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SUMMARY

事業部別人事とは、企業の中で事業毎に異なる人事制度を適用すること、あるいは、事業部毎に独立した人事運営を行うことを指します。

日本企業では、社員は会社と雇用契約を結び、長期雇用の中での人事異動により、幅広い職務に従事することを(会社・社員共に)想定する場合が一般的であり、事業よりも会社への帰属意識が強くなります。

人事制度や人事マネジメントも、個別事業の事情よりも、全社最適を優先した構造と運用がなされる場合が一般的です。

一方で、事業部別人事を採用する場合は、人材フロー(採用・異動配置)、評価・処遇、人材育成などを、事業特性や事業戦略に最も適合するように実行していきます。全社最適が弱まることによる問題も生じますが、社員が所属事業へのコミットメントを強め、各事業の自律的な成長を促していくためには有効な方法です。

事業部別人事が生まれた背景

会社の中には、複数の事業が存在するケースがあります。

1つ目のケースは、バリューチェーンの各段階が事業として括られている場合です。製造機能、営業・販売機能、物流機能などが、それぞれ独立した事業として運営されているケースで、過去にそれぞれが別会社であったものを、合併などによって統合した場合(垂直統合)などがあります。

この場合は、機能ごとに特化した事業単位となっており、人材に求められる能力や専門性、あるいは労働生産性と賃金相場などが異なるために、それぞれの事業(機能)に適した人事制度や人事マネジメントを適用するメリットは大きいと想定されます。

2つ目のケースは、製品やサービス毎に事業が括られている場合です。製品・サービス毎に、ターゲットとする市場と競争環境、あるいは利益率などが異なる場合、それぞれの市場での競争優位を確立するうえで、人材の質(能力や専門性)、あるいは労務コスト水準などが重要な要因となる場合には、事業(製品・サービス)に適した人事制度や人事マネジメントを適用するメリットは大きいと想定されます。

3つ目のケースは、バリューチェーンの全く異なる複数の事業を抱えている場合(いわゆる多角化企業)です。特に、それぞれの事業経営における共通部分が少ない場合には、人事制度や人事マネジメントを共通化するメリットは小さく、それぞれの事業に適した人事制度や人事マネジメントを適用することが自然であると考えられます。

上記のように、会社の中に複数の事業が存在する場合は多々あり得るのですが、事業が異なれば、人材に求める能力や専門性、あるいは適正な労務コスト(賃金)の水準が異なる可能性が高く、事業の独立性(あるいは自律成長への期待)が高まるにつれて、人事制度や人事マネジメントにおいても事業毎の最適化に対するニーズが高まります。

事業部別人事の機能とメリット

事業部別人事のバリエーション

事業部別人事には以下のような段階があります。

【第1段階】
評価制度を事業部別とする段階
【第2段階】
報酬制度を事業部別とする段階
【第3段階】
人材フロー(採用と異動配置)を事業部別とする段階

第3段階まで到達すると、事業間での人事異動は例外的に行われるのみとなり、人事制度と人事マネジメントは原則として事業部別となります。

しかしながら、どの事業においても第3段階を目指すべき、という訳ではありません。それぞれの段階で得られるメリットと、同時に生じる可能性がある副作用(全社最適での人事マネジメントが行いにくくなること)のバランスを考える必要があります。

第1段階:評価制度を事業部別にする

人事評価には、一般的に「方向づけ」「育成」「動機付け」の効果があります。

方向づけの効果とは、評価指標や評価基準を通じて、組織が社員にどんな働き方や成果を求めているのかを具体的に示すことです。

育成の効果とは、評価とフィードバックを通じて、個々の社員の強みと弱みを把握・共有して、今後の職務遂行に活かしていくことです。

動機づけの効果とは、評価結果が処遇に反映されることで、評価指標や評価基準で示された期待に応えようというモチベーションを高めることです。

評価制度を事業部別にすることの最大のメリットは、「方向づけ」において、事業特性や事業戦略をより直接的・具体的に反映できることです。

評価指標や評価基準が事業部別となることで、評価指標や評価基準に対する説明を各事業部が主体的に行うことになり、事業戦略の理解浸透にも効果的です。また、事業戦略の実行に対する貢献度が大きい社員を公正に評価しやすくなります。

第2段階:報酬制度を事業部別にする

報酬制度を事業部別にすることのメリットは、大きく2つ考えられます。

1つ目のメリットは、報酬によるインセンティブ機能を事業部別にできることです。

例えば、賞与原資を事業部別業績に連動させることで、業績目標を達成した事業と、未達成の事業で賞与に格差をつけ、事業業績の達成に対するコミットメントを高めることができます。

2つ目のメリットは、事業別に労務コスト(賃金)水準をコントロールできることです。

例えば、利益率や労働生産性の異なる事業では、平均賞与水準に格差をつけることなどが想定されます。また、賃金テーブルを事業別や職種別に区分することで、固定的な人件費についても事業部別にコントロールすることも可能です。(ただし、賃金水準を事業部別に変えると、事業部間での人事異動は行いにくくなります)

