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部下のメンタル不調に上司はどこまで付き合えばいいのか|見るべきは部下の心の中ではなく“ジレンマ”

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この記事でわかること

  • この記事では、部下のメンタル不調を見抜く方法ではなく、仕事に出ている変化の裏にある「ジレンマ」をどう見極めるかを、以下の3つのポイントに沿って解説しています。
  • 能力不足に見える変化の裏に、どんなジレンマがあり得るか
  • 上司が見直せる「要求・裁量・支援・期待値」とは何か
  • 本人に踏み込みすぎず、明日からどう声をかけるか

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    「あれ、最近任せてる仕事があまり進んでないな」

    部下と仕事をしていると、そう感じる場面に遭遇することがあります。

    苦手な仕事もあるが、大抵のことは真面目にやり遂げてくれる、ある程度安心して仕事を任せられるメンバー。そう思っていたのに、なんだか最近、進捗が遅れがちで、確認漏れや手戻りも増えている。会議での反応も薄く、報告や相談も前より少ない。

    こういう場面に遭遇したとき、私の場合は2つの考えが同時に頭に浮かびます。

    一つは滞ってる仕事を前に進める前提で「何か困ってることがあるなら早めに相談してくれればいいのに」、「一度改めて話し合ってみよう」などと考えること。そしてもう一つは、逆に「もしかしてこれってメンタル研修でやった不調のサインかも」、「普段真面目なメンバーなのでここで強く言うと追い詰めることになるかも」と考えることです。ただ実際には仕事に支障も出始めていて、周囲のメンバーにも影響が出始めているので放置するわけにもいかず、どうしたものかと悩む。

    このように、もしかして部下がメンタル不調かもしれないと感じたとき、

    • 普段通りに介入してよいのか、配慮すべきか
    • 配慮するとしても、どこまで本人の事情に踏み込んでよいのか
    • どの時点で人事や専門家につなぐべきなのか

    こうしたことで悩むマネージャーは少なくないと思います。

    このような悩みに直面したとき、ぜひ一度、“部下が何らかのジレンマに陥っている可能性はないか”を考えてみて欲しいと思います。

    ここでいうジレンマとは、例えば「自分で考えて動きたいが、仕事の要求レベルが高いが故に指示通りに動くしかない」「相談してほしいと言われているが、相談できる時間も空気もない」「期待に応えたいが、何をどこまでやればよいか分からず、無限にやらないといけない気がしてしまう」といった、仕事を前に進めるうえでの身動きの取りづらさのことです。

    こうしたジレンマが続くと、徐々に仕事の進捗やパフォーマンスに影響が出始めます。そしてそれは上司から見ると、「抱え込み過ぎ」「相談不足」あるいは「メンタル不調」のような兆候として現れることになります。

    一方でこうしたジレンマを早期に見極め、その内容に応じて仕事の出し方や関わり方を見直すことができると、部下を早期にジレンマから抜け出すきっかけを作ることができ、普段のパフォーマンスに戻せる可能性もあります。

    この記事では、部下が直面しているジレンマの見極め方と、ジレンマ解消に向けて上司にできる対処にはどんなものがあるか、を見ていきたいと思います。

    1.「能力不足」に見える変化の裏に、ジレンマがあるかもしれない

    部下の変化は、最初は小さく見えます。

    例えば、進捗が悪いと感じる。ミスが増えた気がする。会議での発言が少なくなったかも。報告も減ってるかも。よくよく考えたら遅刻や突発的な休みも増えてたかも。挙げたらきりがありませんが、こんな兆候です。

    もしこれらが続いているなら、通常であれば、放置せずに話を聞いたり、必要に応じて指導したりするのではないでしょうか。

    もちろん、実際に指導が必要な場合もあります。

    報告が遅いなら、報告のタイミングを決める、確認漏れが多いなら、チェックの仕方を見直す、周囲とのやり取りに問題があるなら、具体的な行動として伝える。経験の浅い社員なら、こうした指導をしながら様子をみるのが一般的だと思います。

    しかし、これが冒頭に挙げたような、普段は任せられると思っている部下に生じている変化だとしたら、少し見方を変えてみてもよいかもしれません。

    もしかするとその部下は、仕事を前に進めるに進められない“ジレンマ”に陥っている可能性があります。

    表1.目に見える変化と、その裏にある部下が抱えているジレンマの例

    目に見える変化背景にあるかもしれないジレンマ
    進捗が滞るやることは多いが、優先順位を決める裁量がない
    ミスが増えるスピードは求められるが、確認する時間や支援がない
    報告が減る相談してほしいと言われるが、相談すると評価が下がりそう
    会議で反応が弱い期待に応えたいが、何を求められているか分からない
    勤怠が乱れる負荷が高い状態が続き、回復が追いつかなくなっている

    私の経験上も、普段であれば自発的な報告や相談をしてくれるメンバーからの自発的な発信が少ないなと感じる場面で、率直にどういう状況なのかをいろいろと聞いていくと、「自分でもう少し考えたいと思って悩んでいるうちに想定以上に時間が経ってしまっていた」「期待に応えようといろいろと試行錯誤しているうちに、何が求められているのかわからなくなってしまった」、といった形で、一人で考え込んでしまいループから抜け出せなくなってしまっている状況だった、ということがままあります。

