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【事例7】 国内系列会社のグループ再編に伴う人事統合

SUMMARY
  • 20社超の子会社を傘下にもつAグループを親会社も含めて再編し、統括本社と地域会社に分割・統合するにあたっての、グループ共通人事制度の構築・導入の支援
  • 処遇水準が大きく異なる親会社と子会社の人事制度を、総人件費の上昇を抑えつつ統合
  • 組織再編後の人材再配置を柔軟に行えるように、グループ内人材フローの仕組みを構築
  • 社員の安心感とグループ再編後の意識統合実現を重視し、人事リスクを慎重に検討し、丁寧なコミュニケーションプランを実施

クライアントプロフィール

業種
大手物流会社A社
従業員数
親会社 約2,500人、子会社(20社超) 約1,000 合計3,500人
期間
現状分析:3ヶ月、概要設計:6ヶ月、詳細設計:9ヶ月、導入支援:6ヶ月 計2年

プロジェクト開始の背景

A社では、絶えず変わり続ける事業環境や5期連続の減益という厳しい現実を受け、グループ全体の組織力強化と成長戦略の実現のため、抜本的なグループ再編を検討していました。内容は、A社の各支社を地域別に会社分割し、統括本社と地域会社の体制に再編。更に、A社の傘下にあった20社超の子会社を、新規設立した地域会社にそれぞれ統合するというものでした。

A社と子会社は同じグループ企業ではあるものの、各子会社は買収によってグループ内に取り込んできたケースがほとんどであり、A社の支社と各子会社間の業務協力がスムーズではないケースが多く、同じ地域に拠点を構えながらも、一つの顧客に対してA社の支社と子会社がそれぞれ取引をしていたり、管理機能や業務の重複が多数発生していたりしました。このような状況を打破すべく、経営が出した答えが「親会社をも巻き込んだグループ全体の巨大再編」だったのです。

想定された課題とは

この事例の最大の特徴は、親会社と子会社の統合であるということです。グループ内の子会社同士を統合するケースにおいてさえ、人材の質、給与水準、退職金・年金制度、福利厚生等は会社間で異なり、統合の際には慎重な検討を要します。ましてや親会社と子会社の統合ともなると、その違いは歴然でした。特に給与においては、同じ役職であっても2倍以上の差があるケースも稀ではありませんでした。今回のグループ再編では、A社出身の社員と子会社出身の社員のそれぞれが納得できるような人事制度統合を、人件費を大幅に上昇させることなく実現することが求められました。

また、グループ再編を機に人事として成し遂げなくてはいけないゴールとして、「親会社社員と子会社社員間の壁の撤廃」がありました。前述のとおり、同じ地域、もしくは同じ建物内に勤務していても、社員には「親は親、子は子。親と子は別会社」という意識が強く根付いていました。親会社と子会社の間で人事交流が盛んに行われている地域においても、親社員と子会社の社員の処遇の違いから、お互いに距離を置いてしまっており、それが円滑な組織運営を阻害している様子も多々見られました。そのため、登記上は一つの会社だが蓋を開けたら数種類の社員が混在するような形式上の再編ではなく、本当の意味で会社を一つにすることのできるグループ人事制度の構築が必要でした。

総額人件費を維持しながら、処遇水準が大幅に異なる親会社と子会社を本当の意味で一つにするためには、親会社の社員を中心に大きな不利益変更が発生する可能性が想定されました。そのため、そのような社員の納得を得られる人事制度構築と丁寧な社員コミュニケーションの徹底を心がけながらプロジェクトを進めていきました。

また、全体を通して、統括本社の人事プロジェクトだけで検討を進めるのではなく、定期的に地域会社やその他の子会社の幹部の意見を吸い上げながら、制度や移行ルールを構築していったのも特徴でしょう。その理由として、新たに設立される地域会社は、現在の支社と子会社の幹部社員が新たな経営幹部として協力して統括・運営していくことが求められるとともに、地域に根差した自律的な経営の実現を求められていたため、地域会社経営幹部の理解と協力が新人事制度をスムーズに導入するために必要不可欠だったことがあります。また同時に、一人でも多くの社員が納得できる人事制度・ルールを作るために、彼らの声に真摯に耳を傾けることが大変重要だったのです。

どのような形でプロジェクトが始まったのか?

