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【M&Aセミナー講演録】第5回:M&A実施企業20社へのヒアリング調査(前半)

M&A実施企業20社へのヒアリング調査(前半)

解説
・当社執行役員 ディレクター 桐ヶ谷 優

ヒアリング調査の概要

ヒアリング調査の概要

今回のヒアリング調査では、様々な業種の20社の人事担当者、責任者に直接ヒアリングを行いました。

アンケート形式ではなく、我々が直接訪問させていただき、ヒアリングを実施しました。

人事担当者にM&A、企業再編の件が知らされたタイミング

M&A、企業再編の件が知らされたタイミング

人事担当者がM&A案件を知らされるのは、一年前が大半でした。

Day1の2年以上前に知る場合の特徴は、グループ再編の場合です。同じ資本傘下であるので、何年前から経営陣が中期経営計画で触れているケースです。

異なる資本の場合、1年以上前に知ったという担当者が多かったです。経営企画や財務の担当者は早めにM&Aを知っていたようだが、人事担当者に話が下りてきたのは比較的遅かった、と漏らす方もいらっしゃいました。

また、1社ではありますが、Day1の直前に言われたという会社もあり、社内開示が外部へのプレスリリースと同じタイミングで行われたようです。
その企業ではプレスリリースの前日に慌てて労組にも人事統合の件を伝えたようです。

M&Aを知るというタイミングは会社によって異なるため、ある日突然のケースにも備えをしておかなければなりません。

Day1までに取り組んだこと

Day1までに取り組んだこと

次にDay1までに急ぎ取り組んだことは?という質問です。

先ほども、優先順位については申し上げましたが、Day1までに労働条件の統合、を行ったケースが多かったようです。

一方、退職金、人事システムの統合は時間がなくて取り組めなかった担当者が多い状況でした。
ちなみに、このような検討プロセスに誰が関わるのか?ということですが、人事統合委員会が組成され週1回のペースで関係者同士話し合いを行うケースが多くみられました。

また、両社人事部長、人事課長が中心となって進めているケースも多く見られました。なお、人事統合委員会のメンバーたちは、事前に誓約書を提出することが多く、厳格な情報統制を行っていたようです。

労働条件の統合

労働条件の統合

労働条件の統合に関しては、新しい労働条件を定めるケースが多く見られました。

新しい労働条件を定めるにあたっては、ある程度の時間が必要だと思います。

両社の労働条件について比較表を作り、入念に検討した上で新しいルールを作る会社が多かったです。

2社を比べて低い方の労働条件に合わせる会社も一部ありました。

労働条件の統合:具体例

労働条件の統合:具体例

ここで、労働条件統合の事例をご紹介します。

旧A社の所定労働時間は8時間で、労働生産性は低く、残業が多い。一方、旧B社の所定労働時間は7.5時間で、労働生産性は高く、残業が少ない。
このようなケースにおいて新会社のルールをどのように統一するかは非常に悩ましい問題です。

仮に旧A社に統一すると、一人当たりの人件費は30分間について本給が増加します。旧B社の社員にとっては不利益変更になるうえ、拘束時間が30分伸びたということになります。
旧B社の社員にとっては短い時間で生産性高く仕事に取り組んでいたのに、労働時間が延びることでダラダラ仕事に取り組むようになってしまうのではないかという懸念が生じます。

一方、旧B社に合わせると、旧A社の社員は30分間について時間外手当が増加し、旧A社の社員は残業時間が増加することを心配し始めます。
また、旧A社の管理職は果たして時間管理を適切に行うことができるのだろうか、今までどちらかと言えば残業をいとわずとある程度認めていたという部分があり、7.5時間の中に収めることは可能なのか、という懸念が生じます。

人事制度(等級・報酬・評価)の統合

人事制度(等級・報酬・評価)の統合

新しい人事制度の設計をゼロベースで行った会社が、予想外に多く見られました。

メリットとしては合理的な制度で新しいスタートが切れる、これまでの過去の制度のしがらみを断ち切れる、社員への説得力が増す、といった点があげられます。
意外かもしれませんが、新しいものを導入することで、社員への説得感が増すと述べた人事担当者も複数いらっしゃいました。

一方、デメリットはとにかく時間がかかる、運用定着までは混乱が生じる、どちらにも変化が生じるので、調整負荷が大きいことが挙げられます。

M&Aを機会に、同業他社の部長クラスは、課長クラスはいくらもらっているのかを含めてあるべき人事制度を作りたいというご要望も多くもらいます。
ただし、時間がなくて行えないケースもあり、ある程度現状の制度を存続する場合も多いのが実態です。

一方、人事制度の低い方に合わせるというケースは2社ありました。このうちの一つは、某独立行政法人の統合のケースで、国の政策により賃下げを余儀なくされたためです。
なおこの時も、一定期間の補填が行われ、6年間かけて人件費を調整されたとおっしゃっていました。

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