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人事領域におけるデジタル化はどう推進すべきか

SUMMARY

HR Tech、AI、ピープルアナリティクスなど、昨今のテクノロジーの進化によって、人事部や各事業部門が担ってきた人事機能のあり方は再考を迫られています。労務管理、勤怠管理、教育、配置などの人事業務の多くが省力化・自動化され、これまで人が担ってきたことの多くがテクノロジーで代替できるようになってきています。また、人事担当者の経験や勘に頼っていた判断業務の多くも、テクノロジーを活用してより精度高く/透明性高く行うことができるようになってきています。ルーチン業務に埋没しがちな人事部に対する批判は以前からもありましたが、テクノロジーによる代替は人事部(または各部の人事担当者)の存在価値を改めて問い直すきっかけとなっています。

人事領域のデジタル化が必要な背景

テクノロジーによって代替されつつある人事領域には主に、①採用活動、②タレントマネジメント、③給与計算・人事評価管理・勤怠管理があります。①の採用活動に関しては、書類選考で人工知能(AI)が使われ始めており、人事担当者がエントリーシートの確認作業に充てる時間が75%程度削減できたという事例も出てきています。また、②のタレントマネジメントについては、人材情報を一元管理するだけでなく、後継者育成や人材最適配置を判断するツールも出ています。③については伝統的なERPパッケージに加えて、ユーザー側での使い勝手を向上した低価格のクラウドサービスが普及しており、これまでの延長にとらわれないシステム選定が求められています。

これらのテクノロジーの出現は、人事部の定常業務を省力化・効率化してくれるという意味合いにとどまりません。データ分析・活用の高度化によって、人事部・人事担当者は(勘や経験ではなく)事実やデータに基づく「説明責任」を経営や社員からますます求められるようになり、より本質的・戦略的な業務に集中しなければ経営に対して存在価値を発揮できない状況になってきているということです。

人事領域のデジタル化の課題

デジタル化の本質的な課題は、人事機能の再構築であり、組織・業務改革そのものにほかなりません。いかに優れたシステムを導入しても、人事部の問題解決に向けた基本的なプロセス(仮説・検証・実行)が変わらなければ、人事機能の高度化にはつながりません。例えば、タレントマネジメントシステムはデータを集約する「ハコ」でしかありません。データをどのように活用すべきかを経営目線で仮説を立て、データの格納・抽出方法を設計し、データの観察・活用を日々の業務プロセスに落とし込むことが課題となります。

経営目線でデータ活用の仮説を立てるには、人事部に閉じた検討だけでは限界があります。次の経営リーダー候補となる人材を発掘する場面を想像してみましょう。

人材アセスメントのスコアや業績評価の点数など共通のものさしに着目して候補人材をピックアップすることはできますが、部門ごとの事業特性をよく把握しておかなければ正しくない結論を導いてしまうことが少なくありません。例えば、成果が顕在化するまでのリードタイムが長い事業の場合には、現在の担当者の手柄だけとは言い切れない場合があります。また、コア事業の収益向上に力を発揮しているマネジャーは目立ちやすい傾向がありますが、実はこういう人は過去から同じような経験しかしておらず、経営リーダーとは程遠い小粒な人材だったりします。

事業責任者や経営者と同じ視点に立って、人事はどうあるべきかを提案し、解決していく機能が人事部に求められているといえます。このことは、人事機能を人事部任せにしない、部門任せにもしない、高度な組織運営に変えていくことを意味します。

クレイア・コンサルティングが支援する人事領域のデジタル化の特長

1. 人事機能の棚卸とあるべき姿の設計

まず人事機能(業務)の現状を網羅的に整理し、デジタル化によって人事機能をどのような姿に変えていくべきかを検討します。
人事機能は以下の2軸で整理します。

  • バリューチェーン(戦略立案・計画・運用管理・オペレーション)

  • 人材フロー(採用・配置・評価・教育・任用・代謝の流れ)

上記の視点で現行業務と人員リソース(担当者・工数)の大まかな全体像を俯瞰します。多くの事業や関係会社を持つグループ会社の場合には、本社の人事部門と事業部門(または関係会社)の人事担当者との間でどのような分業・協業が行われているかを把握します。
 
人事機能の現状を分析すると、運用管理・オペレーション業務に多くのリソースが費やされていることがわかります。また、管理・オペレーション業務をSSC(シェアードサービスセンター)やBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)に外部化している場合でも、イレギュラーの判断やチェック(再鑑)などの業務が非効率になっているケースが多く見られます。しかし、外部化・システム化だけでは実質的な業務効率化につながらないことに注意が必要です。組織の中での業務の進め方(権限移譲や分権化)をセットで検討することが求められます。

