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山積みの仕事を乗り越え続けるためには|「あえて休む」の重要性

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この記事でわかること

  • 慢性的に仕事が積み上がり、休めずに働き続けてしまう管理職の負荷は、個人の能力ではなく組織構造によって生まれています。こうした状況では、1日の成果ではなく、長期的にパフォーマンスを保ち続ける視点が欠かせません。本記事では、仕事から心理的に離れる「Psychological detachment」の重要性と、それを妨げる「深追い型」「残響型」を整理し、休めない状態がなぜ起きるのかと、負荷と付き合い続けるための捉え方が分かります。

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    20時。今日中にやるべきことは一通り終えたはずなのに、『もう30分だけ…』と部下の資料チェックに取りかかる。途中で上司から来たメールにも気づいてしまい、明日の会議資料の粗も心配になり、気づけば今日も深夜まで残業。

    管理職の苦難は、徹夜して一晩でやりきるような若手時代の突発的な忙しさではなく、毎日大量の仕事が積み上がり続ける状況にあります。

    多くの管理職に見られるこの状況は、本人の能力によるものではありません。組織のフラット化による業務範囲の拡大、成果主義の圧力、部下対応や労務対応による業務量増加など、さまざまな要因が管理職の負荷を押し上げています。

    日々、業務が山積みになるのは、個人の能力不足というより、より大きな社会・組織の構造に基づく面が大きいです。しかし、このような構造はすぐに変わるわけではありません。だからこそ、目下押さえておくべきは「どうすれば山積みの仕事を健やかに乗り越え続けられるか」です。

    追い込まれると、得てして人は工夫を諦めて長時間労働で解決しようとします。しかし、管理職が健やかに日々の業務を乗り越え続ける上で重要なのは、『1日のパフォーマンスを最大化する』ことではなく、『長期的にパフォーマンスを高水準に保ち続ける』ことです。そのためには、目の前のタスクに流されて働き続けるのではなく、無理にでも休むことが必要です。

    本記事ではその点に着目し、戦略的に休息を取るためのヒントを整理します。

    1.仕事が山積みだからこそ、『休む』ことが重要

    仕事を進める上で、仕事術はもちろん重要です。

    しかし、管理職として働く上で求められているのは、一日中高い負荷の中で働いたとしても、翌日には再び万全の状態で仕事に取り掛かることです。

    これは、いわばレジリエンス※1の問題です。

    一般的にレジリエンスとは、ストレスや逆境の中でも、適応・回復して機能を保つ力を指します。レジリエンスを高める方法としては、「自己効力感を高める」「相談できる他者とのつながりを持つ」といった方法がよく挙げられますが、正直それができれば苦労はしないと思う方も多いはずです。

    そこで本記事では、より具体的で実効性のあるレジリエンスの高め方として、「仕事を忘れ、あえて思い切り休むこと」に注目します。この方法を下支えする考え方として、Psychological detachment(仕事が終わったあとの、頭の中での仕事からの心理的距離)を取り上げます。Psychological detachmentの水準が高いほど、ウェルビーイング※2・睡眠※3・疲労低減※4に良い影響が出る傾向があります。

    さらに状況の深刻さを認識いただくために、リカバリーパラドックスについても触れます。仕事で強い負荷が掛かれば掛かるほど Psychological detachmentのような回復行動が取りにくくなる※5ことが示されており、これをリカバリーパラドックスと言います。

    つまり、休むべき状況になればなるほど、休めなくなるのです。この状況を打開するためにも、むしろ仕事における勇気ある決断として「休む」行為を捉える必要があります。

    次章では、「休む」上で重要な要素である「Psychological detachment」を妨げる要素について扱います。

    2.Psychological detachmentを妨げる要素

    管理職が Psychological detachmentを確保できていない要因は、大きく2つに分けられます。

    1つは、「深追い型」であり、必ずやるべき範囲を超えて、遅くまで働き続けてしまうことです。

    これは厳密にはPsychological detachmentを達成するための前提となる、「仕事を終わらせる」ことに関する要素ですが、実際多くの管理職が「深追い型」に囚われ続けるせいでPsychological detachmentに至ることができません。

    もう1つは、「残響型」です。

    仕事を終えてPCを閉じた後も、未完了タスクが頭をよぎったり、メールを確認してしまうことです。
    Psychological detachmentを高める方法にはいくつかありますが、「残響型から抜け出すことが最も有効な方法でしょう。

    管理職が仕事から心理的に離れられない要因として、遅くまで仕事を続けてしまう「深追い型」と、仕事後も頭の中に仕事が残る「残響型」の2つを示した図

    この2つは似ていますが、打つべき手は違います。「深追い型」では”どこで仕事を止めるか”の設計が必要であり、「残響型」では”終業後に、いかに仕事から離れるか”が問われます。

