企業理念・ビジョン浸透が必要となる背景
企業理念・ビジョン 浸透が課題となる代表的なシチュエーションは2つあります。
1つ目は、成長過程の企業においてです。社員が50~70人くらいまでの規模であれば、創業者・創業メンバーと社員の距離が近く、お互いが大事にしていることが「肌感覚」で何となく伝わるものですが、70名を超えるあたりから伝わりづらくなると言われます。社員全員が同じ目的・ゴールを目指して、一体感を持って成長し続けられる会社にしていくためには、「会社の目指す姿」「本当に大事にしたいこと」を、分かりやすい形で共有できるようにすることが重要になります。
2つ目は、「第二の創業期」として変革を迫られている企業においてです。これまでの成功体験にとらわれず、社員の意識・行動を会社が目指す新たな方向に舵取りをしていくためには、新しい理念・ビジョンの発信を通じて、これまでの常識や価値観を打破する必要があります。
企業理念・ビジョン浸透の目的
「ミッション・ビジョン・バリュー」は経営の上位概念と呼ばれます。言わば、この会社がどこに向かっているのかを表す羅針盤となるものです。
「ミッション・ビジョン・バリュー」を浸透させる目的は、社員一人ひとりが目の前の仕事に忙殺されるのではなく、仕事の先にある大きな目的や目標を意識して、自律的に判断・行動する会社を目指すことです。
ところが、会社の規模が大きくなってくると、創業者や創業メンバーが判断の拠り所として持っていた「思い」や「信念」が伝わりづらくなってきます。
新興成長企業のケースでは、まだ経験の浅い年若いマネジャーが5~7人のメンバーを持つようになり、メンバーたちも決して成熟しているとはいえない人も少なくないでしょう。マネジャーの能力が「仕事」か「対人」かのどちらかに極端に偏っていると、本来会社として重視したい価値観や判断基準がうまく伝わらず、現場に困惑をもたらすことになります。
また、成熟していない部下が理想と現実の折り合いを付けてポジティブに状況を受け止められるように導くためには、かなりの説明能力とコミュニケーション能力が求められます。マネジャーの力量のみに依存せず、一貫したメッセージが伝わる仕組みや仕掛けを補う必要があります。
企業理念・ビジョンが組織に浸透するメリット
企業が成長していくと、顧客や事業が拡大し、社員の職務内容や職務に求められる成果も多様化していきます。事業や職務の違いに関わらず「共通に大事にすべきこと/判断の拠り所」となるものがないと、組織の拡大とともに組織は縦割りになり、コミュニケーションはさらに非効率になります。
企業理念・ビジョンによる求心力の維持・強化なしに、セクショナリズムの弊害を乗り越えた、合理的で効率的な組織へと成長することはできません。
企業理念・ビジョンをどのように浸透させるのか ~クレイア・コンサルティングのアプローチ
企業理念・ビジョンを言語化する構築フェーズと人事制度等の仕組みに展開していく浸透フェーズに分かれます。構築フェーズでは、経営層の考える「ありたい姿(理想像)」を多面的な切り口から浮かび上がらせ、目指す姿をその背景にある問題意識とともに言語化します。
1.経営陣ワークショップ
会社のDNAとなる「何か」を持っているのは創業社長や創業メンバーであるという前提に立ち、経営陣との議論を通じて企業理念・ビジョンのエッセンスを抽出します。人それぞれ思考様式や言語化能力に違いがあるため、コンサルタントが客観的な立場から整理し、体系化します。整理の軸としては大きく「感性」と「論理」の2つがあります。
【感性】
- コアバリュー(経営者の思い・信念・問題意識)
- ミッション(究極的な存在意義)
【論理】
- ドメイン(どこで・誰に・どういう価値を提供するか)
- KSF(重要成功要因)
【感性と論理の中間】
- ビジョン(未来への展望・構想・未来像)
- ブランドパーソナリティ(こうありたい/見られたいという姿)
2.従業員の意識分析
従業員が自分たちの会社をどのように捉えているのかをヒヤリング・意識調査を通じて分析します。経営層の考える理想像と従業員の認識している現実像のギャップを把握することが目的です。経営層が理想(重要)だと思うことを掲げて旗を降ったとしても、従業員にとって不足感や問題意識がなければ、メッセージは届きません。その場合には、問題意識を刺激するメッセージや何らかの仕掛けが必要ということになります。
3.顧客ヒヤリング
客観的に自分たちの会社がどのような存在であるかを把握するには、顧客へのヒヤリングが有効です。顧客の視点から評価のポイントや競合との違いを深掘りしていくと、実は従業員が認識している強みは顧客にとってそうでもないと捉えられていることがあります。むしろ当たり前だと思っていたことが、顧客に選ばれる重要な要因として浮かび上がってくる場合があります。これらの分析結果は、コーポレートコミュニケーション戦略への展開を考える上で重要な示唆となるものです。
4.人事制度/CIへの展開
会社が大事にしたい理念・価値観を仕組み(人事制度)に埋め込むことで、日々の意識・行動に浸透させていきます。それぞれのグレードに求められる要件をわかりやすく具体的な行動例として明らかにし、対応するスキルと評価基準を明示することで、社員が理解しやすい形にまとめていきます。
定期的に評価者トレーニングと被評価者向けの説明会を実施し、評価の目線合わせを継続して行います。人事制度の仕組みの運用を通じ、会社として大事にしたい理念・価値観をそれぞれの現場の仕事に合わせて翻訳して伝えられるマネジャーを育て、CI(コーポレートアイデンティティー)へと繋げていくことが重要です。