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1on1で話すことがない|意義ある対話を続けるための基本の型

TOP 1on1で話すことがない|意義ある対話を続けるための基本の型

この記事でわかること

  • 1on1で何を話せばよいか分からず、終わったあとに手ごたえを感じられない場面があります。その背景には、扱うテーマの広がりや、ゴールが曖昧なまま対話が進んでしまう状況があります。本記事では、1on1を「聞き切る・整理する・扱い方を決める」の3段階で捉え、なぜ対話が噛み合わなくなるのかと、問題が整理され次の一手が見える進め方を理解できます。

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    「1on1は大事だ」と言われることは多いものの、現場のマネジャーにとっては、毎回その価値を実感できるとは限りません。時間は取っている。必要性も分かっている。それでも終わったあとに、「今日は何が残ったのだろう」と感じる。そんな1on1になってしまっている人は少なくないのではないでしょうか。

    上司「最近どう? 何か困ってることある?」

    部下「……ちょっと忙しいです」
    (提案書がまだ終わっていないのに、部門会議の資料もそのまま自分担当で、正直かなりきつい)

    上司「提案書と部門会議の資料、両方あるもんね。優先順位つけるの難しい?」

    部下「そうですね……」
    (優先順位というより、そもそも両方そのまま自分が持っているのがしんどい。でも、そこまで言うと面倒に聞こえそう)

    上司「まずは、提案書の方を先に片づける感じかな。部門会議の資料は後ろ倒しできそう?」

    部下「いや、部門会議の資料も早めに出したいと言われていて……」
    (だから詰まっているんだけど、うまく伝わらない)

    上司「なるほど。じゃあ、もう少し早めに相談してくれるとよかったかもね」

    部下「はい、すみません」
    (相談のタイミングの話になった。言いたかったのはそこじゃない)

    一見すると、よくある1on1です。

    ただ、部下が話したかったのは「相談のタイミング」ではなく、「そもそも両方の仕事をそのまま抱えているしんどさ」だったのかもしれません。

    1on1が苦しくなるのは、対話スキル以前に、この時間のゴールが曖昧なまま運用されているからです。

    1.1on1とは、何をする時間なのか

    この記事でいう1on1は、通常の業務会話では見えにくい課題を扱い、次の支援や行動につなげる時間です。

    雑談や進捗確認が悪いわけではありません。ただ、それだけで終わるなら、わざわざ時間を取る意味は薄くなります。毎回深い話をしなくても、問題が整理され、次の一手が少し明確になれば十分です。

    2.なぜ1on1で「何を話せばよいのかわからない」と感じるのか

    1on1は本来、マネジメントを前に進めるための型だった

    1on1は本来、現場マネジメントを前に進めるための定型でした。上司が、現場で起きている問題を早めに把握し、部下の状況を理解し、次の支援や判断につなげるための「型」として仕組み化されたものです。だから元々は、1on1で「話すべきこと」、「対話のゴール」がはっきりしていたと言えます。

    しかし今は、多様なテーマを扱う

    ところが今の1on1には育成、離職防止、キャリア支援、心理的安全性、コンディション把握など多くの期待が重ねられています。その結果、業務上の詰まりだけでなく本人が問題を定義するテーマまで持ち込まれやすくなりました。

    例えば「今の役割に納得感が持てない」「このまま同じ仕事を続けていてよいのか迷う」「育児や介護を見据えると働き方を考え直したい」などは、本人が問題定義の中心になるため、上司の観察や経験で話を進めることが難しいテーマです。

    しかも、本人の行動改善だけでは扱えない問題も混ざる

    加えて、1on1で扱うテーマが広がるほど、本人の工夫や努力だけでは解けない問題も入ってきます。例えば「業務量は変わっていないのに残業だけ減らせと言われる」「欠員が補充されないまま仕事が増えている」「評価運用の基準が現場実態と合っていない」といった問題は、その典型です。

    実際によくある場面は、部下が制度や配置への違和感や不満を訴えているにもかかわらず、「相談の仕方を工夫しよう」「もっと早めに声を上げよう」と、本人の行動改善の話にずらしてしまうケースが少なくありません。上司としては前向きに返しているつもりでも、部下からすると「本当に困っていることはそこではない」と感じてしまいます。

