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目標設定・評価制度の再構築(パフォーマンスマネジメントの導入)

パフォーマンスマネジメントとは、従来型の会社・上司主導で部下の行動や成果を統制・評価するための人事施策でなく、社員の主体的なチャレンジを促し、個人と組織の成果(パフォーマンス)を引き出すためのマネジメント手法です。


見通しを立てにくい時代にこそ求められるパフォーマンスマネジメント

現代は「VUCA*の時代」と言われており、全世界で苛まれている、先行きが不透明な新型コロナウイルスへの対応も、VUCAを象徴する事象と言えるのではないでしょうか。このような状況下で、長らく長時間残業する人が偉いといった“ガンバリズム”に支えられた日本企業固有の人事マネジメントも、これまで進んできた働き方改革とは全く異なる次元とスピードで、急激な変革が余儀なくされています。

*VUCA
Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を合わせた造語であり、我々の社会・経済を取り巻く環境が、先行き不透明かつ不確実であることを示したビジネス用語。

東京都の『テレワーク「導入率」緊急調査』(2020年5月11日発表)では「2020年4月の都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は62.7%」という結果が出ていました。3月時点では24.0%でしたので、全ての業種で驚異的なスピードで新しい働き方への転換が進んでおり、企業の人事マネジメントもこれに合わせた形で見直さざるを得ない状況となっています。

弊社の上場企業30社を対象とした「コロナ禍の人事マネジメントに関するヒアリング調査」(2020年5月1日発表)でも、調査実施時点で4月頃に進行していた年度末の人事評価や翌期の目標運用について、多くの企業で「ウェブ会議ツールでの実施を予定」との回答があったように、既に大企業では何らかの形で現状の勤務形態に合わせて毎年の人事運用を見直しつつある様子が伺えます。

もちろん、まずは従来の目標設定や評価の運用を単に在宅でも実施可能な(ウェブ会議ツール等を使用した)形式に置き換えるというところだけで手いっぱいで、本質的に評価の考え方を変えるところまで踏み込んでいる企業はまだ少ないのが実情でしょう。

しかし、全員が会社に出社し、肩を並べて働くことが当たり前の時代と、これから在宅など必ずしも出社を前提としない、社員同士の直接的な接点が少なくなる働き方が当たり前になる時代とでは、仕事の管理の仕方も、評価の仕方も大きく見直さざるをえないのではないでしょうか。例えば、出社が前提の中で実現できていた、職場内での暗黙的な相互監視や一定の緊張感によって、就業時間内は手を抜かず頑張り続けさせるようなマネジメントを実施していた場合、在宅を前提とした環境下で同様の緊張感を与え続けることは難しく、従来通りのパフォーマンスを引き出すことは、より困難になる、といったことが想定されます。

こうした状況を打破するための打ち手として検討したいのが、ここで紹介するパフォーマンスマネジメントの導入です。もともとパフォーマンスマネジメントは、結果だけを重視してしまう、もしくは逆に結果を軽視してしまうといった旧来型の人事評価の様々な問題への解決策として、2000年代以降に米国で普及した概念ですが、現在のWithコロナへの対応といった観点だけでなく、多くの日本企業で人事評価が「評価のための評価」になってしまっている現状を抜本的に見直す切り口としても有効であると考えられます。

パフォーマンスマネジメントとは何か
~パフォーマンスマネジメントの3つの狙い~

1.社員の主体性を促し成長を促進する

パフォーマンスマネジメントの狙いについて、類似点の多い人事評価の仕組みと対比しながら解説します。まずパフォーマンスマネジメントの一つ目の狙いは、「社員の主体性を促し成長を促進する」ということです。

人事評価として多くの企業で採用されている目標管理制度やプロセス評価(コンピテンシー評価など様々な呼び名がある)でも、お題目としては社員の主体性を促すために目標を書かせ、期待される行動を発揮したかを毎年年度末に上司と振り返ることで成長を促進しようとしている、とも言えなくはありません。しかしこれらの仕組みの多くは評価し昇給や賞与、昇格等に反映させることが主眼にあり、評価すること自体が目的化し、形骸化してしまっているケースも多くあるかと思います。例えば目標管理のKPIとして部門の売上や利益など、基準としては明快で達成有無を測りやすい一方で、個々人の裁量の余地やコントロールの可能性が低いものをトップダウンで設定することが行われている企業もあるようです。しかし、このようなケースでは組織全体のパフォーマンス最大化に向けて主体的な行動が促されることにはならず、むしろ各人が自身の“ノルマ”をいちはやく達成することだけに終始し、時に望ましい行動を逆に抑制してしまう、といった制度の趣旨とは真逆の行動を誘引してしまうこともしばしばあると聞きます。

