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【コンサルタントコラム】
「やる気」の構造 ~これがモチベーションを高める組織だ!~(2017年) - 3章 「ワーク・モチベーション」のメカニズムを知る⑥

5.「モチベーション」に関するこれまでの研究

本章の最後に、代表的なモチベーション理論を紹介します。

これらの理論の契機となったのは、「課業管理」と「異率出来高払制」に代表されるテイラーの科学的管理法でした。この科学的管理法に基づくマネジメント手法を取り入れることによって、従来の成り行き管理から飛躍的な生産性向上を実現したのです。

その代表例が「フォード」です。フォードはテイラーの科学的管理法を徹底化し、大量生産と低価格化を実現しました。しかし、同時にテイラーの科学的管理法は、「人間を組織の歯車として機械のように扱っている」という批判を受けました。

そこで、人間関係論や行動科学などの「人間のモチベーションに着目した理論」が登場してきたのです。

モチベーションに関する諸理論

①人間関係論
②欲求段階説
③意欲要因|環境要因論
④X理論‐Y理論
⑤成熟理論
⑥期待理論

はじめて、働く人の動機に注目した「人間関係論」

いまから約70年前、テイラーの科学的管理法から、さらなる効率化を検討するために、アメリカの通信機メーカーである「ウエスタン・エレクトリック社」のホーソン工場において、「社員の生産性に影響を与える要因について」の大がかりな実験が行われました。この実験をもとに、エルトン・メイヨーやレスリスバーガーによって、「人間関係論」が提唱されたのです。

ホーソン工場での実験の当初、「作業部屋の照明の明るさなど、物理的な作業条件が作業効率を規定する」と考えられていました。つまり、「照明が明るくなれば、それだけ生産性があがるだろう」と想定されていたのです。

ところが、明るさをあげるためにはコストがかかるため、「いかにコストをかけないで生産性を向上させるか」という費用対効果の最適解が注目されていました。

ホーソン工場での実験の経緯

①組み立て工程の女性作業員を、「明るさを変化させる部屋で作業するグループ」と「一定の明るさの部屋で作業するグループ」に分け、作業を続けさせた
明るさを変化させる部屋では、部屋の明るさが増すほど、生産性が上昇していきました。ところが、意外にも、いつもの明るさのグループにおいても、生産性の上昇が見られたのです。
②「明るさを変化させる部屋で作業するグループ」の照明をさげてみた
「月明かりのような照明の下では、生産性は低下するだろう」と想定していたにもかかわらず、生産性はさがらず、ときに増加さえしたのです。
この驚くべき結果に直面した実験メンバーは、さらに実験を拡大します。
③ある部屋の中で、「作業時間」「作業のやり方」「部屋の温度」「睡眠時間」「休憩時間」「休憩時間内の軽食提供」など、さまざまな労働条件の改善を行った
それらの結果、生産性は想定どおりに向上していきました。
④突然、彼女たちから何もかも取り上げ、労働条件を実験前の状態に戻してみた
このような場合、一般的には“突然の環境変化”という心理的な衝撃が加えられるので、「作業員の生産性は急落する」ものと想定されましたが、結果は過去最高の生産性を示すことになりました。

このように実験結果は驚きの連続で、労働条件にかかわらず、週を重ねるごとに彼女たちの生産性は右肩あがりにあがっていきました。

なぜでしょうか?実験者たちは何を見落としていたのでしょうか?さまざまな側面から分析が試みられました。

答えは、労働条件に関する側面からではなく、彼女たちの感情や態度から得られました。彼女たちは、「多数の中から選ばれた」ということ、「実験関係者の注目を浴びている」ということ、「自分たちは会社にとって非常に重要な仕事をしている」ということによって、動機づけられていたのです。

つまり、「大勢の中から選ばれ、重要な任務を負っている」という意識が、彼女たちの生産性を向上させていたのです。

また、彼女たちは、「もはやお互いをかたわらで働いているだけのバラバラな存在ではない」と感じていたのです。実験を通じて、彼女たちは「気持ちの通い合った団結する作業集団のメンバー」になっていたのです。

この作業集団の中で築かれた人間関係が、彼女たちの「一体感・万全感・達成感」を引き出し、長い間満たされなかったこうした欲求が、ここで満たされたのです。

その結果として、このような満足感が、さらに懸命に能率的に働くように作用したわけです。

さらには、実験メンバーは、工場の2万人以上の社員に面接を行いました。

この面接の目的は、仕事・労働条件・上司・会社などについて、「社員がどのように感じているか」「その感情が彼らの生産性にどう影響しているか」などを探り出すことにありました。

しばらくの間、面接は予定どおりに行われていましたが、そのうち、お決まりの質問を重ねるよりも、「作業員が重要だ」と感じたことを自由に話させたほうが、効果的であることがわかりました。

そこで、事前に用意された質問は破棄され、作業員に好きなように話をさせることになりました。そして、この実験からは、以下のような発見がありました。

2万人の工場社員への面接での発見

①作業員の感情は、彼らの行動に大きな影響を与えており、感情と行動を切り離して考えることはできない
作業員たちは、自分の意見や提案が取り上げられ、実施に移されると、会社が彼らを重要視していると思いはじめました。「会社の運営に参加している」という意識が、彼らのモチベーションを高め、彼らの態度を一変させたのです。
②組織の生産性に影響をおよぼしている主要要素は、賃金や労働条件ではなく、職場の人間関係である
職場のインフォーマル組織が会社と一体感を抱いたとき、生産性が高まるのです。さらに、密着した監視の下に置かれ、細かく仕事が指示される状況では、作業員は「自分の目標が会社の目標と合致していない」と感じがちで、そのことが生産性を抑制し、低下させることがあるという発見もありました。

実験の当初目的である「物理的な作業条件が生産性を規定する」という仮説はものの見事に外れましたが、社員の仕事に対する意欲や集団規範などの人間関係に関する要因が生産性に大きく影響を与えていることがわかったのです。

こうした行動科学的アプローチによって誕生したのが、「人間関係論」です。

※この内容は2003年に書かれたものです。



課業管理と異類出来高払制
課業とは、動作研究によって計測された1人あたりの標準仕事量のことであり、異率出来高払制とは、仕事の出来高に応じて賃金に格差をつける仕組みのことである。作業の標準化と出来高払制の仕組みは、現在の生産管理でも広く使われている。

行動科学
人間行動やモチベーションの普遍原理を科学的に見いだそうとする学問である。行動科学の学者たちは、集団の人間関係に着目した人間関係論を受け、その分析対象を個人へと展開していった。目標管理の手法も行動科学理論が基礎となっている。

インフォーマル組織
身分や役割が規定された組織をフォーマル組織と呼ぶのに対し、個人的感情や欲求に基づいて形成される集団のことをインフォーマル組織と呼ぶ。趣味の同好会や同期の集まりが、その例である。規模や凝集性の差はあるが、どこの組織にもインフォ―マル組織は存在し、ときに会社に対して強い影響力をもつこともある。

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