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【コンサルタントコラム】
「やる気」の構造 ~これがモチベーションを高める組織だ!~(2017年) - 6章 会社を元気にする「人事部」を実現する③

3.会社を元気するために「人事部」がなすべきこと

これまでは、時代の流れの中で起こったビジネスルールの変化と、それにともなう人事部の役割の変化を見てきました。

企業を取り巻くビジネスルールが変化する中、今後の人事部により強く求められてくるのは、「経営戦略の実現をサポートする機能」であるといえるでしょう。ここでは、そのための具体的な視点を2つ提供します。

経営戦略の実現をサポートするために人事部がすべきこと

コア人材育成する。
②全社員の意識改革を行う。

では、一つずつ見ていきましょう。


コア人材を育成する

人事部に求められる役割が「集団のモチベーション維持」から「個々の能力を適切にマネジメントする」方向に変わってきたことは、先ほども指摘しました。

とくに今後は、これまでの一律平等の処遇を改め、高い成果を発揮する人材を早期に抜擢し、さらなる活躍の場を与えながら、その能力を最大限に発揮させていくことが重要となるでしょう。そのためには、組織の推進力となる「コア人材」をいかに育成していくかが人事部の重要な役割となります。



たとえばソニーでは、社内横断的な人材データベースを活用し、全従業員の中から一定割合の人数をビジネスリーダーとしてプールし、その人材に対してさまざまな研修プログラムを提供しながら、次代の経営層を選抜する仕組みを構築しています。

次にコア人材の育成プロセスの一例を示しましょう。

コア人材の育成プロセス(例)

①コア人材を定義する
事業戦略に沿って自社にとっての「あるべき人材像」を定義します。つまり、何年後に、どの組織のどのポジションに、どういった人材が何人必要となるのかを明確にします。
②現状を認識する
社内横断的な人事データーベースを構築・活用し、求める人材が現在の組織内に存在するかどうか現状を把握します(社内人材からの調達が難しい場合には、外部マーケットから必要人材を採用できるかどうかも検討します)。
③施策を実行する
求める人材を確保・育成するために、具体的な施策を実行します。
(a)選抜する……あるべき人材像にもとづいて選抜基準を設定し、人材の選抜を行います(人材アセスメントの実施)。
(b)育成する……選抜された人材を強化するための育成プログラムを策定し、実施します(=教育・研修プログラムの実施)。
(c)マネジメントする……選抜・育成した人材が有効に機能するよう、マネジメント・システムを整備します(=人事制度の改革)。

このように、「あるべき人材像を定義し、現状認識を行い、具体的な施策を実行する」というプロセスを通じて、人事部は自社の経営を支えるコア人材を発掘・育成していくことが求められます。

そのプロセスでは、「人材アセスメント」「教育・研修プログラム」「人事制度改革」といった具体的な施策を、各社の状況に合わせて適切に組み合わせていくことが求められます。


全社員の意識改革を行う

「組織のコア人材に対する働きかけ」と平行して、経営戦略の実現をサポートするために人事部が取り組むべきもう一つの視点は、「全社員の意識改革」です。

この章の冒頭に、社員一人ひとりの力が組織の競争力に結びつくことを指摘しましたが、「全社員の意識が高い組織」と「低い組織」では、組織力に大きな差が生まれてくることは明らかです。企業が市場の変化に柔軟に対応していくためには、社員一人ひとりが自律的に考え、行動することが不可欠です。そのような行動を促進させるためには、社員一人ひとりの意識を高めるほかにありません。

社員の自律的行動を促すためには、社員自身に「過去の慣性から脱却し、自分は変わらなければならない」という危機感を強くもってもらうことが必要となります。

それでは、全社員の意識改革を促すために、人事部としてどのような施策が考えられるでしょうか?ここでは2つの例をあげます。



全社員の意識改革を促すための施策(例)

①人事制度を改革することによって社員の意識改革を促す
企業として大事にしたい(または、大事にしていく必要のある)価値観を明確にし、それを広く浸透させるために、社員に求める行動を評価制度に盛り込みます。そして、その基準に沿って行動した人材を賞賛し、処遇にも反映させます。
たとえば、社員に顧客意識を高めてもらいたい場合には、自社として尊重する顧客への貢献行動を具体的に示し、それを実践した社員を高く評価します。
人事制度とは、単に報酬を決めるためだけのものではなく、仕組みの構築やその運用を通じて、「社員に対し、どのような人材をめざして欲しいか、という会社としてのメッセージを明確に伝えていく」という機能も担っています。その機能をうまく活用することで、社員の意識を変革させていくことが可能となります。
②社員に対して意図的に「気づきの機会」を与えていく
アセスメントや研修などの実施を通じて、社員一人ひとりに自分の強みや弱みを把握させる機会を提供するのが、もう一つの方法です。自らの現状認識を通じて、自己啓発に向けた指針を立てさせ、社員の意識改革を促していくわけです。
ここで重要となるのは、社員に対して「どのように変わっていくべきか」という具体像を人事部が示すことです。そうすることにより、「変わることは正しい」「自分は変わることができる」という意識を社員一人ひとりに抱かせるのです。
さらには、「変わっていくこと」が当然のこととして受け入れられる環境を整えることにより、社員の自発的な意識改革はさらに促進されることになります。

もちろん、経営戦略の実現をサポートする人事部が果たすべき役割は、「コア人材の育成」と「全社員の意識改革」の2つに留まりません。

今、多くの企業の組織変革・人事制度改革は、経営トップ自らがプロジェクトリーダーとなって、リーダーシップを発揮しながら推進しているケースがほとんどです。

もはや人事の問題は、人事部のなかだけで完結するものではなく、経営全体の方向性を見据えながら、新しい仕組みや人材マネジメントの方法を検討していかなければなりません。そのために、人事部は経営トップと歩調を合わせ、戦略的に自社の人材マネジメントのあり方を検討していく必要があるでしょう。

※この内容は2003年に書かれたものです。



コア人材
経営戦略の立案や付加価値の高い商品・サービスの創造など、企業の競争力を生み出すための「コア(中核)」となる人材。

アセスメント
組織の中で人材を選抜・育成・登用する際に、対象となる人材の行動や言動をさまざまな方法で観察し、その人物の適性を客観的に評価すること。

過去の慣性
日本企業における代表的な症例としては、これまで規制に守られていた産業が、過去のやり方を引きずったまま旧来のビジネスルールから脱しきれず、グローバル企業との競争にさらされ低迷する、といった状況があげられる。

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