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【コンサルタントコラム】
「やる気」の構造 ~これがモチベーションを高める組織だ!~(2017年) - 3章 「ワーク・モチベーション」のメカニズムを知る④

3.3つのモチベーション因子

“個人のやる気”に対して作用するさまざまな「動因」と「誘因」の組み合わせを集約すると、大きく3つの因子に分類することができます。

この3つのモチベーション因子は、東証一部上場企業の30~40代の管理職・監督職層を対象に行ったアンケート調査「ホワイトカラーのワーク・モチベーション」の分析から発見されました。


モチベーション因子

①自己実現因子
仕事における自己能力の開発や目標達成へのコミットメントなどを重要視する因子です。

②人間関係因子
職場における一体感や打ち解けた雰囲気、またチームワークや信頼関係を重要視する因子です。

③経済性因子
賃金、処遇制度、雇用の安定のように収入を得る手段に関する点を重要視する因子です。

これらの3つの因子は、「仕事における個人の価値観」の軸となる概念です。

それぞれ程度の差こそあれ、人間が働こうという気持ちになるためにはすべての因子が必要になります。

なぜなら、人は「生活の糧として働く」(経済性因子)と同時に、「仕事に対する意義を自らを成長させることなどに見出そう」(自己実現因子)とし、また「ともに仕事をしている仲間からさまざまな刺激を受けて仕事を行っている」(人間関係因子)からです。

ただし、各因子は各個人によって重要性が異なります。また、「企業の業態・規模」や「他社との競争状況」によっても、“どの因子を重要視するか”の傾向は異なってきます。

自己実現因子とは?

ここでの“自己実現”とは、正確には「仕事を通じた自己実現」のことです。

つまり、自己実現因子とは、「仕事に何かの見返りを求めるのではなく、仕事を行うことそのものに目的意識をもち、自己のもつ可能性を最大限に伸ばそうとする」ことを重要視する因子なのです。

自己実現因子が高い人たちは、「仕事を通じての自己成長」「現在の仕事における責任」「仕事達成の機会」「仕事自体」といった点に満足していて、給与や収入についての関心は低く、それらが仕事のやる気の源泉であるとは考えていないのです。

また、アンケート調査の分析結果から、自己実現因子が高い人が多くいると、その組織は活性化する傾向があることがわかりました。つまり、自己実現因子が高い人は、自分自身へも、周りの人に対しても、やる気を起こさせる力をもっており、「活気づいた職場」「やる気をみなぎらせた人がいる職場」「社員同士がお互いにやる気を刺激しあっている職場」をつくり出しているのです。

人間関係因子とは?

人間関係因子とは、「社内コミュニケーション」や「部門間協力」など、仕事をするうえでの人的環境を重要視する因子です。

人間関係因子が高い人たちは、「職場の一体感」や「打ち解けた雰囲気」「友好なチームワーク」といった周りの人たちとの摩擦の少ない穏やかな対人関係に満足しています。

また、アンケート調査の結果によると、大手製造業のように仕事の遂行が組織単位で進められている会社では、人間関係因子が高い傾向がありました。これは、仲良しクラブのような友好的関係を求める人たちだけが、人間関係因子の高い人なのではないことを表しています。

なお、組織のヒエラルキーが強い会社では、職場における上下関係が安定しており、「上司・部下との信頼関係」が醸成しやすく、人間関係因子が高くなる傾向があります。

経済性因子とは?

経済性因子とは、「年収」や「安定的な収入」のような賃金そのものの他、「定期的な昇給」「昇格昇進」のような処遇制度、「雇用安定性」などのように収入を得る手段に関する点を重要視する因子です。

仕事をすることによって生計を立てていることを考えれば、賃金を重要視するのは当然のことです。ただ、この経済性因子にも2つの側面があります。

「生活を維持するための安定的な収入」という側面と、もう1つは「インセンティブになる経済的刺激」という側面です。

アンケート調査の結果によると、上下関係が厳しく、個人・組織とも責任の所在が明確で、何事も仕事優先の会社では、経済性因子が高くなる傾向がありました。これは、仕事そのものから曖昧性が排除されており、仕事の目的や責任と経済的インセンティブの連動性が高いことによります。

3つのモチベーション因子の性質

では、これら3つのモチベーション因子が個人のやる気に働きかけるメカニズムを見てみましょう。

先のアンケート調査の分析から、「因子によってやる気を引き出すメカニズムが異なる」という結果が得られました。自己実現因子が社員のやる気に密接に関わっているのに対し、人間関係因子や経済性因子が組織の活気におよぼす影響について、有意なデータは得られなかったのです。

このことから、3つの因子の性質を整理すると、次のようになります。

3つの因子の位置づけ

①自己実現因子……やる気を直接的に呼び起こすモチベーター因子。
②人間関係因子……やる気を直接引き出すわけではないが、やる気の土台となる組織環境因子。
③経済性因子……同上

つまり、前提条件である人間関係因子や経済性因子が充足されていない状況では、自己実現因子の“やる気”を高める有効性が低くなるのです。

先のコンサルティング会社に転職しようとしているAさんを例に考えてみましょう。彼は、「自分の可能性を最大限に引き出したい」と考えていました。仮に、自分の飛躍的成長を期待できる会社への転職がかなったとします。

しかし、その会社で、上司や部下も非常に信頼できる良好な人間関係であったとしても、処遇が社長の好き嫌いで決められたり、業績悪化を理由に最低賃金ギリギリの処遇した得られなかったとしたら、どうでしょう?恐らく、彼のやる気は大きく減退することでしょう。



あるいは、その会社で処遇制度がある程度改善され、一時的に彼のやる気も上向いてきたとしても、上司が非常に高圧的で嫌味なタイプに代わったら、これも彼のやる気を減退させることでしょう。

つまり、モチベーター因子の高いAさんであったとしても、組織環境因子があまりにも低い組織に入ってしまうと、彼のやる気は低くなってしまうのです。



※この内容は2003年に書かれたものです。



ホワイトカラーのワーク・モチベーション
このアンケート調査は、筆者の1人である草間がトーマツコンサルティング株式会社に在籍中に行った研究結果に基づいている。
このアンケートでは、仕事に関する次の6カテゴリーについて、各個人が重要視する度合いを調査した。①生活の安定に関すること/②給与や賞与などに関すること/③チームワークに関すること/④上下関係に関すること/⑤自己成長に関すること/⑥仕事そのものへの興味に関すること。
この調査から得られた結果を因子分析した結果、3つのモチベーション因子が浮びあがってきたのである。

組織のヒエラルキー
組織の階層および階層秩序のこと。過去の日本の大企業では、1枚の稟議書に主任、係長、課長補佐、課長……と10個近くのハンコを押す仕組みが示すように、非常に組織のヒエラルキーが強かった。そのような企業では、上位の役職者ほど枢要な情報を有しており、その情報格差によって、組織のヒエラルキーが維持されていた。しかし、近年はIT化の進展によって情報格差が縮小し、組織のヒエラルキーは弱まりつつある。

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