この記事でわかること
- 管理職として裁量がないまま責任だけを負わされ、仕事が回らないと感じる背景には、個人の能力ではなく管理職の役割の持ち方に起因する共通の構造があります。プレイヤーとの兼務や人への対応の増加、上と下の板挟み、統制責任の強まりといった要因が重なることで負荷が高まります。本記事では、こうした状況を「構造」として整理し、なぜ苦しさが生じるのかを捉え直せるようにするとともに、どこから見直せばよいかの方向性を理解できます。
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以下のような、上司と部下の板挟みにあってしんどい、といった管理職の悩みを、様々な企業で耳にします。
- メンバーの資料作成が進んでいないことを期限ギリギリで知らされて、慌てて自分が巻き取ることがある
- メンバーとの人事面談、ハラスメント対応など「人」に関するいろいろなことにやたらと時間を取られる
- 上からのプレッシャーと下からの突き上げの間に立って調整しないといけないが、裁量をもって自分の意見を通せないので、ほとんどの場合自分はひたすらお願いするだけになる
- 上司からは「人が少なくても何とかするのが管理職だ」と言われ、メンバーからは「高い給料をもらっているのだから面倒な仕事が多くて当然だ」と思われている
- 仕事が思うように回らず、自分は管理職として能力不足なのではないかと思う
このようなことは、いずれもプレイヤー時代には見えなかったこと、感じなかったことです。こうなってしまうのは、管理職の役割が持つ構造に原因があります。
管理職が仕事で行き詰まるのは、まじめに役割を果たそうとして行った小さなことの積み重ねで生じます。上記のように、メンバーに任せた仕事を自分が巻き取ったり、メンバーの育成のために十分な時間を取って面談をしているうちに、管理職特有の苦しさとなって表面化することが多いように思います。
管理職の役割には、どのような構造があるのか。 その構造を踏まえて対応することで、むやみに苦しい状況から前に進むための現実的な一歩を提示します。
1.なぜ管理職は追い込まれるのか?(管理職の役割が持つ4つの構造)
(1)管理職であるとともにプレイヤーになりやすい
最近は働き方改革の影響でメンバーの残業時間を厳しく管理しなければならない上に、どの企業でも人手不足で困っている状態なので、管理職がメンバーの仕事を巻き取って直接対応せざるを得ないという状況は珍しくありません。
ここで管理職本人が陥りがちなのは、「いま自分が巻き取るのは、あくまで一時的な例外だ」と考えることです。ところが実際には、その「今回だけ」が繰り返されるほどメンバーに経験が積み上がらず、管理職が仕事を巻き取るケースが多くなります。忙しい職場ほど、「任せないから育たない」のではなく、「育てる余裕がないから任せられず、その結果さらに余裕がなくなる」という悪循環になっていることが少なくありません。
(2)「人」に対する役割が広がっている
近年の管理職にはメンバーとの関係で求められる役割が増えており、仕事の進捗管理や評価だけでなく、メンバーの育成、エンゲージメントの向上、キャリア支援、ハラスメントへの配慮、メンタル不調の予防まで期待されています。役割の拡大に対して、そのための時間の確保や会社側からの支援が追いつかなければ、管理職が業務負荷の面や精神面で圧迫されるのは当然といえます。
(3)上と下をつなぐという裁量の余地がない役割を担っている
管理職は、上司の方針を現場の仕事に落とし込み、現場の実情を上司に伝える役割を担います。ここで、単なる伝達役ではなく、全体最適や将来の変化を重視する上司と、目先の業務を回すことで手いっぱいのメンバーという「優先事項の違うポジションの人たち」の間に立つことになるため、双方の事情を受け止める立場になります。上司の方針と現場の実態について管理職がどうこうできる裁量があるわけではなく、双方の理解を得るという責任だけがあります。
(4)裁量はないが統制責任が強まっている
近年は、働き方改革に基づく労務管理や職場でのコンプライアンスなど、守るべき事項が増えています。「残業は抑えろ」、「ルールは守れ」、「記録も残せ」といった要請に応えるための実務負担は、しばしば管理職に集中します。このような守る責任は重くなりますが、それをサポートしてくれる人を確保できるわけでもないため、このような観点でも「裁量がないのに責任だけ負わされる」という感覚を生んでいます。
2.管理職がやるべき4つの対策とは?