パフォーマンスマネジメントはこうした“評価のための評価”への反省として提唱されているアプローチであり、一番に重視されるのが社員の主体性となります。即ち、組織としてのパフォーマンスを最大化する、という大きな結果に向けて、個人がやるべきことは何かを、結果だけでなくそこに至るプロセスや、上司・育成支援者からの助力も含めて明確にする活動全体がパフォーマンスマネジメントであり、社員が主体的に目標達成に関わることと、より大きな貢献ができるよう支援し、組織全体として成長を促していくことが何より重要となります。

2.個人と組織の目標を整合させパフォーマンスを最大化する

パフォーマンスマネジメントの二つ目の狙いは、「個人と組織の目標を整合させパフォーマンスを最大化する」ということです。

既に例に挙げた目標管理制度を導入している企業の多くで、期初に設定した目標が半年~1年後にはすっかり変わってしまったり、決算確定~事業目標立案の時期に個人目標を再設定しなければならないにも関わらず、そのまま放置されてしまい、仕事の実態と人事上の目標設定・評価が整合しなくなっている、という話をよく聞きます。変化の激しい昨今においては、タスクベースで業務目標を設定してしまうと頻繁に目標を書き換えねばならず、与えられたノルマを書き写すだけの目標であれば、そこに個人の主体性も工夫の余地も目標を立てる意味さえもないということになりかねません。

どのような企業でも、役職の有無に関わらず個々人に期待されている役割があり、その役割に見合った形で仕事が割り振られていると思います。本来そこで個々人に期待されるのは、仕事が割り振られるのを口を開けてひたすら待ち、仕事が割り振られたら決められた手順通りに粛々とこなす、というロボットのような振る舞いではないはずです。営業系の仕事であれば顧客体験価値を高め、自社の商品・サービスの熱狂的なファンになってもらうための工夫を、間接部門系の仕事であれば事業部門と価値観を共有し、事業目標実現に必要なサービスをプロアクティブに提供することではないでしょうか。

目標管理においても本来求められるのは、こうした各人に期待されている役割に基づいて、仕事を外形的に手際よくこなす、というだけでなく、本質的にそこで価値を発揮できているか、役割を果たせているかを組織や上司と共有し、より高いパフォーマンスが発揮できるよう日々工夫をこらすことではないでしょうか。もちろんそういった期待を最初から果たせる人はおらず、基礎的なトレーニングはもちろんのこと、上級者からの直接的な指導や助言があればより早く期待するレベルに到達できるようになると想定されます。

パフォーマンスマネジメントは、社員と上司もしくは育成支援者が、社員個々人に期待されている役割を共有し、半年から1年などの長いスパンでなく、1週間~1ヶ月といったより短いスパンで定期的に期待される役割・行動が発揮できているかを振り返り、タイムリーに上級者からの直接的な支援を受けられるようにすることで、仕事を通じてより本質的な価値を発揮できるようになるための枠組みである、ということができます。

3.個々人の貢献を公正に評価し処遇する

パフォーマンスマネジメントの三つ目の狙いは、「個々人の貢献を公正に評価し処遇する」ということです。

多くの企業で、評価基準はきめ細かく設定され、半期、年度末のタイミングではかなりの時間と労力を使って評価を実施していると思います。しかし、その評価と処遇の関係に納得感を持っている社員はどの程度いるでしょうか。期初に立てた目標と期末の実績に対応関係がない、プロセス評価やコンピテンシー評価にいたってはそもそもいつどこを見られて評価されているかもわからないといったことが往々にして起こり、直属上司はA評価を付けてくれたが、相対調整が行われた結果Bに引き下げられ、著しくモチベーションが下がったという話も良く聞きます。

多くの企業では、何十年も前から、日常の頑張っている姿勢や態度のような「見た目」に引きずられた評価をする傾向があり、さらに企業の論理で高評価がつく人数が制限されたりするので、遅くまで頑張っている人、周囲への気配りができる人、のような“目立つ人”が結果的に高い評価と処遇を得るという、実力やパフォーマンスとは全く違う次元で評価が実施されてきました。

