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採用競争力が注目される背景

採用に関わる悩みはあらゆる業界・職種で発生しています。

その背景として、求人を出しても反応がない、候補者の質が悪い、採用しても思ったほど活躍してくれない、戦力化に時間がかかる、育てても定着しない、などが挙げられます。

マクロで見れば少子高齢化と労働人口減少によって、新卒などの若年層や即戦力となる中堅層の採用競争はますます厳しくなる見通しです。

また、グローバル競争、テクノロジーの進化、生活様式・働き方の変化を背景として産業構造の変化が着実に進行しており、今までと同じやり方をしていたのでは、いい人を採用できない状況になっています。

採用競争力を高めるには

会社の持続的な成長に必要な人材を吸引・確保し、人的資源の観点から他社が真似できない競争優位をつくりだすことが経営にとっての課題です。

そのためには、まず自社に必要な人材の質と量を正しく見極めることが重要です。人が足りないから補充するという発想ではなく、自社の人的資源の質的・量的な構成(ポートフォリオ)はどうあるべきかを、事業横断的・未来志向で考えることが求められます。

また、内部環境の正しい把握に加えて、外部環境の分析、つまり自社の採用競争力の相対的優位性を正しく見極めることが重要です。自社が採用しようとしている人材はどのような業界・会社と競合しているのか、競争はどの程度激しいのか、自社の報酬水準・労働条件は相対的に見劣りしていないか、といった視点です。

内部環境と外部環境の分析を踏まえて、以下の観点から人材戦略を具体化します。

  • 適切な母集団へのアプローチ

  • 活躍するポテンシャルのある人材の見極め

  • 即戦力化と定着化

採用がうまくいかない要因 

採用がうまくいかなくなる背景にはいくつかの要因があります。

一つ目の要因としては、産業構造の変化で深刻な質的・量的なミスマッチが発生していることが挙げられます。

例えば、IT人材は圧倒的な人材供給不足に陥っており、今後10年間でIT人材の需給ギャップ(人材不足)は倍増すると予測されています。特に、事業構造転換を支えるIT人材/デジタル人材は多くの企業で質的・量的な不足を感じています。

このような状況は少なくとも5年以上は続く見通しであり、このような中で自社にマッチした人材を確保するための採用戦略(直接雇用以外の選択肢も含む)の抜本的な見直しが求められています。

二つ目の要因は、若手のキャリア観の変化です。

新卒の採用面接で、候補者が志望理由を話すときによく使うワードが「ファーストキャリア(最初のキャリア)」です。

例えば、「御社をファーストキャリアとして志望する理由は、自分が早く成長できる環境があるからです」といった使われ方をします。この「ファーストキャリア」という言葉は、別の言い方をすれば「定年まであなたの会社で働き続けることは考えていません」ということを意味しています。

長い期間安定して働き続けられるというキャリアの魅力よりも、最初の数年間でどれだけ自分を成長させる経験ができるのか、を学生から問われるようになっているということです。

三つ目は、入社してからのキャリアパスが魅力的でなくなってきているということです。

多くの会社では12~15年かけていろいろな仕事や部署を経験させ、管理職に昇格していくキャリアパスが一般的ですが、早期の成長を望む若手からは「階段が長すぎる」「先が見えすぎる」と映ることがあります。

これまでの人材育成のスピード感がビジネスの現実に合っているかの検証も必要です。過去の成功パターンが通用しない不確実な経営環境では、若手から優秀者を抜擢した方が価値を発揮できる確率が高まることもあります。

採用が組織に与える影響

採用がうまくいかない状況を放置すると、業務遂行の中核である中堅層へのしわ寄せが大きくなり、組織として先を見据えた改善活動や戦略的な業務にリソースを割けない状況に陥ります。

上司としては、中堅層に新人の育成やケアを任せたいところですが、日々の業務遂行で手一杯な状況では教えている余裕がありません。新人の育成がおろそかになれば、離職者が発生するリスクは高まり、いつまで経っても即戦力となる中堅層が育たない悪循環に陥ります。

クレイア・コンサルティングのアプローチ

自社が必要とする人材を吸引・定着させるための「魅力度」を高めていくことが求められます。打ち手を考える上で着目すべきポイントには以下のものがあります。

アプローチ1.給与・待遇(金銭的魅力)の点検

一番目の点検ポイントは「給与・待遇(金銭的魅力)」です。

退職者が相次ぐようになると、「自社の給与や待遇は競合他社と比較してどうなのか」がまず気になるところです。「A社に転職したら、年収が100万円上がった」などという話を聞くと、人事の責任者としては自社の給与水準が他と比べてどのくらい低いのか調査せざるを得なくなります。

ところが、実際に調査をしてみると、自社の水準は必ずしも他と比べて低い水準ではなく、今の給与テーブルを大きく見直す必要はない、との結論に至ることも多いです。同じ業界の中で特定の一社が大量に人を採用している場合によくあるケースと言えます。

また、手当類の支給がなくなったタイミングで離職してしまう、というのもよく聞く話です。住宅手当の支給年数や社宅の入居年数に制限を設けている場合には、ある年度から手取りが大きく減ってしまうということがありえます。そんなときに、住宅手当や福利厚生が充実している会社からオファーをもらい、転職してしまうことがあります。