    逆に「仕方ないことだから」「組織の事情だから」と正論で押し返してしまうケースもよく見られます。こちらも、その場では収まるかもしれませんが、部下からすれば「訴えてもしょうがない」と1on1への期待が下がってしまうことになります。

    しかも、そこには本人の工夫だけでは解けない問題も混ざります。そのため、1on1では「話を聞いて助言する」だけでは足りなくなっています。

    3.1on1が苦しくなるのは、上司にアドリブ力が求められすぎるから

    ここまで見てきたように、今の1on1では、業務上の詰まりだけでなく、キャリア、働き方、役割への違和感、制度や配置に対する不満など、さまざまなテーマが持ち込まれます。しかも、その中には本人が自分で問題を定義しているものもあれば、本人の努力だけでは解けないものもあります。そうなると上司は、その場で何を聞くか、どこまで聞くか、どう整理するか、どう終えるかを、毎回アドリブで考えなければなりません。

    1on1が苦しいのは、話題がないからというより、このアドリブの負荷の大きさです。

    実際、上司が早く助言しすぎて話を閉じてしまったり、逆に聞くだけで終わってしまったりするのは、能力や熱意の問題というより、毎回アドリブでその場で回さざるを得ないことによる構造的な問題です。

    よくある1on1の改善策は「もっと上手に聞くこと」に寄りがちですが、1on1で本当に難しいのは、聞くことそのものより、聞いた内容を整理し、どう扱うかまで決めることです。だからこそ必要なのは、話し方のうまさより、対話を前に進める型です。

    4.1on1の基本の型

    1on1の基本としておすすめしたいのは、「聞ききる → 整理する → 扱い方を決める」の3段階で進める型です。

    まずは全体像だけ押さえてください。

    段階(Step)目的意識すること避けたいこと
    聞き取る部下の不安・不満・違和感・問題認識を十分に出してもらう具体的な場面や経緯を尋ね、上司が早く問題を定義しすぎないすぐ助言する/一般論に寄せる/本人努力の話に戻す
    整理する出てきた内容を論点として見えるようにする事実と感情、個人で動かせる部分と組織側の論点を分け、必要な背景情報を補う結論を押しつける/上司の解釈でまとめ切る
    扱い方を決めるその場で全部解決しなくても、誰がどこでどう扱うかを明確にする本人が動くのか、上司が支援するのか、他につなぐのか、持ち帰るのかを決める話しただけで終える/問題を宙に浮かせZ

    Step1 聞ききる

    最初の目的は、問題を十分に現像することです。

    上司が早く答えを出しすぎると、話は進んでいるように見えても、部下の違和感は残ります。

    そのため、最初は答えよりも、話を引き出す問いを置くことが大切です。

    最初の質問例つなげやすい問い
    最近の仕事のしやすさは、10点満点だと何点くらいですか。その点数にしたのはなぜですか。もう1点上がるとしたら、何が変わるとよさそうですか。
    前回の1on1の時と比べて、最近の調子は良くなっていますか?悪くなっていますか?それはどうしてですか?前回から今日までの間になにかきっかけになる変化はありましたか?
    最近、やりにくさを感じた場面はありましたか。どんなやりにくさでしたか。それは自分で動かせそうですか、それとも周りの影響が大きそうですか。
    話したいことがすぐ出なければ、最近ちょっとモヤっとした場面からでも大丈夫です。何かありますか。そのモヤっとした感じは、何が引っかかっていたのでしょう。似たことは前にもありましたか。

