1on1で出てきた不満を、上司はどこまで受け止めるべきか|聞くだけで終わらせず、抱え込みすぎもしない1on1の進め方
2026.07.13
2026.07.13
この記事でわかること
- 本記事では、1on1で出てきた不満に対して、上司が何に迷いやすいのか、不満の奥にどのような話が重なっているのか、不満を受け止めることと確認・調整・抱え込まないことをどう整理すればよいのか、さらに明日から使えるフレーズを交えながら、4つの視点から解説します。
目次 閉じる
1on1の終盤、上司が「ほかに気になっていることはある?」と聞くと、部下は少し言いにくそうに話し始めた。
「正直に言うと、今の仕事量はかなりきついです」
その部下は、普段から責任感があり、多少難しい依頼でもなんとか形にしてくれる、上司としても期待しているメンバーです。
ただ、最近は通常業務に加えて、予定外の依頼や他部署との調整も増え、部門をまたぐプロジェクトにも入ってもらっている。周囲のメンバーのフォローを任せる場面もある。上司としても、「たしかに最近、かなり任せている」と感じる部分があります。
言っていることは分かる。しかし、ここで人員を増やす、業務を減らすと約束できるわけではない。かといって「みんな忙しいから、なんとか優先順位をつけて進めてほしい」と返せば、部下には「結局、自分で抱えるしかない」と映るかもしれない。
「状況は分かった。確認しておく」と返すこともできる。ただ、何を確認するのかをはっきりさせないままだと、部下からは「話したけれど、結局どう扱われたのか分からない」と見えるかもしれない。
このように1on1において不満が出てきたとき、どのように扱えばよいかで悩む上司は少なくないと思います。
ここでいう不満とは、「すぐに業務を見直してほしい」「上司にもっと支援してほしい」といった明確な意思表示だけを指すものではありません。日々の仕事の中で部下が感じる違和感や納得ができないモヤモヤとした感情も含まれます。それは部下が「このままでよいのだろうか」と感じている状態です。
こうした不満は、どう扱われるかが見えないままで積み重なると、部下の中では「この場で話をしても、あまり前に進まない」という感覚につながることがあります。そうなると、1on1は本音を話し、次につなげる場ではなく、不満を一度吐き出すだけの場になってしまいます。
だからこそ、1on1で不満が出たときに難しいのは、その場で正しい答えを出すことだけではありません。
答えを出せない場面でも、その話をどう扱うのかを少しでも見える形にしておくことです。
本記事では、そのために何を整理すればよいのかを見たうえで、最後に、すぐに使える次の一言を紹介します。
「今日の話は、○○として見ます」
1.1on1で不満が出ると、上司は「答え」ではなく「扱い方」に迷う
部下から不満が出たとき、上司が困るのは、受け止める必要性が分からないからではありません。
多くの上司は、部下のしんどさや違和感を軽く扱ってはいけないことを分かっています。
迷いやすいのは、受け止めた話に対して「その場で答えを出すこと」以上に「この話をどう扱うか」という点です。
共感するのか、本人の工夫に返すのか、上司が確認するのか、組織の問題として扱うのか。
ここがはっきりしないまま対応すると、次のような対応になってしまいがちです。
| 扱いに迷ったときにやりがちな対応 | その結果、何が起きるか |
|---|---|
| 聞くだけで終わる | 共感はしても、次にどう進めるかが決まらない |
| 抱え込みすぎてしまう | 自分の権限外のことまで「なんとかする」と約束してしまう |
| 本人努力の問題にしてしまう | 業務量や役割の問題を、本人の工夫の話にして本人に返してしまう |
| 正論で押し返す | 組織事情や制度上の制約を伝えるだけだと、部下には突き放されたように映る |
部下の不満への向き合い方は、仕事の進め方を具体的に教える、本人の考えを引き出す、上位者や関係部門につなぐなど、状況によって変わります。
本記事では、1on1の全般の技法ではなく、不満が出たときにまず行いたい最初の整理に絞って考えます。聞くだけで終わらせず、かといって上司が一人で背負い込みすぎないための現場で使いやすい出発点になります。
2.不満の奥には、複数の話が重なっている
不満が出たときの最初の整理で大切なのは、部下の言葉を一つの意味に決めつけないことです。
たとえば「仕事量がきつい」という言葉も、業務量そのものだけを指しているとは限らず、優先順位、やめる仕事の不明確さ、人員体制、周囲との連携、上司の仕事の渡し方など複数の要因が重なっていることがあります。
実際の支援場面でよく起きているのは、上司は「いったん預かって、調整できる余地を探ろう」としている一方で、部下は「明日から何を優先すればよいのかを決めたい」と感じている、というすれ違いです。
