようです。また、業務が違えば、そこで発揮された能力や行動は単純比較できず、優劣をつけるのが難しいのです。一方で、評価が難しいからといって目線合わせのしようがない評価を続けていては、他部署との比較はおろか自部署内で説得力をもった説明もおぼつかなくなるでしょう。
では、上記のような評価が難しいケースにおいて、適切な評価を行うにはどのようにしたらよいか。
ポイントは、その業務における「あるべき行動」を特定し、「あるべき行動」に照らして実際の部下の行動の良し悪しを判断することです。「あるべき行動」とは、より細かく言えば、成果目標の達成にあたり生じる壁(目標達成を阻む要因)を乗り越えるための行動です。
例:営業職社員の場合
- 目標(イメージ):
- 担当顧客の取扱高拡大
- 壁:
- 競合の競争優位性が上がりつつあり、自社の調達・物流の見直しなど付加価値提案が不可欠である
- あるべき行動
- 何かあったときに担当顧客から相談が来る状態にするために、課題を細かく適切に把握し、提案の頻度・質を上げる
「あるべき行動」は、(1) 成果目標を定め、(2) 壁(目標達成を阻む要因)を突き止めたうえで、(3) 壁を乗り越えるための行動(あるべき行動)に絞り込むことで特定します。その後、評価で使うために、(4)「あるべき行動」を全社共通の評価項目と結びつけます。
「あるべき行動」を評価の基準とすることで、望ましい頑張りと闇雲な頑張りに差をつけることができ、また、成果の良し悪しと別に能力・行動評価を行うことができます。さらに、一人ひとりの業務別に設定した「あるべき行動」という評価基準に照らせば、業務が異なる者同士でも優劣をつけることが可能となります。
結果として、評価が難しいケースにおいても課長は説得力のある評価が可能となり、部長は他部署の甘辛に影響されない確固たる根拠を持って調整会議に参加できるようになります。
2.明日から使える一手
前章の「あるべき行動」に照らした評価を行うために、以下の3ステップをご紹介します。
ステップ1:前年度、評価に困った部下の壁とあるべき行動とは?
まずは、前年度の評価で最も判断に迷った部下1名を想像してみてください。
目標達成を阻んだ壁を確認し、「その壁を乗り越えて高評価を得るためには、どのような行動をとるべきだったか」をメモに書き出してみましょう。必要に応じて前年度の評価シートを見るのもよいと思います。
ステップ2:本年度、部下のあるべき行動とは?
ステップ1の振り返りをヒントにして、今年の部下(誰でもよいので1名)の「業務内容」「成果目標」について目標達成を阻む「壁」、その壁を越えるための具体的な「あるべき行動」を書きます(壁が複数ある場合はそれぞれに記載します)。
最後に、その行動が自社の「能力・行動評価項目」(「チームワーク」、「主体性」、「顧客リレーション」など)のいずれに紐づくかを書いてみましょう。
ステップ3:部長と擦り合わせるべきポイントとは?
ステップ2で整理した内容をもとに、直属の上司(部長)と目線を擦り合わせます。期初であれば成果目標設定の承認をもらう際に抱き合わせで行いましょう。
擦り合わせる内容は、「目標達成を阻む壁」「あるべき行動」、および「その行動が観察された場合につける能力/行動評価項目の点数(および見込み評価ランク)」の3点です。
ステップ2、3まで全て一度に行う必要はありません。例えば、ステップ1だけを通勤中に行ってみて、イメージが湧いたらステップ2に進むなど、ステップバイステップで進めてみませんか?
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