バブル入社世代の閉塞状況を生み出してしまった根本的な原因は何か?それは大きく2つある。
1つは多くの日本企業にいまだ根深く残る「年功的な人事管理」である。大量採用のバブル入社世代も、これまで年功的な人事管理ものとで加齢とともに徐々に賃金を増やし、組織の階層を上がってくることができた。いつかは管理職になれるとの期待を抱きながら、新卒から20年間、会社に忠誠を尽くしてきた。
しかし、大量採用のこの世代にも年功人事を温存し適用し続けたことで、組織の中間層がふくらんだ。一方で、その下の層の採用を抑制したため、逆ピラミッド構造の組織となってしまった。さらに景気の低迷を受け、会社としてもこれ以上バブル入社世代を年功的に処遇し続けることは難しくなった。
彼らにしてみれば、管理職の手前まで来て「君たちはもう管理職にはなれない」と会社から宣告されたようなものだ。65歳を定年だとすれば、20年近い職業人生が残っている。30代ならばまだ転職の可能性もあっただろうが、40代後半になるとその可能性も狭まる。家族や住宅ローンを抱え、今から大きなリスクをとることはためらう。上に行けず、身動きが取れぬまま彼らは閉塞状況に陥る。
原因の2つ目に、多くの企業で依然として「管理職重視」「ポスト重視」の価値観が残っており、バブル入社世代に対して管理職以外の具体的なキャリアを提示することができていない点が挙げられる。
管理職ポストが減り、管理職昇格の可能性が低下すれば、その手前で滞留する社員が確実に増える。それにも関わらず、会社は「管理職を目指せ」「マネジメント能力を身につけよ」という画一的なメッセージを発信する。人事制度も管理職昇格を前提とした一律の仕組みが温存されている。
膨らんだ中間層に多様なキャリアを提示し目詰まりを解消しなければ、バブル入社世代だけでなくその下の層にも悪影響を与える。
大量採用のバブル世代が40代後半を迎えた今、年功的な人事管理の仕組みや管理職重視の価値観を維持することはもはや困難だ。この世代にいち早く手を打たなければ、組織の閉塞状況はより一層深刻になる。
元の記事は『日経産業新聞 企業力アップ!組織人事マネジメント講座 (全33回連載)』(2014年1月09日~3月27日)に掲載されました。