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人材の流動化(出向・転籍)

SUMMARY

人材の流動化(出向・転籍)とは、雇用契約を締結している企業・組織を離れて、他の企業・組織で職務に従事できるように導く手法です。

出向や転籍は、人材の「出し手」企業・組織と、人材の「受け手」企業・組織の間でニーズが合致し、本人が同意した場合に行うことが可能です。

企業・組織が主導して出向・転籍を行うことで、組織内に活躍の場が見いだせない人材に新たな活躍の場を与えたり、企業・組織の枠を超えて人脈やノウハウの交換・移転をすることができます。

人材の流動化(出向・転籍)が生まれた背景

企業・組織は、雇用されて働く人材(以下:社員とします)に対して、会社都合による解雇を容易に行うことができない代わりに、広範な人事異動・配置の裁量権を持ち、長期間にわたって社員の育成と活用を図ります。

例えば、新卒で採用されて定年再雇用満了まで(23歳から70歳までの47年間)同じ企業・組織で働くとすると、当然ながら、途中で事業の縮小・撤退などの事業構造改革や組織改革、あるいは技術革新などに伴う職務の抜本的変化に直面します。このような変化の中でも、社員の雇用を維持し、活躍できる場を確保していこうとすると、自社・自組織の中だけでは限界があり、他の企業・組織に活躍の場を探すことも必要になります。

企業・組織の事業構造改革や組織改革の過程では、分社やM&Aなどによって、バリューチェーンを構成する組織のカタチが変わることもあります。複数の企業・組織が一体となってバリューチェーンの進化と最適化を図っていく過程で、企業・組織の枠を超えた人材配置(出向・転籍)が必要になる場合もあります。

また、長期間にわたる人材育成の一環として、他の企業・組織での就業経験を積ませ、自社・自組織の中に留まっていては得られない経験・ノウハウ・人脈などを獲得できるようにするための手段として、出向が活用される場合もあります。

出向・転籍は、長期視点での人材の育成・活用において、人材の活躍の幅を広げる手段として有効です。ただし、本人の意思で入社した企業・組織を離れて業務に従事することになるため、出向・転籍には、原則として本人の同意が必要です。

当然ながら、出向よりも転籍の方が、本人の同意を得ることが難しいです。なぜなら、出向は、原則として自社・自組織に帰任することが前提となっているのに対して、転籍は、他の企業・組織に「移籍」することであり、自社・自組織に帰任することがないからです。

なお、出向については、就業規則に「会社が出向を発令できる(特別な理由がない限り出向発令を拒否することができない)こと」を明記している企業もありますが、この場合は、出向に際して処遇上の不利益がないことや、一定期間での帰任が前提となっており、自社・自組織内の人事異動と同様の扱いと理解されています。

このように、自社・自組織に帰任することがない「転籍」(帰任を想定しない「片道出向・転籍含み出向」も、広義の「転籍」とします)という手段を活用するためには、「本人同意」というハードルを越える必要があり、受け入れ企業・組織の同意も必要です。ステークホルダーの利害調整が難しい「転籍」や「片道出向・転籍含み出向」を有効に活用するためには、様々な工夫が求められます。

※本人同意を必要としない「出向」という手段を活用した人材流動については、「グループ人事」のソリューションをご参照ください。

出向・転籍の機能とメリット

メリット① :社員を雇用リスクに晒すことなく、企業・組織外へ転出できる

出向・転籍は、社員が雇用(失業)のリスクなく、他の企業・組織に転出できます。
転籍の場合には、「出し手」の企業・組織を退職し、「受け手」の企業・組織に入社するという手続きが必要になりますが、失業期間はゼロです。
また、一定期間は出向として、「受け手」の企業の職務や風土に馴染めるかどうかを確認し、「受け手」企業・組織と対象社員が納得した上で移籍手続きに進む、という方法も可能であり、「転職先に馴染めず、辞めざるを得なくなった」という事態を回避できます。

メリット② :対象社員の特徴(強みや弱み)を踏まえた、適材適所の転出が可能

出向・転籍を行うためには、先に、「出し手」の企業・組織と、「受け手」の企業・組織との間での合意が必要です。対象社員の特徴を踏まえ、「受け手」の企業・組織が対象社員をどのように活用したらよいか、「出し手」の企業・組織が具体的な情報提供やアドバイスを行うことも可能です。
「出し手」と「受け手」の人材ニーズが一致して出向・転籍を行える場合、見ず知らずの企業・組織に転職するよりも、適材適所の活躍の場が準備される可能性が高いでしょう。これは、「出し手」にとっても、「受け手」にとっても、対象社員にとっても、望ましいことです。

