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【コンサルティングコラム】
「グローバル人材」の育成・活用に向けて - 第3回:イノベーターとしてのグローバル人材(2)

前回確認したように、情報化社会の到来によって「イノベーションの7つの機会」のうち(1)〜(6)はイノベーションを決定づける要因ではなくなってしまった。この結果、二つのことが言える。

  • まず、(イノベーションによって)競争優位を確保する為には、(1)〜(6)を競合会社と比較して卓越したレベルまで引き上げるか、(7)の成功確率を高めるかのどちらしかないということ。
  • 次に、(1)〜(6)ですら実行できない企業は、その市場から脱落してしまうということ。

現在、多くの日本企業が、国内市場で苦しんでいる要因は前者であり、海外市場で苦しんでいる要因は後者である。要するに、国内においては「把握した情報を適切に読み解くことができない」あるいは「技術開発と適切な連携がとれない」という点がインベーションを生み出す上でのボトルネックになり、海外においては「情報そのものを正しく迅速に把握することができない」という点がボトルネックになっている。この違いが、国内における「イノベーション人材不足」、海外における「グローバル人材不足」の問題としてクローズアップされているのである。

上記を踏まえると、グローバル人材に求められるのは、まずは(1)〜(6)を徹底できることであろう。そして、ここでの「徹底」とは現地の人間と同じレベルで現地市場のニーズを知り、価値観の変化を察知することができるという意味である。「ソコソコ理解している」程度では脱落する。あくまでも現地と同等のレベルが必要になる。しかも、定量的な分析レベルでは、ほとんど差異が生じない以上、定性的なものを把握できなければ、結局、取り残されることになってしまう。平たく言えば「肌感覚」のようなものをキャッチできるかどうかが鍵となる。

その為には「行動しながらギャップを見つけ出していくこと」が重要になる。もちろん思考することも重要である。しかし、人間は自らの社会的・文化的な背景から離れ、完全に中立的な価値観に基づき思考することはできない。海外市場を対象とした場合には、どうしても誤りが生じてしまう。理屈では「常に自らの思考の立脚点を疑わなければならない」とか「自らの価値観に捉われずに考え、行動することが必要である」とか言うことはできるだろうが、実際には、日々の業務の中で土台となる価値観に疑問を持ち始めたら、思考も行動もストップしてしまいかねなない。

例えるなら、(やや極端かもしれないが)建築家に「これからは基本的な物理の法則を信じてはいけない」と言い聞かせるようなものである。重力の法則に疑問を抱き始めれば、安全性を机上で計算できなくなってしまう。そうなれば、試行錯誤のための十分な時間と費用を与えられない限り、新しく斬新なデザインを構想することは、事実上、無理である。建築家たちは、安全性が保障された従来の「カタチ」を踏襲し続けることになるであろう。海外で事業を展開する人材に対して「自らの価値観を疑え」と命ずることは、多分にそのような性質を持っていることを理解しておかなければならない。

従って、海外市場においては「行動しながらギャップを見つけ出していくこと」が大きな意味を持つことになる。知見の少ない海外市場においては、完全を期し、一発で確度の高い商品・サービスを提供しようとするよりも、まずはアクションをおこしたほうがよい。まずはアクションを起こしてみてから、成功であれ、失敗であれ、当初の期待と目の前の状況のギャップを見つけ出すことに集中するべきである。

ただし、ギャップは漠然と眺めているだけでは把握することが難しい。何を期待していたのか自覚していなければ、差異が生じていること自体に気付けない。想定される結果をリアルに予測しているからこそ、違いに気付くことができるのである。また、行動量が少なかったり、行動する状況が限られていたりするようであれば、実際に差異が生じる場面が限定されてしまうことになる。「どれだけ仮説を持って行動できるか」と「実際の行動量をどれだけ増やせるか」の二点が大切なポイントとなる。グローバル人材は、仮説を持って主体的に行動を繰り返すことで、ギャップを見つけ出していくことが求められるのである。次回は、この点を前提に必要な能力の整理を行っていきたい。

なお、一点、補足しておくと「仮説を持って試行錯誤をすること」は、先ほど挙げた「自分の価値観を疑うこと」とは相反するものである。自分の思考の立脚点に自信があるからこそ、想定と異なる結果が出た場合に「おかしい」と気づくことができる。「なぜ、違いが生まれたのか?」を考えることができる。また、自信を持って活発に行動し続けることも可能になる。大切なのは、相手を信じることでも、自分を疑うことではなく、ギャップを冷静に見極めることである。だからこそ、単に語学力が高く異文化に順応できるだけでは、グローバル人材としての価値を発揮することが難しい。その為には、自分の中に確固たる軸がなければならない。価値観の確立は、少なくともイノベーターとしてのグローバル人材においては不可欠な要素であると考える。

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