A社ではこれまでにも複数のコンサルティングファームから話を聞いていたものの、どれも机上の空論だったり最後まできちんと支援してくれるような安心感が得られず、自力での再編を企図していました。しかし当社のコンサルタントと偶然知り合う機会があり、当社の徹底的な現場志向による地に足のついたコンサルティングに興味を持っていただき、提案の上でプロジェクトを開始することとなりました。

- [ グループ会社統合スケジュール ] -

グループ会社の統合スケジュール

プロジェクトの内容

1. 現状分析

今回のグループ再編プロジェクトの対象は親会社を含めて20社超に及びました。そのため分析データ量は多く、かつ、会社間の違いも顕著であり、各社の現状を把握するだけでも一苦労であり、それぞれの比較や統合リスクの分析には、通常より長い期間を要しました。

等級・報酬

等級については各社でほぼ完全に異なっているため、報酬と合わせて総合的に把握していきました。下図はある地域会社として統合される、地域支社および子会社の月例給を比較したものです。各社の等級については能力やスキルレベル、成果の大きさなどを加味しながらグルーピングを行い、それぞれの仮の等級における月例給を比較しています。また、暫定的に想定される報酬レンジを設け、どれくらい乖離が見込まれるのか、言い換えれば、どの程度報酬を下げることによるリスクが存在するのかを、把握していきます。

- [ 統合会社間の月例給比較 ] -

統合会社間の月例給比較

各エリアでの報酬レンジから見た、既存社員の報酬レンジへの収まり具合は下図のようになっていました。地域によってはほとんどがレンジ内に収まり、レンジ以下の社員まで存在しますが、一部の地域ではレンジ以上の社員がかなり多く存在し、不利益変更への慎重な対応が必要なことが判明しました。

- [ エリア別報酬レンジから見た社員の報酬レンジ ] -

エリア別報酬レンジから見た社員の報酬レンジ

評価

評価については、各社の評価項目と評価の分布などを見ながら、各社間での評価の実施形態を把握していきます。下図では各社の評価項目と評価分布についてまとめています。評価項目について、大まかに知識やスキルなどの能力に対する評価と、成果や達成度などの成績に対する評価について、それぞれ現在どのような状況にあるかを見ていきました。ほとんどの会社で能力に対する評価が行われており、人材育成の観点からも能力評価をグループ全体で行っていく方向となりました。また評価の分布については甘辛の差が特に激しい会社を中心に見て行きながら、会社間でどのように評価差を少なくしていくかを検討していきます。

- [ 評価項目と評価分布 ] -

評価項目と評価分布

また、下図では各社における評価分布において、能力と成績の評価上の配分がどのような割合でなされているかをまとめています。会社によっては標準であるB評価以上の評価を多く付け、低い評価を意図的に避けている傾向が見て取れます。

- [ 評価分布における能力と成績評価配分 ] -

評価分布における能力と成績評価配分


今後等級を移行するに際して、各社間での等級や年齢の分布を基に、どのようなリスクがあるかについても洗い出しを行いました。大きくは下図のように中高齢者層が肥大しており今後の労働力確保が難しい現状や、一部の等級における滞留などが見られました。

- [ 等級、年齢の分布から見えてきた課題 ] -

等級、年齢の分布から見えてきた課題

退職金・年金

退職金・年金については、各社でそれぞれ水準が大幅に異なり、人事統合の最大の障害となっていました。定年退職時の水準格差は1,000万円以上あり、この水準差を統一することは人件費リスクと法的リスクの観点から現実的に不可能な状態でした。そのため、後述するように合理的な社員区分を設定して、社員区分ごとに退職金・年金水準を設定して統合していくことが必須であり、この社員区分の設定が最大のキーポイントになりました。

- [ 定年退職時水準格差 ] -

定年退職時水準格差

2.人事統合シナリオの設計

現状分析を行った上で、その結果をリスクの観点からまとめ、統合シナリオの方向性を策定します。これ以降全てのプロセスにおいて、「グループを一つにする」「一人でも多くの社員が納得できる制度にする」という方針を軸に検討を進めていきました。

まず社員のグループ内人材フローに関しての検討です。当初、親会社の支社を会社分割し、支社と子会社からなる地域会社を設立することは決まっていましたが、社員の異動時の扱いについての検討は未定でした。つまり、支社に勤務する親会社の社員を、統括本社(親会社)から地域会社に「出向」させるのか、会社分割と同時に地域会社に「転籍」とするのかは決まっていなかったのです。