管理職の役割が持つ構造を踏まえると、やるべきことは以下の4つです。
(1)頑張り方ではなく、仕事の持ち方を変える
目指すところは業務の棚卸しと標準化、それに基づくメンバーへの業務移管ですが、最初から業務全体を棚卸ししようとするとそれ自体が新しい負担になってしまいます。
そこで、「この1か月で自分が3回以上巻き取った仕事」を1つ書き出し、その仕事だけを対象に、作業手順・注意点・完成イメージを箇条書きにしてみてください。まずは今週1回だけやってみるのでかまいません。それをメンバーに話した上で、その仕事を任せましょう。
管理職の仕事を変える第一歩は、大がかりな見直しではなく、「いつも自分に戻ってくる仕事」を1つだけ人に渡せる形にすることです。
(2)「人」に関する役割は、「早く気づいて、適切な人につなぐ」
近年の管理職は、メンバーの育成、エンゲージメントの向上、キャリア支援、ハラスメントへの配慮、メンタル不調の予防も担っていますが、それをすべて管理職ひとりで処理しようとすると、かえって行き詰まります。大切なのは、メンバーの変化を早めに捉え、対話の機会を持ち、早めに人事や産業保健スタッフなどにつなぐことです。
ここでも、最初から理想的な面談や支援体制を目指す必要はありません。次回の1対1や面談で、まず1つだけ「このテーマは自分で抱え続けず、人事や産業保健スタッフに相談する」という基準を決めれば十分です。たとえば、欠勤が続く、表情や発言の変化が大きい、ハラスメントの訴えが出た――このいずれかがあればひとりで抱えない、と決めるだけでも、管理職の負担はかなり違ってきます。
(3)問題を上司やメンバーにとって「自分事」化する
上司の方針と現場の実情がずれるのは、管理職の力量不足というより、そもそも立場の違いから生じています。ここで管理職が「忙しい」、「回らない」と感覚で訴えてみても、立場の違いは埋まりません。上司から見ると、忙しいこと自体は珍しくなく、自分が動かなければならないほどの問題があるとは認識されないからです。
立場が違っていても話を前に進めるには、あなたの案件が上司自身の問題であると認識させること(自分事化)が必要です。たとえば、「追加でこれをやるとしても、その分だけこの既存業務をいったん止める必要があるが、それでよいか」「○さんがA、B、Cのタスク、△さんがD、E、Fのタスクをやっており、さらにタスクを追加するなら人も追加してほしい」のように、組織設計上の問題として示すと、上司自身の問題にもなり、現実的な解決につながります。これは難しいことではなく、自分が知っている事実を書き出すだけでできます。この対策のポイントは、問題を上司にとっての「自分事」にすることなので、メンバーとの間でも同じことが言えます。
(4)統制責任の重さには、注意力ではなく仕組みで対応する
残業管理、コンプライアンス、記録の徹底といった要請は、今後も軽くはならないと思われます。だからこそ、「毎回気をつける」「その都度確認する」という注意力に頼るのではなく、チェック項目、確認の頻度、異常が出たときの報告先などを決めておくという仕組み化が有効です。
とはいえ、最初から全部を整える必要はありません。今月は1つだけ、たとえば残業確認だけをチェック項目化してみる。毎週金曜に、月45時間を超えそうなメンバーがいないかを見る。そのラインを超えそうなら、翌週の仕事配分を見直すか、上司に相談する。このくらいの小さなチェックでも、管理職の「その都度気をつける」負担はかなり軽くなります。
管理職の苦しさは、しばしば本人の能力不足・努力不足として片づけられがちですが、それだけでは解決できない管理職の役割の構造に原因があることも少なくありません。ぜひ役割の構造から問題にアプローチして、「うまく回せる管理職」になっていただきたいと思います。
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