量として人より多く努力することやチームワークを大事にすることが成果に直結するビジネスであれば、ある意味このような評価でも結果としては公正であり社員としての納得感もあるように思います。しかし、残業抑制やテレワークが当たり前になり、外形的に見えにくい仕事の“質”が重視されるようになると、もはやこうした“目立つ人”基準では公正な評価はできない状況になりつつあるのではないでしょうか。

パフォーマンスマネジメントでは、社員個々人に予め共有された期待される役割に基づき、高頻度で状況の確認やフィードバックを行うことを通じて、定期的に上司と社員の認識をすりあわせ、それを処遇にも結び付けることになるので、従来の評価運用よりも認識の不一致が起きにくく、社員の納得も得やすい仕組みであるといえます。

クレイア・コンサルティングが提供するパフォーマンスマネジメントの特長

1.パフォーマンスマネジメントの導入に必要な組織のポテンシャルを把握・分析

クレイア・コンサルティングが提供するパフォーマンスマネジメントの導入にあたっての第一の特長は、各社のニーズと実態を踏まえ、確実に運用でき効果が期待できる形での導入プランを検討し、設計・導入を支援するために、予め企業の実像、組織のポテンシャルを出来るだけ正確に把握・分析するためのアプローチを取ることです。

そのためには、まずパフォーマンスマネジメント導入後の理想的な状態を想定しながら、現在のマネジャーの力量はどの程度か、社員は現時点でどの程度自身の役割を遂行する上で必要な技能や専門性を保有し、自律的に行動できるか、経営層と社員の信頼関係はどの程度か、などの組織のポテンシャルを把握しながら、理想的な状態にすぐに移行できるのか、少しステップを刻みながら近づけていく必要があるのかを慎重に見極める必要があります。

組織のポテンシャルの把握にあたっては、パフォーマンスマネジメントの導入に精通したコンサルタントが、経営層、事業責任者、マネジャー、場合によっては社員に対し、組織のポテンシャルをはかるための質問事項を整理した上で個別インタビューやアンケートなどを実施し、結果を集約・分析することを通じて明らかにしていきます。

2.行動科学的知見・セオリーや他社事例等を踏まえたパフォーマンスマネジメント体系の再構築

第二の特長は、既存の運用を無視して新たな施策を強引に導入したり置き換えたりせず、現行の人事運用の実態を把握した上で、セオリーや最新の知見等を駆使して、既存の人事運用を整理・再構築するといったアプローチを取ることです。

歴史のある企業であるほど、目標管理、プロセス評価、人材育成面談、社員意識調査など、様々な人事施策が複合的に運用されているケースがほとんどです。これらの人事施策・運用を整理しないまま、屋上屋を重ねる形で新たな施策・制度を導入しても、社員の負荷が増し混乱を招くだけでなく、急速に形骸化したり、会社への不信感を募らせるといったマイナスの影響も生じてしまう懸念があります。

これを回避するためには、既存の各種人事施策の狙いと実施内容、関与者、実施タイミング、運用上の課題等を整理した上で、どの範囲を変え、どこを残してどこを活かすべきかを吟味し、無理のない形で施策全体を巻き込みながら新たなパフォーマンスマネジメント体系として再構築する必要があります。

またパフォーマンスマネジメント体系の再構築にあたっては、社員はどういった環境下で最も意欲が高まり自発的行動が発揮されるのかといった行動科学的知見・セオリーや、既に先行してパフォーマンスマネジメントを導入した他社の工夫や課題等を踏まえ、より各社の実態や社風にフィットした形での体系を目指します。

3.パフォーマンスマネジメントの効果的な運用に向けた提言と導入準備

第三の特長は、より理想的・最適な形で設計したパフォーマンスマネジメント施策の導入がうまく進まなかったり、早々に頓挫したり形骸化するといったことを避けるため、効果的に導入・運用するためのコミュニケーションプランやツールの準備、運用ノウハウ等を提供し、無理の無ないスタートを切るための支援を行うことです。

一般的に、社員に新しい行動様式を根付かせるのは容易ではなく、定着するまでの間に相当な抵抗や反発、様子見・日和見が生じることも少なくありません。実態として多くの企業で評価は半年~1年に1回の儀式であり、それ以外の期間は人事とは切り離された世界である、と考えている社員・マネジャーは多いのではないでしょうか。こういった中で、日々の仕事と育成・評価を直結させるパフォーマンスマネジメントを導入するといっても、掛け声だけではうまくいかないのは明白です。