人事プロジェクトチームでは、「出向」と「転籍」のメリット・デメリットを洗い出し、今回のグループ再編の目的・方針に立ち返って検討を進めました。例えば、「出向」の場合、一般的な出向と同様、親会社の社員は勤務地に関わらず「A社の社員」のため、「親会社社員としての自尊心」を保つことができ、心理的な動揺を抑えることができます。一方、「転籍」とした場合はどうでしょう。今まで「A社の社員」だった社員は、ある日を境に「子会社と統合された地域会社の社員」と変わります。例え、処遇は変わらないと言われても、社員は戸惑いを感じることが想定されます。中には「自分はせっかく良い大学を卒業して、厳しい就職活動の末に憧れのA社に入社したのに…」と落ち込む社員がいる可能性も考えられます。

一方で、A社の支社勤務者は、地域会社設立後は本社から出向とすると、一つ屋根の下にA社籍の元親会社社員と地域会社籍の元子会社社員が混在することになります。例え物理的な壁が消えても、心理的な壁は残ることが想定されます。

「出向」と「転籍」のリスクを詳細に分析し、話し合いを重ねた結果、人事プロジェクトチームとして「転籍」を採用することに決定しました。今回のグループ再編における人事としての主要方針の一つは「親会社社員と子会社社員間の壁の撤廃」だったため、グループ社員を一つにすることに重きを置き、社員のモチベーション等の想定されるリスクについては、緻密なコミュニケーションプランの検討・実行と、所属会社によるところのない徹底したグループ統一人事制度の構築により回避することにしました。

- [ 組織統合後の社員の人材フローの検討 ] -

組織統合後の社員の人材フローの検討


また、特に大きなリスクである報酬(退職金を含む)面については、4つのリスクの観点から危険度を明確に把握し、それぞれのリスクを最小化するようプランニングを行っていきました。

- [ リスク最小化プランニング ] -

報酬面における4つのリスク_最小化に向けてのプランニング

3.人事制度のグランドデザイン

人件費の上昇を回避しつつ、どのようにグループ社員を一つにする統一人事制度を構築するのかが、プロジェクト最大の課題でした。例えば、報酬水準と福利厚生を含む就業条件を全てA社に合わせて統合した場合、人件費は3倍以上増大することになります。逆に、全てを子会社水準に統合すると、A社社員2,500名全員に大幅な不利益変更が発生し、法的リスクの顕在化、モチベーションダウン、人材流出などは免れません。

現状分析とリスク診断を経た結果として、A社では経営側の要件も踏まえながら、新しい人事制度の8つの要件を設定し、そのために新しい人事制度で必要となる特徴を洗い出しました。

先の人件費(含退職金・年金)の増大問題については、グループ内人材フローを踏まえた社員区分を設定して複数の報酬水準を併用するとともに、外部水準をベンチマークとして合理性の高い報酬水準に統一することとしました。また、賞与の一部を業績連動させて変動費化を行ったり、グループ全体での昇格審査の厳格化で不必要な給与の伸びを抑えたりといった工夫を織り込むこととしました。また、長期勤続といったこれまでの価値観は継続すると同時に、個人の強みを伸ばす人材育成を行ったり、能力や姿勢をより評価する方向に評価制度を変更するなど、社員のモチベーション維持・強化を可能にしました。

親会社と各子会社の等級、評価、報酬の各制度の枠組みは、各社ごとでバラバラだったものを統一することにより、グループ内の人事交流を行う際の混乱を防ぐようにしました。その一方で、各子会社の社員の賞与は各社の業績に連動して可変する形とし、より地域会社へのコミットメントを喚起させるようにしています。

- [ 人事制度構築 ] -

人事制度の構築

4.等級・評価・報酬制度の統合

社員区分と報酬制度

給与・賞与・退職金・年金等の報酬水準については、全社員を一律の水準に統合することは、貢献度に応じた公正な処遇実現の観点や人件費増大の観点から望ましいとは言えないため、複数の社員区分を設定し、社員区分ごとの報酬水準を設定することとしました。社員区分は、グループ再編後の人材フローのあり方を検討した上で、A)転勤のない勤務地限定社員、B)地域会社内の転勤限定の地域勤務社員、C)地域会社間を異動する転勤もある全国勤務社員、の3区分としました。転勤範囲区分が大きいと会社の都合に合わせた配置が可能になりますが、社員にとっては高い適用能力や学習能力が求められ、生活基盤の移動も求められます。そのため、報酬水準も転勤範囲が広くなるほど高くなる仕組みとしました。

