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2章 日米の「人事制度」を再点検する⑥

クレイア・コンサルティング 2017.8.23
④福利厚生制度 日本企業の福利厚生制度は、社会保障要素の強い「法的福利厚生」に加え、社員の生活保障の観点を強くした「法定外福利厚生」が手厚いことが特徴です。法定外福利厚生には、大きく分けて次の2つがあります。
≪おもな法定外福利厚生≫
(a)現金で支給される福利厚生 住宅手当や家族手当など、毎月給与と一緒に支給される「生活関連諸手当」があります。
(b)現金以外の福利厚生 社宅や保養施設の利用補助など、現物による生活支援が中心です。
福利厚生制度は、社員の働き具合に関係なく、「その企業の社員である」という理由でベネフィットを享受できる制度です。生活保障の観点を強く意識した法定外福利厚生の充実には、「終身雇用と生活保障」を前提としたマネジメント・スタイルが強く影響しているのです。
⑤退職金制度 退職金も、社員が企業から受ける報酬の中で、大きなウエイトを占めています。退職金の位置づけは、「賃金の後払い」と「老後の生活保障」(福利厚生)と考えられています。 賃金の後払いは、多大な教育コストをかけた新卒社員の流出を防止し、社員が定年まで勤め続けるように引き止める効果があります。と同時に、キャッシュアウトの機会を先延ばしにできるというメリットもあります。 とくに、社員の流出を防止し、長年貢献してくれた社員に厚く報いるために、退職金の伸びは勤続年数に比例していて、「長くい続けるほど退職金が多くなる」仕組みになっています。 また、老後の生活保障の考え方の背景には、「終身雇用と定年制」を前提としたマネジメント・スタイルがあります。すなわち、定年を迎えた社員は否応なく解雇されますが、その時点で再就職は現実的に困難なため、定年後の生活保障を企業が考慮する必要があるのです。
⑥教育制度 教育制度には、大きく分けて次の2種類があります。
≪おもな教育制度≫
(a)階層別研修 社員は、資格等級があがるたびに、職能レベルに応じた研修を受けます。これらの研修は職掌横断的な研修が多く、「職務や成果に短期的に結びつく」というものではありません。 中には、能力育成よりも、“社内の交流”を主たる目的としている研修もあります。ただ、それはそれで、「円滑な人間関係を築くことで仕事がしやすくなる」というメリットを得られているようです。
(b)新卒教育 新卒を中心とした採用を行う日本企業には、職業経験がない学生を採用し、育成する仕組みが発達しています。 新卒の教育は、必ずしも研修という形式に限らず、ほとんどの場合はOJTによって行われています。すなわち、各職場では、毎年“素人”が配属されることを了解していて、各職場の先輩・ベテランが素人を“一人前”に育てるという機能を担っています。 新卒の教育コストの多くは、各職場が担っているといってよいでしょう。
階層別研修や新卒教育は、教育の効果が表れるまで(教育投資の回収まで)に比較的長い時間を要します。企業にしてみれば、多大な教育コストと期間をかけた社員に、簡単に辞められては困ります。 ですから、「終身雇用」という暗黙の習慣に頼るだけでなく、先に述べた「年功型賃金カーブ」や「退職金」によって社員の引き止めを図っているわけです。
※この内容は2003年に書かれたものです。

法定福利厚生
法律によって、企業(事業主)に負担が義務づけられた福利厚生。日本企業は、健康保険、失業保険、厚生年金保険などの社会保障の仕組みの一端(保険料は雇用主と社員が折半で負担している)を担っている。
キャッシュアウト
現金が流出すること。たとえば、退職金は毎年積み立てていくものとして、会計上は毎年の経費として計上されるが、実際に支給されるのは退職時であるなど、会計上の処理(会計上の支払い)タイミングと、現金流出(実際の支払い)のタイミングは一致しないことがある。
OJT
On the Job Trainingの略。現場で実務業務を行いながら、上司や先輩が先生役となって行う教育訓練。研修所で行われる集合研修など、現場を離れて行われる教育訓練は「Off-JT」と呼ばれる。

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