第3段階:人材フローを事業部別にする

人材フローを事業部別にするということは、採用と異動配置を各事業部主体で行うことを指します。人材フローが事業部別になることで、各事業の人材ニーズに対して、より適切な人材をタイムリーに補充しやすくなります。

一般的には、人材ニーズが発生した場合には、異動候補者が所属する部門との調整(交渉)が必要になるか、あるいは人材の余剰が発生している部門からの異動を検討しますが、「より適切な人材を、タイムリーに」という部分は叶えられない場合も多々あります。

しかし、各事業部に採用と異動配置の権限と責任があれば、必要な人材をタイムリーに採用することも可能です。

また、事業部毎の採用と異動配置が原則となれば、社員は(会社ではなく)事業に対するコミットメントを強く持ち、事業に適した人材育成を行いやすくなります。

ただし、人材に余剰が生じた場合でも事業間の異動が難しくなる、事業間での人脈形成が難しくなるなど、人的資源の面で事業間のシナジー効果(あるいは補完効果)は減じられます。第3段階まで来ると、事業部別人事の副作用もより大きくなると想定されるため、慎重な検討が必要です。

クレイア・コンサルティングが提供する事業部別人事の特徴

クレイア・コンサルティングは、人事制度の構築にとどまらず、M&Aやグループ再編などの組織変革を成功させるための人事コンサルティングの実績を多数積み重ねています。

事業部別人事のように、効果と副作用の両面が想定されるような施策について、会社の事業の歴史や経緯、人員構成などの人的資源の状況、今後の事業戦略の展開など、様々な観点から検証を行い、効果を最大化しつつ副作用を最小化するための現実的な方策を考案します。

事業戦略に直結した人事マネジメントのあり方を提言

事業の競争優位要因を、人的資源によって創出していくための人事マネジメント(具体的には、人材フローマネジメント、人材育成マネジメント、人件費マネジメント)のあり方を、総合的な観点でご提案します。

事業別人事ではないことによって生じる問題の解決策を考案することは勿論ですが、表面的・部分的な問題解決ではなく、事業が継続的に成長していくために必要な人事マネジメントのあり方を提言します。

効果の最大化と副作用の最小化

事業別人事の推進にあたっては、全社最適とのトレードオフに対する策の考案が必要となります。

事業別人事を推進することで得られる効果と、付随して発生する副作用(事業部内で発生する副作用、事業部外に与える副作用)を幅広い視点で想定・検証しながら、実効性の高い方策を提言します。

事業部経営陣と人事部を仲介

事業部人事を推進したい事業部経営陣と、全社最適の観点が求められる人事部の間で、建設的な議論と解決策の選択ができるように導きます。

M&Aやグループ再編、事業分社などの組織変革のコンサルティング経験と、様々な状況における人事処遇制度改革の経験を活かして、事業戦略の実行・実現の観点と、全社最適の人的資源管理の観点の両面から施策の効果と副作用を冷静に検証し、客観的な立場で現実的な対策を提言します。

事業部別人事を導入する際の流れ

1.事業部別人事を行う目的の明確化

事業部別人事を行うことによって実現したい効果(あるいは解決したい問題)を明確にします。

同時に、事業戦略と全社最適の観点から、実現したい効果の重要度と優先順位を検証します。

2.現行人事制度の検証

実現したい効果を達成するために、現行人事制度を変更する必要性を検証します。

実現したい効果を達成するために、制度を大きく変更することが不可避の場合もあれば、一部の設計変更や運用変更で対応できる場合もあります。

現行人事制度を総合的に把握・検証することで、全社最適の人材マネジメントを維持したまま、事業部に適した人材マネジメントを付加できるような方策の可能性を検討します。

3.事業部別人事制度の設計

実現したい効果を達成するための人事制度を、必要な範囲で設計するとともに、全社の人事制度との連結方法も設計します。

特に、評価制度や報酬制度など、人事制度の一部分を事業部別とする場合は、全社共通分とのすみ分けや、事業部間で異動があった場合の対応方法などについて、具体的に検討・定義をしていく必要があります。

コンサルタントは、事業部別人事制度の範囲と内容に応じて生じうる副作用を想定し、効果の最大化と副作用の最小化につながる施策を提言します。

4.コミュニケーションプランの設計

事業部別人事制度を導入すると、1社に複数の人事制度が並立する状態になります。

事業部別人事制度を適用する社員に限らず、全社員に対して、事業部別人事制度を含む全社人事制度の考え方を今一度浸透させ、前向きな理解を得ていくことが求められます。

事業戦略に直結する人事制度の必要性、評価と処遇に与える影響、今後のキャリアに与える影響など、社員の立場に立った説明シナリオや想定Q&Aの準備を行います。

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