社員区分別報酬設定を採用した理由は大きく2点あり、その1点目はグループ社員の意識を一つにすることにありました。

社員区分は、社員の意志と適性によって決まります。A社出身の全社員が全国勤務社員ということもなければ、子会社出身の社員が自動的に勤務地限定社員になることもありません。出身会社に関わらず、本人の意志と能力があれば、自分のキャリアに合わせた勤務地を選択できるのが社員区分の制度です。例えば、今まで特定の地域に根ざした子会社で第一線として活躍してきた優秀な社員は、本人が希望すれば、従来のA社の社員のように、全国を飛び回りながら経営幹部候補としてキャリアアップしていく道が開けていきます。

社員区分の制度は、グループ社員の意識を一つにするだけではなく、従来であれば活用しきれていなかった優秀な社員の発掘と適材適所を可能にし、グループの人材力強化を実現するといった効果もあります。

- [ 社員区分別報酬設定 ] -

社員区分別報酬設定


社員区分別報酬設定のもう一つのメリットは、総額人件費を維持しながらも、制度を一つにできることです。当初、A社では全社員の報酬は全国勤務社員と同水準でした。しかし、中には、「地元を離れたくない」「家族の事情で転勤はできない」といった社員も含まれていました。そのような社員は、働き方としては転勤が発生しない子会社の社員と同様ですが、A社に勤務しているという理由から、高い報酬となっていたという状況がありました。

そのため、社員区分別報酬設定を採用することで、勤務地限定社員や地域勤務社員を自身の意志で選択した社員の報酬を、子会社の社員と同様の水準にまで統合することが可能となります。

また、社員区分別報酬設定を導入したことで、子会社の社員の納得感を担保しながら制度統合を進めることができました。仮に、「あなたたちは、子会社出身だから、A社出身者より低い給与で納得してほしい」としたら、子会社の社員の納得は得られません。しかし、子会社には地元に根差している社員が多く、自ら勤務地限定社員や地域勤務社員を選択するケースが大半でしたので、「あなたたちは、自分の意志で転勤範囲を限定しているのだから、全国勤務社員より低い給与で納得してほしい」と言われれば、子会社の社員も納得がいきます。

等級制度

管理職となる経営職は以下のようにグループの組織階層に合わせ3段階、非管理監督者は役割に合わせて3段階の計6段階に設定しました。

- [ 経営職の等級 ] -

等級制度


今回の再編・統合により、グループ全体のポスト数は減少し、ポスト待ち社員が増加することが予想されました。そのため、今後役職に就くことが難しい社員層に対しては、いわゆる管理職的な扱いとなる経営職とは別に、専任職として付加価値を創造し続けるという等級を設定しました。専任職等級を設定することで、ポスト待ち社員数が減少し、優秀若手社員を引き上げる余地の増加につながります。

また、管理職直前の非管理職に報酬水準が高い子会社の社員が多数分布しており、現場の主力である彼らのモチベーションを下げないように処遇する必要からも、この専任職等級を活用することとしました。

また、各子会社で評価項目にバラつきがあるため、移行当初より全社員をあるべき等級に格付けることは難しいとの判断も行いました。そのため今後数年かけて、統括本社による昇降格審査により、あるべき等級への格付けを行うことにしました。

評価制度

評価は、「成長評価」「バリュー評価」、「成果評価」の3種類を実施することとしました。

「成長評価」では、事前に定めた能力強化目標をどの程度達成できたかで評価します。この評価は、処遇差をつけるためではなく、人材育成が目的の評価と位置付けました。

「バリュー評価」は、子会社社員も含め、A社の理念・行動規範を浸透させるための評価ですが、具体的には降格対象者のリストアップに反映をします。

「成果評価」は、稼ぐためのインセンティブだけでなく、“稼ぎ方”を変えるためにもプロセスの評価が必要と考え、導入を決定しました。“モデルプロセス”を複数設定し、確実にモデル通りのプロセスで成果を上げられるようにしました。