一方、人事部の本来業務である戦略立案の機能に抜け漏れがあるケースも少なくありません。会社の規模が大きくなるにつれて、評価・配置・任用の権限は事業部門に移管される傾向にありますが、全社最適の視点で人事をリード・コントロールする機能が人事部にも事業部門にも存在しない、ということはよくある現象です。

人事部は労務管理や勤怠管理などの「管理のエキスパート」としての役割に加えて、「事業のパートナー」として既存事業の深化/新規事業の探索を人事の側面から推進する存在になることが求められます。さらに、「変革のエージェント」として経営改革のための全社的・部門横断的な問題解決をリードすることが必要です。

このような新たな人事部としてのミッションを明確に描いた上で、既存のリソースを最適配置するための組織機能のあり方をコンサルタントが分析・設計します。

2. デジタルを活用した業務プロセスとシステムの要件定義

デジタル化の対象となる機能を特定し、あるべき業務プロセスを設計します。デジタル化の対象となる機能には大きく分けて次の3つがあります。

  • 散在している(または可視化されていない)データを収集し、体系化し、管理する機能

  • さまざまなデータから「意味合い」を読み取り、原因の分析や対策の考案に役立てる機能

  • データから未来を予測する機能(問題の予兆やポテンシャルを発見する機能)

①に関しては、複数の人や部署でバラバラに行っていた繰り返し作業に着目し、フォーマットの統一やデータの一元管理による効率化を図ります。例えば、人事評価や1 on 1ミーティングの面談記録、自己申告書の一部のデータなどがこれにあたります。これまでエクセルで個別に管理していたものを同じプラットフォーム上で集計・分析・出力できるようにすることで、より本質的なコミュニケーションの時間に社員が注力できるようにする効果が期待されます。

②に関しては、データ活用の目的や用途に着目し、必要なデータの定義や保存形式、登録方法等の設計を行います。例えば、人事配置や抜擢を検討するためのデータや、人材のパフォーマンスや組織活力の実態を把握するためのデータ等がこれにあたります。データ活用の目的や用途について仮説を立て、どのようなデータをどのような切り口で分析すればよいかを設計することが不可欠です。まずは現状得られているデータから読み取れることは何か、もっとほかにどういうデータがあれば分析の切り口となるかについて、組織分析の経験豊富なコンサルタントが貴社とのディスカッションを通じてアドバイスを行います。

③のデータ予測の高度化はまだまだ未知の部分が多いですが、問題の予兆発見やポテンシャルの発見が精度高く行えるようになれば、現場の管理者の能力に依存せずに人材マネジメントの質を平準化したり、経営幹部の適性がある人材を見極めるサクセッションプランニングに活用できる可能性を秘めています。

3. デジタルを活用した新しい業務プロセスの浸透・定着を支援

デジタルを活用した新しい業務プロセスが実際に組織の習慣として根付くように支援を行います。例えば、従来の人事評価面談を見直し、期初と期末の2回だけだった面談を週次の1 on 1ミーティングに変えることを計画しているとします。現場にとっては負荷が増えることになり抵抗や反発は必至です。導入時には、なぜルールを変えるのかという意図や狙いを丁寧に説明するとともに、組織の習慣として根付かせるための仕掛けも埋め込んでおく必要があります。一定の強制力を持たせながら、現場の自律性・創造性を喚起するための組織開発をコンサルタントが企画・実行支援します。

人事領域のデジタル化の流れ

1. 人事機能の現状分析

人事機能の現状分析では、組織規程等の公式的な文書を手掛かりに、人事に関わる組織権限の所在を明らかにします。また、人事に関わるデータの存在形式や現時点での活用方法について関係者へのヒヤリングを通じて整理します。

運用実態については人事部および関係部署へのヒヤリングを通じて実態を把握します。仕組み上は人事に承認権限があると書かれている場合でも、実際の運用では事業部の判断が優先され形式的な権限になっている場合があります。実態を正しく把握するとともに、「なぜそのような運用になっているのか」という理由についてもおさえておくことで、将来の改革の障害となるリスク要因を把握します。

2. あるべき人事機能の概要設計

人事部としての本来のミッションを明確にし、重点強化すべき機能を特定します。また、デジタル化を通じた業務の「省略」「縮小」「代替」「外部化」の可能性を分析し、既存のリソースの最適配分によって合理化・効率化を図ります。

3. 業務プロセス・システムの要件定義

デジタル化の対象となる機能を特定し、あるべき業務プロセスを設計します。新たな業務フローに変えていく上で、必要な情報インプット、判断・承認プロセスの変更点を具体化します。また、情報システムの要件や情報開示の範囲などセキュリティの要件を定義します。

4. 社員コミュニケーションプランの企画と実行

新しい人事の仕組み・ルールの導入にあたって、社員とのコミュニケーションプランを検討します。社員説明資料や必要なガイド類、ツール類の作成を行います。導入時だけでなく、定期的なタイミングでコンサルタントが社内向けのガイダンスやアドバイスを行います。

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