    Step2 整理する

    整理の目的は、部下の話をきれいに要約することではありません。

    何が起きていて、どこが論点で、誰がどう扱う話かを見えるようにすることです。そのために、上司が意識したいのが次の「整理のコツ」です。

    整理のコツ簡単な解説良い例悪い例
    大きい言葉を場面に落とす「モヤモヤする」「納得感がない」のような言葉は、そのままだと論点が広すぎます。まずは、どの場面でそう感じたのかを確認します。「どんな場面でそう感じましたか?」「つまり不満があるということですね」
    気持ちと事実を分ける気持ちを軽く扱わずに、その背景にある事実も確かめます。感情だけでも、事実だけでも整理は進みません。「しんどいと感じているのはもっともです。そのうえで、実際に起きていることは何ですか?」「気にしすぎでは?」「まずは事実だけ教えて」
    論点を1〜2個に絞る1on1で出る話は広がりやすいので、その回で扱う論点を絞ります。全部を一度に整理しようとしないことが大切です。「論点はいくつかありますが、今日はまず業務量の話から整理してもいいですか?」「評価の話もキャリアの話も働き方の話も、全部大事ですね」
    「個人で動けること」「上司・組織が扱うこと」を分ける本人の工夫で前に進む話と、上司や組織の支援が必要な話を混ぜないようにします。「ここは本人の進め方で変えられそうです。一方で、ここは役割設計の話ですね」「まずは自分でできることを考えよう」
    整理のつもりで早くまとめすぎない上司が整理したつもりでも、論点を縮めすぎると、部下が本当に話したかったことを取りこぼします。「役割への違和感と、業務量へのしんどさが両方ありそうですね」「つまり忙しいということですね」

    たとえば、部下が「今の仕事に納得感が持てません」と話したとします。

    このとき、すぐに「何が不満なの?」と返すと、話が広がりすぎたり、逆に閉じたりしがちです。まずは、それが仕事内容そのものへの違和感なのか、業務量のしんどさなのか、評価との関係なのかを見分けることが大切です。

    Step3 扱い方を決める

    このステップは、毎回の1on1の最後に行うことです。

    1on1のゴールは、毎回きれいな解決策を出すことではなく、1on1が終わった後のアクションをはっきり決めることにあります。

    ここで気をつけたいのは、「次の動き」を何でも本人の努力や工夫に落とし込まないことです。現場の努力だけでは解決しにくい矛盾や理不尽な状況では、上司が引き取る、あるいは当面の負荷軽減策を考える着地も必要です。

    また、毎回その場で結論を出し切る必要もありません。

    今日は整理だけで終わる、次回までの確認事項だけ決める、暫定的な対処だけ決める。

    そうした終わり方も、1on1を前に進める立派な着地です。

    類型テーマ例着地上司の役割
    本人が動く本人の工夫や行動で前に進みやすいテーマのとき次回までに試す行動を1つ決める問いを返し、選択肢を広げ、本人が自分で決められるようにする
    上司が支援する本人だけでは動かしにくく、上司の支援や調整が必要なとき上司が引き取ることを決め、必要なら当面の負荷軽減策もあわせて決める業務分担の見直し、役割の明確化、関係者との調整などを引き取る
    他につなぐ現場の上司と部下だけでは解きにくく、他の窓口や上位者につなぐべきとき誰につなぐか、上司がどこまで伴走するかを決める人事、上位者、関係部署などに適切につなぎ、必要に応じて状況共有や同行を行う
    整理して持ち帰る話が重い、事実確認が不足している、上司も即答できないとき次回までの確認事項と、根本解決が難しい場合は当面の対処を決める論点を持ち帰り、何を確認するか、次回どこから再開するかを明確にする

    5.次回の1on1で、やってみること

    1on1の準備は重く考えすぎなくて構いません。

    最初は、前回のメモを1行見直し、今回の最低成功ラインを1つ決めるだけでも十分です。想定外の話題が出たときは、無理に解決しようとせず、最後に4類型のどれで終えるかを決めます。

    次回の1on1では、最後の3分だけ意識してみてください。

    その話を「本人が動く」「上司が支援する」「他につなぐ」「整理して持ち帰る」のどれで終えるかを決める。まずはそれだけで十分です。

    6.まとめ

    1on1で話すことがないのではありません。

    毎回のゴールと着地が曖昧なまま、多様な問題を受け止めようとするから苦しくなるのです。

    だから必要なのは、毎回うまい話をすることではなく、聞ききる、整理する、扱い方を決めることです。良い1on1とは、問題の見え方が少し進み、次の一手が少し明確になった時間です。

    執筆者情報

    • N.M

      仮説とデータから組織課題を読み解くコンサルタント。組織や人に関わる課題について、理論やデータを手がかりに、事実を一つひとつ検証しながら考えている。調査結果を示すだけでなく、そこから何が言えるのかを問い、価値ある示唆につなげることを大切にしている。管理職が複雑な課題を根拠にもとづいて考えるための視点を届けている。

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