評価プロセスは、管理職が目標設定に十分時間を取れるように、評価は年に一回の実施を想定しました。

5.労働条件・福利厚生の統合

公正な報酬によって社員に報いていくために、就業条件統合案の検討にあたっては、「世間水準を目安として統合する」ことを基本方針としました。但し、全ての就業条件において基本方針を貫くと、従業員にとって大きな不利益変更となり、法的リスクを抱えることや、業務に支障をきたすことが懸念されます。その場合、基本方針とは別のオプションを採用することを検討しました。

- [ 就業条件の統合 ] -

労働条件と福利厚生

6.社員へのコミュニケーションプラン

グループ社員が今回のグループ再編に前向きに取り組む意識を醸成するべく、「グループ再編の目的」から「個人の処遇」まで、整合性(繋がり)のあるメッセージの発信を行いました。重要視したのは、“「目的」との繋がり(大義)を明確にする”、“社員目線での表現とする”、“立場によって物言いが変わらないよう、コミュニケーション実施者は下記構造全体を理解しておく”の3点です。

- [ 社員コミュニケーション構造の全体像 ] -

社員へのコミュニケーション構造_組織再編の目的


業務移管と人事異動に際してのコミュニケーションプラン詳細を固めていく必要がありました。具体的には、異動(転勤)の打診と、それに伴う転勤支援/転身支援の説明方法について、下記構造に沿って具体的なシナリオを固め、子会社の経営陣と担当者にご理解いただく必要がありました。コミュニケーションのタイミングと対象者によって、適切な内容(ニュアンスを含む)を伝えました。

- [ 業務移管と人事異動に関する社員コミュニケーション ] -

社員へのコミュニケーション_業務移管と人事異動

- [ 社員コミュニケーションの具体的シナリオ ] -

社員へのコミュニケーション_具体的シナリオ

7.意識統合と人事制度の運用支援

組織再編の大きな目的のひとつは、グループ社員の意識統合です。故に、本プロジェクトでは、新人事制度の導入を大きなきっかけとして、グループ社員が組織再編後のビジョンに共感し、一体感を感じる事ができるように、新人事制度の導入プロセスを組みたてました。具体的には、新人事制度の説明会は全社員が出席できるように準備し、合計100回を超える説明会を実施しました。特に新人事制度運用の鍵を握る管理職層(評価者)に対する説明会では、旧会社の枠を超えた説明会を設定し、組織再編の意義や組織再編後の戦略と組織マネジメントのあり方について経営幹部が解説を行った後で新人事制度の説明を行い、その後は懇親会を設定して新人事制度に対する本音の感想を引き出すなど、丁寧かつ徹底した導入を行いました。

その後

現在の状況について

無事に数十社の人事制度が統合され、同一の給与テーブルや就業規則が運用開始されました。人事制度の改定に伴って処遇が下がる社員も発生しましたが、混乱やトラブルも一切なく、想定以上にスムーズに人事制度が統合できたという状況です。特に、社員からは「新人事制度は考え方がわかりやすくて筋が通っている」「丁寧に説明してくれたのでよくわかった」「こんなに丁寧に説明してくれる人事部の姿勢に安心感を覚えた」という感想が多く寄せられました。

プロジェクトの成功要因

成功要因は小さいことを疎かにせずに丁寧に検討して積み重ねてきたことに尽きますが、重要なポイントを挙げれば、次の3点であると考えています。

  1. 組織統合の期日から逆算して1年以上の時間を人事統合の準備に充てることができた
  2. 新人事制度の導入準備(社員への説明など)に十分な時間を費やし、丁寧に実施した
  3. 人事制度(あるいは人事部)単独ではなく、組織設計や管理会計など、組織変革に携わる他プロジェクトと有機的に連動し、整合性のあるメッセージ発信を行えた

大規模な組織再編は、社員に相当の不安と動揺を与えます。この不安と動揺を、安心と経営に対する信頼感に変えていくことが人事統合の鍵であると考えています。そのために、1~3のポイントを押えた新人事制度導入ができたことが非常に重要でした。

また、1~3を実現できた背景には、人事部とコンサルタントが二人三脚で社内コミュニケーションを行っていったことが挙げられます。人事統合の準備の重要性、他プロジェクトを巻き込んだ導入の必要性などを、具体的なデータやリスク分析をもとに経営陣に説明することで、経営陣からの全幅の信頼とバックアップを得ることができたと考えています。

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