新しい仕事は増えるのに、何も減らない|管理職は新しい仕事の時間をどうつくるか
2026.10.01
2026.10.05
この記事でわかること
- 新しい仕事が増えるたびに、自分の残業や空き時間で何とか埋め合わせてしまう。そんな状態が続くと、管理職自身の負担が増えるだけでなく、新しい仕事も既存業務も中途半端になりかねません。本記事では、仕事が増えても既存業務が残り続ける理由を整理したうえで、仕事の進め方や分担を見直し、それでも両立しない場合は上司と優先順位をそろえるまでの考え方を紹介します。
目次 閉じる
朝8時30分。出社してパソコンを開くと、未読メールが27件。Teamsにもいくつかメッセージが届いている。
- 「昨日の件、今日中に確認をお願いします」
- 「少しご相談したいことがあります」
- 「この資料、部長に上げる前に見てもらえますか」
まずは急ぎのものだけ返そう。そう思ってメールを開いたところで、部下から声をかけられる。
- 「課長、今ちょっといいですか?」
「ちょっと」のつもりが、話を聞いてみると顧客への対応方針を決めなければならない案件だ。
状況を確認し、関係部署に電話をして、部下に対応を指示する。席に戻ると9時20分。9時30分からは定例会議が予定されている。
会議が終わると、そのまま次の打ち合わせへ。昼休みにメールを返し、午後からは部下との1on1がスタート。
その合間に何件か承認申請の依頼が届き、上司からは「今日中に例の件の数字をまとめておいてほしい」と連絡が入る。
15時過ぎに、別の部下から、「取引先でトラブルが起きている」との相談が入る。部下の相談に対応し終えると、気づけば17時30分。
ようやく予定表の空白がやってきた。少しほっとしながら、「さて、今日やろうと思っていた仕事をやるか」とつぶやく。
朝から働いていたはずなのに、自分がやろうと思っていた仕事は、ここから始まる。
月次報告の資料を作り、来週の会議の準備をし、部下の評価コメントを書く。19時を回ったところで、ようやく一息つく。
そんなとき、上司から新たな業務指示が飛んでくる。
- 「来月から、生成AIを活用した業務改善を進めたい。各課から担当者を出して、週1回、進捗を報告してほしい」
「分かりました」と答えながら、頭の中ではすでにスケジュールを思い浮かべ、誰を担当にするか、自分はどこまで関与するか、
関係部署との調整は誰がするか、週1回の会議をどこに入れるか、進捗資料はいつ作るか、様々な調整を想い描いている。
そして、こんなことを考え始める。
- 「月曜の会議の資料は日曜に少しやるか」
- 「1on1を何人か翌週にずらそうか」
- 「この資料は自分でやった方が早いから、今晩自宅に帰って夜やることにするか」
ここで、ふと気がつく。新しい仕事が一つ増えた。しかし、これまでやっていた仕事は、一つも減っていない。
DX、生成AI、人的資本、エンゲージメント、コンプライアンス、働き方改革、部下との1on1…。
会社として取り組まなければならないテーマが増えるたび、管理職の仕事も増えている。どれも重要な仕事だ。
だからこそ厄介なのだ。「これはやらなくていい」と簡単に言える仕事がないまま、新しい仕事だけが積み上がっていく。
そして最後は、管理職自身が「何とかする」。
新しい仕事が増えたとき、本当に考えるべきことは、果たして「自分がどうやって全部やり切るか」だけなのだろうか…。
この記事は、簡単にはやめられない仕事を抱えながら、新しい仕事にも取り組まなければならない中間管理職に向けたものです。仕事を一気に減らす万能策があるわけではありません。ここで考えたいのは、限られたチームの時間と人手を、新しい仕事と既存業務にどう振り分けるかです。仕事が増えても既存業務が残り続ける理由を整理したうえで、新しい仕事に使う時間をつくる3つの方法を考えます。
1.なぜ、新しい仕事が増えても既存業務は残り続けるのか
新しい仕事が増えても既存業務が残り続ける理由は、大きく2つです。管理職には新しい仕事が入り続ける一方で、今ある仕事にはそれぞれ必要性があり、関係者もいるため、簡単には減らせないからです。
(1)新しい仕事は管理職に集まり続ける
管理職には、会社や上司から新しい方針が示されたり、他部署から協力を求められたりします。それをチームで実行できる形にし、関係者を調整し、誰が担当するかを決めることは、管理職の役割です。加えて、部下からの相談や承認依頼、顧客トラブルへの対応、欠員のフォローなど、予定表に載せにくい仕事も入ってきます。
新しい企画を始めることや担当者を決めることは会議の議題になっても、それに合わせて既存の会議や報告をどう変えるかまで、同じ場で決まるとは限りません。既存業務の見直しが決まる前に新しい仕事が始まるため、仕事は足し算になっていきます。
(2)既存業務は簡単には減らせない
一方、既存業務が残るのは、単に無駄だからではありません。会議、報告、資料確認、顧客対応などには、それぞれ続けている理由があります。関係者が必要としている情報や意思決定の機会を含むこともあり、管理職自身の判断だけでは、やめたり、頻度や水準を変えたりできないものもあります。上司や関係部署との調整が必要な仕事ほど、見直しは後回しになりやすいでしょう。
