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【コンサルティングコラム】
「やる気」の構造 ~これがモチベーションを高める組織だ!~(2017年) - 5章 燃える社員を育てる「人材マネジメント」を実現する②

2.「期待一致」の効果を活用する人材マネジメント

では、会社と社員の「期待」を一致させると、どのような効果が生まれるのでしょうか?そして、その効果を得ようと思えば、実際の場面でどのように人材マネジメントを行えばよいのでしょうか?

ここでは、会社と社員の「期待一致」の効果を人材マネジメントに活用する方法について考えていくことにしましょう。


「期待一致」の効果

お互いの期待が充足されると、会社と社員の間に“信頼”が生まれます。この信頼は、組織の無形インフラです。目には見えませんが、会社などの組織がきちんと機能するための基盤になります。

では、この“信頼”がどう機能するのでしょうか?

信頼は、会社と社員との関係に存在する“不確実性”を低くしてくれます。簡単にいうと、「『こちらが望んでいることを相手が満たしてくれる』ということがわかる(続く)と、『相手の出方を予想できない』という不確実な部分が少なくなる」ということです。

逆に、信頼がない状態を考えてみると、理解しやすいでしょう。そんなとき、会社は社員を、社員は会社を疑ります。



たとえば、人事制度改革のプロジェクトがスタートし、これまでの年功運用をベースとした給与・賞与制度から、成果主義をベースとした年棒制度への移行を会社が宣言したとします。

会社は、勤続年数が長いという理由で一定の役職ポストに就いている管理職を疑っています。だから、成果という白黒つけられる明確な結果を見せて、できない管理職を排除しようとしてします。

社員は、結果を出した者に高く、結果を出せなかった者にはそれなりの処遇というけれど、「結局は、総人件費の抑制をする意図ではないか」と疑っています。だから、あえてチャレンジングな目標には望もうとせず、安全な水準で確実に達成できる仕事しかしなくなります。

お互いに疑っているから、“警戒行動”に多くのエネルギーを使うことになってしまうのです。お互いの出方がわからないから、将来の不確実性が高いのです。

会社と社員の「期待」を一致させると、会社と社員の間に信頼が高まり、この不確実性を低くしてくれます。つまり、会社と社員の間で、お互いの期待が充足され、信頼が生まれ、実感できる信頼関係が形成されると、不確実性が低減します。そして、それと反比例して、「将来への見通し」が明るくなってくるのです。

しかも、もともと「お互いの期待が充足しあっている」わけですから、仕事に取り組む意欲が俄然違ってきます。そこに、「信頼関係をベースにした将来への見通し」が加われば、会社も社員も心配することがなくなります。

本来、「社員は会社に仕事をしにきている」ものであり、「会社は社員に仕事をしてもらうために雇用している」わけですから、お互いに全力で仕事に打ち込むことができれば 一番よいはずです。これこそが、“会社も社員もともに元気な状態”です。



人材マネジメントの有効性を見る基準とは?

どこの会社でも社員が働く以上、社員をマネジメントしていかなければなりません。これを「人材マネジメント」といいます。

人材マネジメントはよい結果を生む場合もあれば、悪い結果を生む場合もあります。できるかぎり、社員が元気で会社も業績がよく社会に貢献していれば、それは人材マネジメントが有効であった結果だといえましょう。では、ある特定の会社・組織で行われた人材マネジメントが本当に有効であったかは、どうすればわかるのでしょうか?

ここでは、それを判断するうえでの大切な視点を2つ紹介しましょう。

人材マネジメントの有効性の判断基準

①経営の方向性との適合性があるか?
簡単にいってしまえば、「経営の方向性を実現させるためのマネジメントになっているか」ということです。
②環境変化への柔軟性があるか?
経営の方向性は環境に応じて変わります。このため、人材マネジメントのあり方も、それに応じて変化せざるをえません。つまり、環境に適応しようとする経営の方向性に、どれだけ柔軟に対処していけるかが大切です。

では、一つずつ詳しく見ていきましょう。

①経営の方向性との適合性があるか?

人材マネジメントを考えるとき、あくまでも“マネジメント”であることから目をそらしてはいけません。

すなわち、「さまざまなマネジメントは、経営の方向性を実現させるために存在している」ということを忘れてはならないのです。この考え方は、マネジメントの対象が“人材”であっても変わりません。

たとえば、あるタクシー会社の例を考えてみましょう。


≪経営の方向性との適合性がある会社例≫

◎サービス面で定評のあるタクシー会社

『ありがとうございます』を運転手がいわなかったら、運賃はお受け取りしません」という徹底したサービスで定評のある会社です。
この会社では、すべてはお客様のために、ただ業界で決められた運賃での移動手段の提供ではなく、「他社のどこよりも安い運賃で、安全で快適に移動ができ、気持ちよい満足感を得ていただける」サービスを提供することをポリシーとしています。そして、この経営の方向性を実現するための人材マネジメントを考えました。
まず、タクシー業界では常識とされるタクシー乗務員経験者を採用していません。なぜなら、他社でのタクシー乗務員経験者は、挨拶なんてしないのが常識だと思っている人が多いからです。そのような癖のつている人は、この会社の風土になじめないとの判断です。
その代り、採用では人間性を重視し、「自分の健康」「挨拶や礼儀」「家族のことを大切にしているか」などを確認するのだそうです。
入社後は、この会社の理念の周知・日々の社歌の唱和をくり返し、ドアサービスの教育訓練が徹底されます。
要するに、社員のこの会社への貢献とは「いかにお客様によいサービスを提供できたか」であり、この視点にもとづいた教育や評価が行われます。

