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【M&Aセミナー講演録】第6回:M&A実施企業20社へのヒアリング調査(後半)

第6回:M&A実施企業20社へのヒアリング調査(後半)

解説
・当社執行役員 ディレクター 桐ヶ谷 優

統合後の組織体制

統合後の組織体制

統合後の組織体制は思い切った変更は少なく、旧会社を並存してぶら下げるケースが多く見られました。

図中の右下がイメージで、旧A社が第1営業部、旧B社が第2営業部、旧A社が第一商品部、旧B社が第2商品部といったイメージです。

この背景にM&A直後は、当面の事業運営を混乱させたくないという思惑があります。

一方、避けて通れないのがコーポレート系の統合です。コーポレート系の部署は重複の解消をせざるを得えなかったと回答した方々が圧倒的に多かったです。
担当部長や新しい部を作り、そこに異動させ、別の役割を与えるといった対応が見られました。

ちなみにこの一定期間並存という、統合前の会社を組織図にぶら下げるという運用は、平均して統合後1~2年が一般的であり、その後は組織の改編が行われるケースが多く見られました。

優秀人材の流失

優秀人材の流失

次にM&A時に人材流失があったかという質問については、ヒアリングによれば20社中15社に流失があったという結果でした。

辞めていく人はDay1前か後かという質問に対しては、Day1の1年後に人材流失が発生することが多く見られました。

我々の実感として、Day1直後に転職する人は少ないと考えます。

Day1前に統合の発表があり、自身がどうなるのだろうかという気持ちを抱き、今までのようにやれるのだろうか、裁量を与えてもらえるのだろうかという不安を感じ、徐々に転職活動の意識を持ち、動き始め、Day1以降、様子を見ながら、「やっぱりダメだ」「やっぱりいけそうだ」と判断しながら転職に踏切るというケースが多いのではないかと思います。

よって、優秀者やキーパーソンのリテンションには比較的早めに取り組んでおくことをお勧めいたします。

Day1以降にやればよいということではではなく、Day1までに個別にアプローチをするなど、リテンションを図っていくことが必要となります。

優秀人材の流失防止策

優秀人材の流失防止策

具体的流出防止施策としては、経営陣から早めに今後のあるべき姿・方針を示す、統合後は実力主義の制度であることを見せる、ポストを提示する、上司から個別アプローチするといった施策があげられました。

リテンションボーナス”といった形で金銭的報酬を支払う企業もありましたが、このような短期的な施策にはある程度限度はあるかと思います。

統合後の取り組み

統合後の取り組み

皆様が共通に不安に思われる点として、統合まではなんとか乗り越えたが、統合後どのように融和を進めていけば良いのか?というご質問をよくいただきます。

具体的な施策としては、「経営陣からのメッセージ発信」「行動指針の策定」を行った企業が見られました。「評価制度の見直し」「新しい統合会社としてのKPIの設定」「タスクフォースや横断プロジェクトの立ち上げ」「理念共有のための研修を実施」などに取り組む企業が多くみられました。

さらに、一歩進んで、統合後の従業員意識を測定するために、無記名形式でES調査(従業員意識調査)を実施したというケースもありました。

最近の傾向としては、統合した後に上司と部下の関係性がこれまでと変わるため、M&A後の360度評価を実施する企業も見られます。

その他、部門ごとの懇親会費用を補助し、部門内での積極的な交流を援助する会社も見られました。

ヒアリング調査から得られた示唆

以上の調査からM&Aが離職予備軍を誘発したり、M&Aが従業員に対してキャリアを再考するきっかけを与えることにつながることが分かりました。

ヒアリングでは優秀者にとどまってほしいが、意外にやめてほしいと思う人はやめない、といった声も聞かれました。

いずれにしても、M&A後、1年以内の人材流失には気を付ける必要があります。

最初は様子見、静観していた従業員がある日突然退職届を提出してくることもありうるということです。

不利益変更を避けるため、現在の処遇を全面的に維持することを全社に対して伝えると、若手社員ががっかりするということも見られました。

両社の管理職がそのまま温存されることが分かると若手社員が、自分たちには先がないなと思い、辞めていくケースも見られます。

統合後は、飛び級の仕組みがある、一部のポストは若手にも割り振られる、ポストの流動性が確保されているなど若手社員にも、チャンスがあることを提示しなければなりません。

その他ヒアリングを通して、M&Aの現場でリアリティーがあるなと感じた部分を紹介させていただきます。

リアリティーを感じた意見

「占領軍として思われないよう相手方に気を遣いすぎるのはダメだ。上から目線でこっちが行くぞと振りかざしてもダメだ。」

「統合後はできるだけ早くかき混ぜた方がいい。やっぱり一緒になってよかったと思えるのは、統合したことで新製品が生み出される、お互いの顧客情報を交換することで新たな販路が開拓されたといった目に見える成果が出ることだ。」

「コーポレート部門の重複解消に伴う出血はあえて避けない。やむなしと思ってやるしかない。出血は早いほど小さいし、早い方が回復も早い。」

人事統合時の作戦

人事統合時の作戦

最後に人事統合をどう進めていくか?ということについて我々から皆様へヒントを提供させていただきます。

まず、「失敗パターン①」は合理性を追求しすぎる社員が不安になる。逆に社員感情に寄り添いすぎると、合理性が無視されて、経営として目指すべき姿を達成出来ない「失敗パターン②」になります。

ではどうするか?

まず社員感情にフォーカスすることが大切です。その上で、お互いの社員は何に重きを置いているか、仕事に対する従業員はどう感じているのか、ということを把握します。

その上で、人事統合当初はお互いの従業員が不合理だと感じる部分を見つけて対処し、その後時間をかけて、お互いに認識の一致がとれた後に、その他の部分を変更していくというステップです。

具体的に言えば、就業条件などは従業員に見えやすいところから統合を進めてください。

その上で、最後は左下の従業員にとって一番影響の大きい処遇面の設計に取り組むことが望ましいと思います。

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