そこで、自分で進めた方が早い、部下に任せた際の失敗が心配、チーム内に任せられる人がいない、上司に相談しにくい、といった事情が重なると、管理職はまず自分の予定を組み替えて対応しがちです。表面上は仕事が回るため、何と何が両立していないのかが周囲から見えにくくなり、既存業務を見直す必要性も共有されないままになります。
だからこそ、新しい仕事の時間をつくるには、自分の担当範囲で変えられることと、管理職個人では決められず、組織として判断すべきことを分けて考える必要があります。
2.新しい仕事に使う時間をつくる3つの方法
新しい仕事に使う時間をつくる方法は3つです。まず、簡単には減らせない既存業務に対して、(1)仕事の進め方と、(2)担当する人と範囲を見直します。この2つは、管理職が自分の担当範囲でまず行う最低限の見直しです。ただし、それだけでは新しい仕事と既存業務を両立できないことがあります。そこで、増え続ける仕事を個人で抱え込まないために重要になるのが、(3)見直し案を持って上司と優先順位をそろえることです。
管理職がさらに頑張ってすべてをこなすのではなく、まず自分で変えられることを変え、それを超える問題は、組織が判断できる形にします。
(1)仕事の進め方を変える
今ある仕事を、「やめる」「対象を絞る」「回数を減らす」「求める水準を変える」の4つで見直します。
例えば、生成AIに関する企画会議を始めるなら、既存の業務改善会議について、まず開催を続ける必要があるかを確認します。必要性が薄れていればやめ、必要なら、参加者を絞る、毎週から隔週にする、毎回作っている詳細資料を月1回にする、記載項目を要点だけにする、といった変え方が考えられます。
「残すか、やめるか」の二択ではありません。会議に必要な情報共有や意思決定は維持しながら、参加者、開催頻度、資料の作成頻度や記載内容を見直せないかを考えます。
(2)担当する人と範囲を見直す
仕事そのものを残す必要があるなら、新しい仕事と既存業務を合わせて、チーム内で誰がどこまで担うかを組み替えます。管理職が担当している仕事も、すべてを自分で持つ前提にせず、部下の業務量や経験を確認したうえで、情報収集、初稿作成、関係者への連絡など、一部の作業から任せられないかを考えます。
その業務に必要な知識・情報・決定権を他部署が持っている場合は、自部署だけで抱えず、自部署に残す部分と関係部署に担ってもらう部分を整理します。ただし、分担を変えても、チーム全体の仕事量が自動的に減るわけではありません。部下や他部署に負担を移すだけにならないよう、チーム内に余力がない場合は、次の方法に進みます。
(3)見直し案を持って、上司と優先順位をそろえる
仕事の進め方や分担を見直しても、必要な時間を確保できない場合があります。上司への定例報告や他部署との会議など、自分だけでは頻度や水準を変えられない仕事もあります。その場合は、自分の残業や空き時間で埋め合わせ続けるのではなく、何が両立していないのかを、判断できる立場に返します。
上司には、「何が両立しないのか」という判断材料と、「両立させるために、どの業務をどのように見直すか」という代替案をセットで示します。
例えば、「新しい企画には週8時間ほど必要ですが、今の予定では週5時間ほどしか確保できません。このままでは月次報告の確認が翌週にずれます。A会議を隔週にし、詳細資料を月1回にすれば、必要な3時間を確保できそうです。A会議の頻度は私だけでは変えられないため、この見直しで進めてよいか相談させてください」と伝えます。
相談の目的は、「忙しいので仕事を減らしてください」と依頼することではありません。今の人員と時間では何が両立しないのか、両立させるためにどの業務をどう見直すのかを示し、どの仕事を優先し、どこを見直すかを上司とそろえることです。
状況と見直し案が共有されれば、上司は、どの仕事を優先するかを判断し、必要に応じて上位者や関係部署との調整、役割分担や人員配置、会議・報告の運用見直しを検討できます。管理職の役割は、すべてを自分の工夫で解決することではありません。自分で変えられる範囲を見直したうえで、それでも両立しないことを明らかにし、組織として判断できる状態にすることが重要です。

3.明日から試せる一歩
明日から、すべての仕事を棚卸しする必要はありません。今進めている新しい仕事を1つだけ取り上げ、次の順番で見てみてください。
1.影響が出ている仕事を1つ確認する。
新しい仕事にどの程度の時間が必要かをおおまかに見積もり、その結果、夜や空き時間に回している仕事、後回しになっている仕事を1つ確認します。
2.進め方か分担の見直し案を1つ考える。
仕事をやめる、対象・回数・水準を変える、担当する人と範囲を見直すなど、現実的に試せそうな案を1つ選びます。
3.自分だけでは変えられない部分を、案とともに上司へ返す。
何が両立していないのか、両立させるためにどの業務をどう見直すのかを整理して相談します。
全部を一度に変える必要はありません。新しい仕事が増えたとき、自分の残業や空き時間で埋め合わせる前に、今ある仕事の進め方や分担を1つ見直す。それでも両立しないなら、見直し案とともに優先順位の判断を上司へ返す。それが、限られたチームの時間と人手を新しい仕事に振り向け、足し算だけのマネジメントから抜ける第一歩です。
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