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任せた仕事が危ういとき、どこまで口を出す?|部下の自律を損なわない介入の見極め方

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この記事でわかること

  • 部下に任せた仕事を見て、「このままでは危ない」と感じたとき、どこまで口を出すべきか迷うことがあります。成果を守るためには介入が必要な一方、答えを与えすぎると、部下が自分で考え立て直す機会を失いかねません。本記事では、仕事への影響や本人の状態を踏まえて介入の「強さ」と「仕方」を分けて考え、「待つ」「問いかける」「確認する」「一緒に考える」といった関わり方をどう選ぶか、その判断の視点を整理します。

目次 閉じる

    1. 任せた仕事が危うい!あなたならどうする?

    「次回のA社への提案、今回は佐藤さんに主担当をお願いしようと思っている」

    営業課の田中課長は、入社5年目の佐藤さんにそう伝えました。

    A社は長年取引のある食品メーカーです。今回は、老朽化が進む主力工場に、予防保全サービスの導入と一部設備の更新を提案する予定でした。

    競合も提案に入っており、今回の商談は今後の設備更新にも影響する重要案件です。

    商談の1週間前、田中課長は佐藤さんに途中の資料を見せてもらいました。

    サービスの特徴や他社での導入事例は、きれいに整理されています。

    ただ、田中課長には気になる点がありました。

    A社のどの設備に、どのような問題があるのか。

    導入時に、ラインをどの程度止める必要があるのか。

    投資を何年程度で回収できそうなのか。

    こうした、A社が気にするはずの論点が十分に整理されていません。

    田中課長自身、かつてA社を担当していました。

    A社の高橋製造部長は現場経験が長く、「うちの工場で本当に効果が出るのか」「ラインはどれだけ止まるのか」「投資は何年で回収できるのか」と、具体的な数字を気にするタイプです。

    田中課長の頭には、すぐに高橋部長が問いかけてくる顔が浮かびました。

    「ここは、ライン停止時間と投資回収まで入れた方がいいよ」

    そう言ってしまえば早いでしょう。自分で資料に手を入れれば、もっと確実です。

    しかも今回は、「失敗も経験」と簡単に割り切れる案件ではありません。

    一方で、佐藤さんに主担当を任せたのは、単に資料を作ってもらうためではありません。

    顧客が何を気にするのかを自分で考え、提案を組み立てられるようになってほしい。そんな思いもありました。

    ここで答えを教えるべきか。
    それとも、もう少し本人に考えてもらうべきか――。

    今回は、こんな場面で「どこまで手を出すか」「どう関わるか」を考えるための視点をご紹介します。

    ポイントは、「待つか、巻き取るか」の二択にしないことです。

    2. なぜ介入に迷うのか?

    (1)成果も、育成も気になる

    管理職がこうした場面で迷うのは、目の前の成果を守りながら、部下にも成長してほしいと考えるからです。

    今回でいえば、A社との商談までに、顧客が納得できる提案に仕上げる必要があります。これは、誰が担当していても変わりません。

    一方で、そこまでにどこまで任せ、どこから支えるかは、部下によって変わります。

    求める成果は同じでも、そこまでの支え方は同じではありません。

    (2)「自分でやった方が早い」けれど……

    経験のある管理職ほど、「自分でやった方が早い」と感じる場面も多いでしょう。

    目の前の成果を守るためには、自然な判断です。

    ただ、いつも管理職が答えを示していると、部下は自分で考え、立て直す経験を積みにくくなります。すると、次の仕事でも管理職が手を出すことになり、なかなか任せられる仕事が増えません。