メリット③ :希望退職などの手段と比較して、副作用が少ない

社員に自企業・自組織の外へ転出を促す手段としては、希望退職の募集などが考えられますが、希望退職に応募しない社員にも不安を与えること、会社・組織が期待する人材が応募するとは限らないこと、優秀人材が流出してしまう可能性があること、などの副作用が想定されます。
出向・転籍は、本人同意が必要であるものの、対象社員の人選は企業・組織が主導でき、対象外の社員を不用意に巻き込んでしまうことがないなど、副作用の少ない手段であると言えます。

クレイア・コンサルティングが提供する出向・転籍の特長

1. 各ステークホルダーの立場に立った効果的な制度設計

「転籍」や「転籍含み出向」を成功させるためには、「出し手」の企業・組織の都合だけでなく、「受け手」の企業・組織および対象社員のメリットとリスク、そして「感情」について、それぞれの立場で深く考えた制度設計が必要です。
クレイア・コンサルティングでは、多種多様な企業・組織の人材マネジメントを支援してきた経験に基づき、「受け手」企業・組織にとってもメリットがありリスクの少ない転籍条件設計や、対象社員の利益・不利益と感情をよく理解した転籍条件設計・コミュニケーションプランの設計が可能です。

2. 合理的な転籍条件設計

転籍の同意を得るためには、多くのケースで、転籍一時金などの転籍条件の提示が必要となります。転籍条件が不十分では本人同意を得ることはできませんし、過剰な転籍条件を設定してしまうと、残る社員の不満や、転籍コストの増大に繋がります。
クレイア・コンサルティングでは、多種多様な企業の人事処遇制度改革や合併に伴う人事制度統合の経験などを通じて、給与や賞与といった目立ちやすい処遇条件だけでなく、労働時間や休日日数、あるいは福利厚生に至るまで、人事処遇条件を総合的に分析し、総合的に「過剰でも不足でもない」転籍条件を、根拠を持って設計することが可能です。

3. 転籍プロセス全体の設計・構築を支援

出向・転籍を実行していくために、本人同意の取得と並んで課題となるのが「出向・転籍先の探索・確保」です。自社ネットワークだけでは、十分な出向・転籍先を確保できない場合でも、出向・転籍先の開拓をサポートできます。
具体的には、多種多様な企業の人事マネジメント支援を行っている実績と経験から、「出し手」企業・組織の特性や人材の特長を踏まえた「出向・転籍先の開拓戦略」の策定や、人材紹介会社等のネットワークを活用した「出向・転籍先の開拓」のご支援が可能です。

人材の流動化を行う際の流れ

1. 人員数・人員構成・配置の課題分析

最初のステップでは、人員数・人員構成・配置の「あるべき姿」と「現状」を比較検証して、課題を網羅的に洗い出します。具体的には、総人員数の「過剰/不足」、年代別・資格等級別・職種別などの構成別の「過剰/不足」、そして特定のポストや役職階層における「求められる要件に対する現任人材のポテンシャルの不足」がどの程度発生しているのかを具体化します。

人員数や人員構成はデータによる分析が可能ですが、ポストや役職階層における「求められる要件に対する現任人材のポテンシャルの不足」については、経営陣や上級役職者へのヒアリングや、過去の人事評価の基準と実績の分析を組み合わせて行います。

人員数や人員構成のあるべき姿を具体的に数値化できない場合には、現状の人件費生産性を全社や部門別に分析し、他社ベンチマークなどを参考に設定する目標生産性を実現するために、人員数と人件費単価をどの程度修正していくべきかを検討します。

2. 人材流動化のマスタープラン設計

人材流動化のマスタープランでは、下記の事項について総合的に検討します。

人材流動化を完了させるべき時期(スケジュール)

人材流動化の実施時期を具体的に決定します。M&Aや合併の場合には、新会社・新組織の発足に合わせて人材流動化を実行するために準備をすることが望ましいでしょう。但し、人材流動化の規模が大きくなると、業務の停滞や混乱などの副作用も懸念されます。人材流動化の実行までに十分な準備期間が確保できない場合には、新会社・新組織発足後に段階的に人材流動化を行っていくなど、現実的なスケジュールを検討する必要があります。