こういった新たな行動様式を根付かせるには、まずやってみようという気にさせること、さらに、形式的にやるだけでなく、実質的にやってよかった、効果を感じた(最低でもやらないよりやったほうがましだった)という成功体験を徐々に組織全体に波及させていくことで、施策を根付かせる確率・スピードを上げることができます。

こうした変革へのうねりを作るための経営層と社員の巻き込み方、コミュニケーションの方法や効果のあるツール等を提供・提言することによって、パフォーマンスマネジメントという新たな施策の導入とそれに伴う新たな行動様式の定着を支援します。

パフォーマンスマネジメント導入のステップ

パフォーマンスマネジメントは、以下の5つのステップで導入します。

【Step1】評価制度を中心とした人事マネジメント運用実態の把握・分析

  • 現行の評価制度だけでなく、長期的な人材開発/キャリア開発の取り組みや、会社のミッション・ビジョン浸透施策、中従業員意識調査や360度フィードバックなど、全社を対象とした人事運用を全て洗い出す
  • 各人事運用施策がどの程度実施されているか、また経営層・事業責任者・マネジャー・社員が日々どのような意識で業務に取り組んでおり、どこに問題意識をもっているかといったいくつかの観点で、インタビューやアンケート等を実施し、組織のポテンシャルを把握する
  • それぞれの施策が個人と組織のパフォーマンスにどう影響しているか、各施策の位置づけと施策間の関連性、パフォーマンス向上につなげる上での課題を図示し、今回改善(もしくは統合、新規導入)する施策の範囲を明確にする

【Step2】パフォーマンスマネジメント体系の設計

  • 今回解決すべき課題と解決の方向性を定める
  • 「上司中心のマネジメントから社員中心・パフォーマンス中心のマネジメントへ」といった、新ルールのコンセプトを決める
  • 会社のミッション・ビジョンや組織目標が個人目標にどうつなげ、目標に沿った個々人の取り組みが個人・組織のパフォーマンスにどうつなげるかを整理し、今回見直し・導入する施策と役割付与・目標設定、評価・育成、処遇との関係を明確化する

【Step3】パフォーマンスマネジメントの対象要素と目標水準の設計

  • 会社・上司と本人が日々確認し合える、パフォーマンスにつながる要素を、「行動のベースとなる姿勢・価値観」「発揮してほしい思考・行動」「成果を測定するためのKPI」の3つの次元から整理し、評価する要素と目標水準(加点・減点の基準)を策定する
  • 組織内の役割によって見るべき要素に違いがある場合は、役職もしくは等級と評価要素の関係を整理する
  • 各評価要素・基準がどのタイミングで使用され、処遇(昇給、昇格、賞与等)にどのように反映させるかを明確化する

【Step4】パフォーマンスマネジメントの運用設計

  • 直接的な評価に関わる上司への評価・育成責任の一極集中を避け、上司の負荷を分散するためにも、直属上司以外で社員の育成に関与できる育成支援者の配置・任用を検討する
  • 半年~1年のスパンで、目標設定・評価・フォードバックの運用から、隔週・月単位といった短サイクルでのパフォーマンスマネジメント・フィードバックの運用へ転換できるよう、定期的なコミュニケーションを可能とするためのツールを整備する
    (良質かつ多面的なフィードバックを行うための上司・育成支援者間での目標・面談記録の共有方法の検討、コミュニケーションの量を増やすための対面/メール以外のツールの検討、定期的な面談を促す機会や面談の実施頻度の把握等)
  • 上司のフィードバックの質を高めるための施策を検討する
    (上司間のピアカウンセリング機会の提供、360度フィードバックを利用した育成機会の提供、短時間・高頻度で実施できる全社員の意識調査の検討等)

【Step5】パフォーマンスマネジメントの導入準備

  • 経営者もしくは人事管掌役員(CHRO)などから、過去の上司中心・事後的査定中心の評価運用から、社員中心・事前のすりあわせと高頻度のフィードバックを中心とした育成・評価運用へ転換することを全社に伝える
  • 人事担当者から全社員に対し、従来の評価運用の課題とあわせ、どのような目的で、どのように運用が変わるのかを明確に伝え、社員が確認したいタイミングで繰り返し確認できるようなガイドラインや動画コンテンツ等を用意する
  • 上司や育成支援者に対し、より質の高いフィードバックを行うための研修機会(知識の提供だけでなく、事例検討、ロールプレイ等の実践的能力獲得機会が含まれるもの)を提供する

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