    逆に、任せられる仕事が増えれば、管理職自身も、新しい顧客の開拓や仕組みづくりなどに時間を使いやすくなります。

    だからこそ、「成果か育成か」の二択ではなく、成果を守りながら、本人が自分で立て直せる余地をどこまで残せるかを考えることが大切です。

    では、何を見て判断すればよいのでしょうか。

    3. 介入の「強さ」と「仕方」を分けて考える

    (1)「できる人だから大丈夫」とは限らない

    ここで注意したいのが、「できる人なら、任せておけば大丈夫」とは限らないことです。

    組織・人事コンサルタントとしてさまざまな職場を見ていると、「できる人ほど仕事が集まる」という場面をよく目にします。

    しかも、集まるのは仕事の数だけではありません。

    ベテランやエース層には、「この人なら任せられる」と、難しい顧客への対応や重要案件など、重い仕事も集まりやすくなります。

    そのため、能力は十分でも、仕事を抱え過ぎて、今は自分で立て直す余力がないこともあります。

    実際の現場でも、評価が高い方の残業時間が長くなっている傾向はよく見られる状況です。

    「この人ならできる」と、
    「今、この人に余裕がある」は、同じではありません。

    (2)「どこまで手を出すか」と「どう関わるか」

    そこで、部下への介入は、二つに分けて考えてみます。

    一つは、「どこまで手を出すか」です。

    このまま進んだときの仕事への影響と、本人が今、自分で立て直せそうかを見て、介入の強さを考えます。

    もう一つは、「どう関わるか」です。

    自分で考えてもらうのか、ヒントを出すのか、一緒に整理するのか。本人の状態に合わせて、関わり方を変えます。

    つまり、

    介入の「強さ」は、仕事と本人の余力を見る。
    介入の「仕方」は、人を見る。

    次の図に、この考え方と3人のケースを整理しました。

    部下に任せた仕事への影響と本人の余力から管理職の介入の強さを判断する図
    佐藤さん鈴木さん山田さん
    能力・経験経験はまだ浅め提案経験が豊富能力・経験ともに高い
    問題への気づき気づき始めてる問題も把握問題は把握している
    修正の方向性何を詰めるか曖昧修正観点も明確修正観点は見えている
    今の負荷・時間余力一定の余白あり余力あり他案件集中で余力が乏しい
    立て直せる余力
    (総合判断)
    中大小
    介入の例問いかける+確認
    (考える視点を渡す)
    いったん待つ
    (声かけだけ行う)
    一緒に整理をする
    (論点を一緒に整理をする)
    ※上記は介入を考える際の目安であり、機械的に介入方法を決定するものではありません

    4. ケースに当てはめると、どうなる?

    佐藤さんのケースに戻ってみましょう。

    商談まではまだ1週間あり、修正する時間は残っています。

    一方、A社への提案がうまくいかなかった場合の影響は小さくありません。

    田中課長が、

    「今の提案で、一番弱いところはどこだと思う?」

    と聞くと、佐藤さんは、

    「A社にとって何がメリットなのかは、まだ整理し切れていない気がします」

    と答えました。

    問題には気づき始めています。ただ、何を詰めればよいかまでは、まだ十分に見えていません。

    そこで田中課長は、答えを伝える代わりに、

    「高橋部長がこの資料を見たら、最初に何を聞くと思う?」

    と問いかけます。

    さらに、

    「一度考えてみて、明日の午前中にもう一度見せてもらえる?」

    と、次に確認するタイミングを決めました。

    完全に任せるわけでも、答えを渡してしまうわけでもない。

    「問いかける+確認する」という関わり方です。

    では、経験豊富な鈴木さんならどうでしょうか。

    「ライン停止時間と投資回収が弱いので、今日中に詰め直します」

    と話していれば、問題も、どう直すかも分かっています。

    この場合は、いったん任せて待つことができます。

    一方、課内のエースである山田さんには、十分な経験と能力があります。

    ただし今週は、別の大口顧客への提案とトラブル対応を抱えています。

    「何を詰めるべきかは分かっていますが、今回は少し一緒に整理してもらえると助かります」

    と言われたなら、

    「導入効果、ラインへの影響、投資回収の三つを一度一緒に整理しようか」

    と支えることもできます。

    能力が高いことと、支援が必要ないことは同じではありません。

    5. 明日から試してほしいこと

    部下の仕事を見て、「ちょっと危ないな」と感じたら、すぐに答えを伝える前に、まず三つだけ考えてみてください。

    • ①このまま進んだとき、どこまで影響があるか
    • ②本人は、今の問題にどこまで気づき、自分で立て直せそうか
    • ③本人は、今どんな支えを必要としていそうか

    ①と②を見ながら「どこまで手を出すか」を考え、③を見ながら「どう関わるか」を考えます。

    もちろん、成果を守るために、すぐに答えを伝えたり、仕事を巻き取ったりすることが必要な場面もあります。

    ただ、その前に一度だけこの三つを考えることで、次のような選択肢が見えやすくなります。

    「待つ」

    「問いかける」

    「確認する」

    「一緒に考える」

    目の前の成果を守りながら、本人が自分で立て直す機会も残していく。

    その積み重ねが、将来「任せられる仕事」を増やし、管理職自身が新しい仕事に挑戦できる余力をつくることにもつながるのではないでしょうか。

    執筆者情報

    • Y.W

      事業会社の人事部門での経験をもとに、人に関わるテーマと向き合っている。人は思い通りに動くものではないという実感があるからこそ、一般論だけでなく、現場の状況を丁寧に捉えることを大切にしている。周囲と知恵を出し合いながら、よりよい答えを探し続けている。

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