たとえば、部下が「今の仕事量がきつい」と話したとき、上司は「関係者に確認して、減らせる業務がないか見てみよう」と受け止めていることがあります。上司としては、部下の話をきちんと預かり、できる範囲を探ろうとしている状態です。
しかし、部下が本当に知りたかったのは、「今週はどの業務を優先すればよいのか」「増えた仕事の代わりに、何を後ろ倒ししてよいのか」だったかもしれません。
このずれが残ると、上司は気にかけているつもりでも、部下には「相談しても変わらない」と映りやすくなります。
そこで必要になるのが、部下の言葉を一度ほどき、上司がどこまで引き受けるかを分けることです。
3.受け止めることと、抱え込むことを分ける
部下の不満を受け止めることは、その内容をすべて正しいと認めたり、その場で解決を約束したりすることではありません。
大切なのは、「受け止めること」「次に確認すること」「抱え込まないこと」を分けることです。
| 整理の観点 | 上司がすること |
|---|---|
| 受け止めること | 部下が感じているしんどさ、違和感、納得できない気持ちを否定せずに受け止める |
| 次に確認すること | 部下の言葉をほどいて見えてきたことに応じて、優先順位、減らす仕事、突発的な依頼の調整、関係者との調整、上司の仕事の渡し方など、次に確認する範囲を決める |
| 抱え込まないこと | 人を増やすこと、すぐに業務を減らすこと、他部署からの依頼をすべて止めることなど、 その場で約束できないことまで背負わない |
たとえば、「仕事量がきつい」という不満に対しては、一度にすべてを解決しようとするよりも、順番を分けて返すと整理しやすくなります。
「今の仕事量がかなりきつくなっていて、このままだと無理が出ると感じているのですね」
「まず、どの業務が特に負荷になっているのかを一緒に整理しましょう」
「私の方では、優先順位を見直せるものや、止められる業務がないかを確認します。ただ、この場で人員を増やす、すぐに業務を減らすと約束することはできません」
このように分けて返すと、部下には「話を受け止めてもらえた」ことと、「次に何を確認してもらえるのか」が伝わりやすくなります。上司にとっても、その場で約束できないことまで背負い込まずに済みます。
上司の責任は、部下の不満をすべて解決することではありません。不満をなかったことにせず、次の進め方が見える状態にすることです。
4.明日からの一歩:最後に「今日の話は○○として見ます」と添える
毎回の1on1で、ここまでの整理をすべて使いこなす必要はありません。
まず試しやすいのは、1on1の最後に、次の一言を添えることです。
「今日の話は、○○として見ます。」
これは、きれいな結論を出すための言葉ではありません。部下から出てきた不満を、上司がどのような話として受け止めたのかに名前をつけるための言葉です。
たとえば、同じ「仕事量がきつい」という話でも、最後の置き方は一つではありません。
「今日の話は、業務量と優先順位を確認する話として見ます」
「今日の話は、突発的な依頼が重なっていることによる負荷の話として見ます」
「今日の話は、本人の工夫だけでなく、仕事の割り振りとして見る話だと受け止めます」
このように言葉にすると、部下は、自分の不満を上司がどう受け止めたのかを理解しやすくなります。
上司にとっても、その話をどこから確認するのか、どこまではその場で約束しないのかを整理しやすくなります。
慣れてきたら、最後の30秒で次の3点を確認します。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 1.何の問題として扱うか | 業務量、優先順位、役割期待、権限、連携、上司の関わり方など、どの論点に近いか |
| 2.誰が何を確認・整理するか | 上司が確認すること、部下が整理することを分ける |
| 3.次回、何を判断するか | 次回の1on1や別の場で、何を返すのか、何を決めるのかを確認する |
たとえば、部下から「仕事量は変わっていないのに、残業だけ減らせと言われる」と話が出たときは、1on1の最後に次のように返すことができます。
「今日の話は、残業時間だけの話ではなく、業務量と優先順位の話として扱いたいと思います。私の方では、今の業務の中で止められるもの、後ろ倒しできるもの、他の人に渡せるものがないか確認します。○○さんには、特に負荷が高い業務を整理してもらえますか。次回、それをもとに優先順位を見直しましょう」
言葉にして終えることで、部下にも上司にも、次に扱う論点が見えやすくなります。
3点すべてを毎回きれいに言い切る必要はありません。まずは、「今日の話は、○○として見ます」と一言添える。余裕があれば、次回までに誰が何を確認するかを一つだけ決める。そこから始めてみてはいかがでしょうか。
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