    上司から見ると「このくらいの仕事の内容なら、いつもお願いしているレベルとそう変わらないだろう」と思って軽い気持ちで振った仕事でも、部下から見ると「なんだか急にハードルが上がったな」「でもできないと思われたくないのでなんとかできるところまで頑張ろう」と抱え込んでしまう。こうしたズレが放置されると、本人の能力不足に見える問題として表に出てくることがあります。

    もちろん、本人に起因して指導すべき課題があるなら、それはそれで指導する必要もあるでしょう。ただ、その手前で、本人がなんらかの“ジレンマ”に陥っていないかを気にしてみる。これを意識するだけで、その後の打ち手は変わります。

    もしジレンマが潜んでいた場合、どんな打ち手があるのかは、次のトピックで見ていきたいと思います。

    2.まず疑うのは「本人」ではなく、任せ方と関わり方

    ここで、少しだけメンタル不調の問題にも触れておきます。

    働く人のメンタル不調は、本人の性格や上司との関係だけで決まるものではありません。仕事の負荷、裁量、周囲の支援、本人の体調や家庭の事情など、複数の要因が絡み合って起きると考えられています。即ち、仮にメンタル不調に起因した問題が部下に発生していたとしても、上司にすべての原因があると考える必要はありません。

    一方で、仕事の任せ方や期待値の置き方、相談しやすさなど、上司の関与の仕方は、メンタル不調に影響する重要な要因であることは間違いありません。だからこそ、部下の変化が気になったときに、まず点検したいのは、本人の心境の変化ではなく、上司側の日々の仕事の任せ方と関わり方です。

    ここでは、次の4つに着目したいと思います。

    表2.部下のジレンマ解消に向けて上司が見直しできる4つの要因

    点検すること上司が見直せること
    要求仕事量・難易度を下げられなくても、分解できないか
    裁量本人が決めてよい範囲、相談すべき範囲は明確か
    支援「困ったら相談して」ではなく、相談が発生する接点があるか
    期待値完成度・優先順位・期限が見えているか

    たとえば「要求」は、仕事を減らすという意味ではありません。仕事量をすぐに減らせない場面でも、「まず今週は課題の洗い出しまで」と分解することはできます。

    「裁量」は、本人に丸ごと任せることではなく、どこまで自分で決めてよいかを明確にすることです。

    「支援」は、急に声かけを増やすことではありません。「水曜の午前に5分だけ進捗確認を入れる」など、相談が発生する接点をつくることです。

    「期待値」は、どこまでやれば十分かを見えるようにすることです。「完成版ではなく、論点が分かるメモでよい」と伝えるだけでも、一人で抱え込むことは減るでしょう。

    もちろん、これだけやればすべてがうまくいくわけではありません。

    ただ、この4つのどれかを見直してみるだけでも、本人が抱えているジレンマの解消に一歩近づく可能性はあります。

    そしてこれはいずれもマネジメントそのものの改善であり、結果としてメンタル不調を未然に予防することにつながる可能性もあります。

    3.明日からできる一歩:気になる部下の「ジレンマ仮説」を考える

    部下の不調が気になるときは、介入して指示すべきか、メンタル不調として配慮すべきか、のどちらかで悩む前に、まずは本人に声をかける前の下書きとして使う程度で構いませんので、次の3つをメモしてみてください。

    <例>3つのメモ

    今見えている変化:Aさんの進捗が、締切直前まで見えづらくなった

    ジレンマ仮説:やることが増えすぎて、優先順位を自分で決めにくくなっているのかも

    上司側でまず見直せそうなこと:依頼している仕事の優先順位を、こちらが明確に伝えきれているか確認する

    こうした整理を短時間でよいのでやってみたうえで、気になる部下に「優先順位や進め方で迷っているところがないか、一緒に確認したい」と声かけしてみることをおすすめします。

    相手との関係性にもよりますが「最近、報告が少ないよね」と直球で聞いたり、「何か気持ちの面で落ち込んでたりしないか」と安易に部下の内面に踏み込むのはあまりおすすめしません。なぜなら、それによって“この上司は何もわかってくれない”といった別の問題を引き起こすリスクがあるからです。

    もちろん、部下と「ジレンマ仮説」を検証し、見直し可能な部分を見直しても、以前のパフォーマンスになかなか戻らない、もしくは業務や周囲への影響が大きくなってきた、という場合は、一人で抱え込まず、上位者、人事、産業保健スタッフなど、必要な相手につなぐことも考えてみて下さい。

    本記事で見てきたように、以前よりもなんだかパフォーマンスが落ちたな、と感じる部下がいる場合、

    • 部下がジレンマに陥っていないか
    • 要求・裁量・支援・期待値のどこかを見直すとしたらどこか

    を考えてみること。これだけでも、次の声かけは変わります。

    そのうえで、一方的に決めつけず、フラットに今の進め方でやりづらい部分がないかを一緒に確認し、見直せる部分は見直してみる。もしそれでも一人で抱えきれないときは、必要な相手につなぐ。

    これが、部下のためにも、チームのためにも、上司側のマネジメントを改善するためにも、明日からできる現実的な一歩ではないでしょうか。

    執筆者情報

    • W.M

      人事コンサルタントとして、新しい課題やまだ見ぬ仕事、多様な人との出会いを前向きに受け止め、企業ごとに異なる発見を重ねている。決まった答えがないからこそ、「もっと良い方法はないか」と考え続ける姿勢を大切にしている。管理職がいつもの見方を少し広げ、課題を捉え直すきっかけとなる視点を届ける。

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