    3.原因①「深追い型」への対処

    深追い型の厄介なポイントは、本人には「真摯に仕事に向き合い、責任を果たしている」ように感じられることです。まだ仕事が続いているのですから、当然Psychological detachmentも成立しません。

    深追い型から抜け出す上で重要なのは、”どこで止めるか”を、“先”に、明確に決めておくことです。具体的には、「始業時点で、今日絶対に終えるべき仕事を特定する」ことが重要です。

    つまり、「今日終えないと本当にまずいこと」と「まだ猶予があること」を分けるということです。管理職は自身の労働において、「まだ猶予があること」と「明日以降のための休息」を天秤に掛け続ける必要があります。

    しかし多くの管理職が「まだ猶予があること」を「今日の残りの体力」と見比べて、体力の限界まで残業し続けてしまいます。

    4.原因②「残響型」への対処

    それ以上に厄介なのが残響型です。「考えるだけなら仕事ではない」と思いがちですが、脳のリソースの観点では、仕事を再開しているのに近い状態です。Psychological detachmentを確保する上で、「残響型」の労働を真っ先に解決すべきでしょう。

    残響型から抜け出すための実効的な方法として、ここでは2つの方法をご紹介します。

    1つ目は、「仕事に触れる時間枠を固定すること」です。たとえば「夜は22時に1度だけPCを確認する」といったように、仕事を確認する回数と時間帯を先に決めてしまいます。

    仕事のことを考える時間をゼロにすることは非現実的でも、“いつでも反応する状態”をやめるだけで、残響の頻度を大きく下げられます。

    2つ目は、紙のメモ帳の活用です。Psychological detachmentが重要とはいえ、仕事外の時間は良いアイデアが浮かぶ貴重な時間帯でもあります。ただ、考えが浮かぶ度に社用スマホに都度メモしていては、結局メールやチャットを開いて仕事を再開することになります。

    そこで、紙のメモ帳を使うことで、『思いついたら記録だけして、処理は翌朝に回す』と決めておくのです。合わせて、紙に書くことで、脳内を占有する情報を一時的に排出することで、残響の影響を軽減できるでしょう。

    なお、使ってみると分かる通り、メモ帳ほどのサイズに文章を書きつけようとは思わないはずです。必然的に書きとめる内容は単語ベースの雑記となり、ダラダラと仕事が頭の中に残ることを防ぐことができます。

    5.まとめ

    山積みの仕事を前に、管理職が検討すべきは「いかに今日のパフォーマンスを最大化するか」ではなく「長期間にわたってパフォーマンスを高水準に保つか」という点です。

    そのためのキーワードが Psychological detachmentであり、それを妨げる要因を「深追い型」と「残響型」に分けて解説しました。特にPsychological detachmentを確保する上で重要な要素である「残響型」への対処については、

    • 終業後に仕事に触れる時間枠を固定化する
    • 紙のメモ帳を使う

    ことをご提案しました。

    忙しいからこそ、むしろ仕事における勇気ある決断として「休む」行為を捉えて確保すべきであり、そのために実効的な方法を日々の生活に取り入れていただきたいというのが、本記事のメッセージです。

    参考文献

    1. Troy, A. S., Willroth, E. C., Shallcross, A. J., Giuliani, N. R., Gross, J. J., & Mauss, I. B. (2023). Psychological resilience: An affect-regulation framework. Annual Review of Psychology, 74, 547–576.Pereira, D., & Elfering, A. (2014). Social stressors at work and sleep during weekends: The mediating role of Psychological detachment. Journal of Occupational Health Psychology, 19(1), 85–95.
    2. Pereira, D., & Elfering, A. (2014). Social stressors at work and sleep during weekends: The mediating role of psychological detachment.
    3. Fritz, C., Yankelevich, M., Zarubin, A., & Barger, P. (2010). Happy, healthy, and productive: The role of detachment from work during nonwork time. Journal of Applied Psychology, 95(5), 977–983.
    4. Cho, H., Steege, L. M., & Pavek, K. U. (2024). Psychological detachment from work during nonwork time as a moderator and mediator of the relationship of workload with fatigue and sleep in hospital nurses. Sleep Health, 10(5), 558–566.
    5. Sonnentag, S. (2018). The recovery paradox: Portraying the complex interplay between job stressors, lack of recovery, and poor well-being. Research in Organizational Behavior, 38, 169–185.

    執筆者情報

    • F.K

      「働く人およびその家族の幸せにつながる組織変革の実行」を心情に、日々コンサルタントとして業務に取り組む。正しいことを示すだけでなく、クライアントが実際に行動できる状態につなげることを大切にし、顧客に寄り添う伴走型支援を得意とする。

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