こうした「金銭的魅力」は人材を惹きつける上で重要な要素ですが、これが決定的な要素になるわけでないことに注意が必要です。「A社に転職したら、年収が100万円上がった」ことが仮に事実であったとしても、上司からあまり高い評価を受けておらず、会社から大事にされていないと感じていたことが、転職を考えるに至った本当の理由なのかもしれません。

給与や待遇が離職の決定的要因になるわけではありませんが、少なくとも金銭的報酬が理由で退職を考えるきっかけを与えないように、自社の給与水準や昇給・昇格運用、手当類の水準・支給ルールが妥当かどうかの検証を行っておくことが必要です。

アプローチ2.「キャリア期待」の点検

二番目の点検ポイントは、「この会社に留まり続けることで自分が成長できそうだ」という期待感です。

新卒・第二新卒の候補者が面接でよく聞いてくるポイントが「成長できる環境があるかどうか」です。仕事そのものの魅力だけでなく、新人の育成を支援する仕組みが整っているかどうかが問われます。

若手社員にとっての成長期待を高めるには、キャリアのゴールと育成のステップを具体化し、どのような仕事経験や知識・スキルを身に付けていけばステップアップしていくのかの道筋を見えるようにすることが不可欠です。また、新人が即戦力として活躍できるようにするための教育プログラムの充実や仕事に役立つナレッジの共有も欠かせません。

ただし、このような育成プログラムやキャリア開発プランは、社員個人が自律的に成長できるサイクルに乗ってしまえば、必要性は薄れてきます。

キャリアは予期しない偶然の出来事によってその80%が形成されるともいわれており(プランド・ハップンスタンス理論)、裏を返せば、計画できるようなキャリアは本人の市場価値を高めていく上でそれほど重要な経験ではないとも言えます。

優秀な人ほど、自分なりの好奇心や問題意識を持って、多種多様な知識を吸収し、活躍の幅を広げていくものです。ところが、その域にまだ達していない社員は、仕事を一人前にこなすために必要な情報や技能を持たず、常に不安を抱えており、仕事の先にある意義や価値も感じ取れないのかもしれません。

育成プログラムやキャリア開発プランは、こうした社員を自律的に成長できる軌道に乗せるための仕掛けとして捉える必要があります。現場で必要な知識を体系的・網羅的に定義するというよりは、「何をどのような順番で取り組んでいけばよいか」がわかりやすく伝わるような内容にデザインすることが重要です。

また、仕事の遂行に必要なインプット(知識・技能)だけでなく、「この仕事から何が学べるのか(学ぶべきなのか)」を再定義することによって、「あらゆる職務場面において学ぶ機会はたくさんある」、という意識を持たせることが課題と考えられます。

アプローチ3.「達成と承認」の点検

三番目の点検ポイントは、「達成と承認」を感じられるようなフィードバック(手ごたえ)です。

難易度の高い仕事をやり遂げた経験や、仕事で発揮した成果・パフォーマンス、または上司や顧客からの高い評価などです。

ある会社で、退職者が在籍時にどのような評価を取得していたかの履歴を分析したことがあります。その会社は最終評価をS/A/B+/B/B-/C/Dの7段階で付けていますが、退職者の出現割合が最も多かったのは「B-」評価で、その次が「B」評価でした。意外なことに、C・D評価を取得していた人で退職した人はほとんどいませんでした。またSやAを取得している人で退職した人はゼロでした。

他の会社の事例を見ても、「イマイチ」な評価を受けている人が最も流出するリスクが高く、自他ともに認めるハイパフォーマー/ローパフォーマーはどちらも会社に留まろうとする傾向が強く見られます。

人事部に話を聞いてみると、退職者はなんとなく上司が評価してくれていない/どうしたら評価してくれるのかもわからない、と感じていることが多いようです。また、コミュニケーションやフィードバックが苦手な評価者が増えており、低い評価を付けたときに、納得させるような説明ができていないケースも増えています。

コミュニケーションやフィードバックが得意な上司であれば、相手との信頼関係をうまく築いているため、評価面談で多少厳しいフィードバックをしても、部下は受け入れられるものです。部下を個人として認め、部下の成長に対して高い期待を表明し、部下に求めたい意識や行動を明確にしているからです。

ところが、このように管理者として当り前のマネジメントを実践できる人ばかりではないことも事実です。評価制度の改善を考える上では、そもそも上司と部下の間でどのようなメッセージが交換され、どのような関係性を構築すべきか、という本質的な視点から設計し直すことが不可欠といえます。

アプローチ4.「共有ビジョン」の点検

最後の点検ポイントは、社員の間で共通に認識・共感されたビジョンの存在です。

つまり、会社の雰囲気や人間関係が「合わない」と感じさせることなく、この会社の一員として働くことに誇りとやりがいを持たせられるかどうかというポイントです。

労働市場が売り手市場になっても、人がほとんど辞めていない会社に共通してみられるのはこの「共有ビジョン」の存在です。社員がお互い仕事で何を大事にしているのか、どのような使命に向かって邁進する集団なのか、というイメージを強く醸成している会社ほど、若手の吸引に成功している傾向が見られます。

「共有ビジョン」の醸成は一朝一夕にはコントロールできない要素ではありますが、人事制度や人事施策の根幹となる方針部分に埋め込み、日々のコミュニケーションの中で社員が意識せざるを得ない状況をつくり出すことが課題といえます。

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