このように“経営の意思”は実現させるためにあります。絵空事ではないのです。

そのためには、“マネジメント”が必要になります。大切な社員を対象とする「人材マネジメント」も、この一つなのです。

②環境変化への柔軟性があるか?

会社を取り巻く環境は日々変化していきます。したがって、会社の舵取りが大切になってきます。今まで西に進んでいたものが、突然風向きが変わり、東に進まないといけなくなるというようなことは、度々起こります。

「人材マネジメントは経営の方向性を実現できるものでなければならない」と述べましたが、その“経営の方向性”が変化すれば、それに連動するマネジメントのあり方も変わるべきなのです。

この適応力は、今後ますます重要となるでしょう。ところが、硬直しているマネジメントがよく散見されます。制度ありきの状態が、実際にはよくあるのです。

先のタクシー業界の例でいえば、長引く不況で利用者が減少したり、規制緩和の進展で競争が激化したりするなど、経営環境はますます厳しくなっているのが現状です。ところが一方で、老人を対象にした病院の送迎業務や、近接住民をターゲットとした宅配業務など、新たな事業機会も同時に出はじめてきています。

このような場合、会社がいくら新しい事業機会をうまくとらえて進出しようと考えても、運転手が「俺たちの仕事はそんなことをすることではない」といったり、不愛想に荷物を届けたりすれば、“経営の方向性”は実現しないのです。

“経営の方向性”が変化させているときは、それを実現させる人材マネジメントも柔軟的でないと支障をきたします。

有効な人材マネジメントとは?

有効な人材マネジメントとは、“経営の方向性”に適合し、どんな環境変化があっても柔軟に対応していなくてはいけません。そして、会社と社員の「期待」が一致することで信頼関係が築け、大切な社員の心をとらえていなくてはなりません。

では、これらの基準が満たされたとして、有効な人材マネジメントとはどのような姿をしているのでしょうか?

その姿を考える際には、「成長」「自律」「公正」がカギを握っています。

「これらの視点をいかに人材マネジメントに埋め込んでいくか」を考えることで、「会社と社員の期待を一致させる」ことが可能になり、有効な人材マネジメントが行えるようになります。

有効な人材マネジメントを実現するための視点

①成長
社員が主体になります。会社が「それを支援する」という関係にあります。これを支えるモチベーション因子が“自己実現因子”です。
②自律
①と同じく、社員が主体で、会社は「それを支援する」という関係にあります。これを支えるモチベーション因子が、“人間関係因子”です。
③公正
会社が整備する制度環境です。社員は「そこで納得を得る」という関係にあります。これを支えるモチベーション因子が、“経済性因子”です。

私たちは、最近多くの企業で「なぜ人は一生懸命働くのか」という洞察が少なくなってきたと感じています。だからこそ、対立的な構造を残したままで、人材マネジメントを行うほかないのです。

しかし、この十分な洞察がない限り、「会社と社員ともに力がみなぎる」状態にしていくことはできません。

「会社と社員ともに力がみなぎる」状態は、お互いの期待や主張を止揚し、より広い視野でお互いがお互いの魅力を感じ合う関係を築き上げなければできないのです。

「急いでは事を仕損じる」といいます。会社と社員の期待一致には、ある程度の時間をかけなければなりません。“共通項”を見つけ出し、それを仕組むの中に埋め込んでいくことではじめて、会社と社員の「期待」を一致させることができるのです。

※この内容は2003年に書かれたものです。



組織の無形インフラ
インフラとは、構造の基盤になるもので湾岸設備や鉄道といったものをさす。組織においては、人事制度や管理会計制度などがそのインフラにあたる。これらは形があり、目に見えるものである。ところが、挑戦的な風土とか信頼に根ざした人間関係であるとかは、組織の無形インフラといえる。

警戒行動
警戒という言葉に違和感をもつかもしれないが、たとえば行楽地などに遊びにいき、我が家に帰ってきたときの「ほっとする安堵感」、この裏返しが警戒行動に使われていたエネルギーと考えればわかりやすい。

経営の方向性
経営がこれから進もうとする方向や、実際にやろうとする内容のこと。社是・社訓や経営理念などに「自社の存在意義」や「社会に貢献する内容」を記述したものから、事業戦略・計画やアクション・プランとして「事業の展望」や「具体的な行動の道筋」を記述してまとめたものまである。“経営の意思”といいかえることもできる。

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