人材流動化の手法の選択と実施プロセス

人材流動化を適切に実行するために必要な手法を選択し、実行プロセスを具体化します。
代表的な手法は下記のとおりです。

  • 人材アセスメント(人材のポテンシャルを見極め、発掘)
  • 役職定年制(一定の年齢でポストオフを実施)
  • 役職任期制(一定期間毎に役職交代の必要性を審査)
  • グループ会社への出向・転籍(人材が不足しているグループ会社への異動)
  • グループ外への転進支援制度(割増退職金支給や再就職支援を条件に退職を勧奨)

人材流動化の各手法の副作用を抑制・軽減する方策

人材流動化の手法は効用(メリット)を重視して選択することになりますが、一方で、副作用(デメリット)の発生にも十分な留意が必要です。例えば、グループ外への転進支援制度の導入に際しては、転進支援の対象となる社員の理解・納得感だけでなく、転進支援制度の趣旨が、その対象とならない社員にも前向きに受け止められるような説明を行わなければ、「リストラ」との印象を与えて社員に不安感や不公平感を抱かせる可能性があります。これらの副作用の発生可能性と影響度を見極め、副作用の発生を抑制、または発生した場合の影響を敬遠するための方策を予め準備しておくことが重要です。

流動化の決定に向けた人選と組織内調整・決定のプロセス

人材流動化を実行しようとすると、その対象者の人選や再配置先の決定に際して、多くの利害関係者が生じます。これらの利害関係者の意向や不満をどのように把握し、調整や説明を行っていくかを検討する必要があります。人材流動化の規模が大きくなるほど、この人選と組織内調整のプロセスに割くべき時間も長くなります。このプロセスを軽視すると、人材流動化が一部の経営陣や人事部の独断専行として後ろ向きに捉えられる可能性があるため、慎重に検討すべきです。

3. 人材流動化のための各種ツールの設計と実施準備

選択した人材最適配置の手法について、具体的なツールの設計と実施準備を行います。代表的な手法について、設計すべきツールや準備事項は下記のとおりです。

人材アセスメント

  • アセスメントのディメンジョン(能力測定項目と基準)を定義
  • アセスメントのツールを開発、または、適切な市販ツールを選択
  • アセスメント対象者の選定基準を定義
  • アセスメントの実施プロセスを具体化
  • アセスメント結果のフィードバック方法を検討

役職定年制・役職任期制

  • 役職定年の年齢、または役職任期の年数を設定
  • ポストオフ後の処遇決定の方法を具体化

グループ会社への転籍

  • 転籍後の処遇決定方法の具体化
  • 転籍時の処遇格差是正措置等の具体化
  • 転籍同意の取得プロセスの具体化
    (上記に関する個人別の調整が円滑に進むようなグループ人事制度の検討)

グループ外への転進支援制度

  • 転進支援制度の対象とすべき社員の選定(公募または会社から特定社員に提示)
  • 転進支援の内容(割増退職金、再就職支援、特別休暇、有給休暇の取り扱いなど)の具体化
  • 転進支援制度の社内告知方法の具体化
  • 転進支援制度の対象者への説明方法と同意取得プロセスの具体化
  • 転進支援制度対象者の面接を担当する社員の選定とトレーニング方法の具体化

4. コミュニケーションプラン設計

人材流動化は組織の全体最適の観点を重視して進められますが、各個人にとっては必ずしも望むような異動・配置とならないケースも発生します。人材流動化の必要性や考え方には賛成できても、個別具体的な異動・配置のケースには納得できない、という「総論賛成・各論反対」が必ず発生します。

そこで、多くの社員が人材流動化の意義を前向きに受け止め、個別具体的な異動・配置のケースについても前向きな解釈をするように導いていくコミュニケーションプランが極めて重要となります。

例えば、人材流動化の必要性や考え方を、個々の社員に誰がどのように説明すべきか、という検討が必要です。この説明を上司に委ねると、個々の社員に伝わるメッセージは「上司が自身や部下の異動・配置を前向きに捉えているか」ということに依存することになってしまいます。また、人事異動の発令を辞令のみで行い、しかも異動の直前に発令しているような場合には、個別の異動・配属の意図について前向きに解釈することが難しくなります。

人材流動化の必要性や考え方については経営陣や人事部門が全社向けにメッセージを発信することが必要です。また、個別の異動・配属のケースでは、異動前後の上司が異動・配属の意図について前向きに解釈して語る(期待を示す)面談を設定し、前向きなメッセージをしっかりと準備して伝えるように促していくことも重要です。

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